民法改正の概要
                      20200301
 
   法律学習の不可欠ポイント・・条文確認
   骨子は法務省HPから、、、
 
1.消滅時効に関する見直し・・・・・・・・・・・・・・1
 
 従来、消滅時効については、商事債権は原則5年、民事債権は原則10年と定めつつ、取引、職業に応じて、改正前民法168条以下において、
短期消滅時効期間を1年ないし5年などと規定していた。
 
(定期金債権の消滅時効)
第百六十八条 定期金の債権は、第一回の弁済期から二十年間行使しないときは、消滅する。最後の弁済期から十年間行使しないときも、同様とする。
2 定期金の債権者は、時効の中断の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認書の交付を求めることができる。
(定期給付債権の短期消滅時効)
第百六十九条 年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。
(三年の短期消滅時効)
第百七十条 次に掲げる債権は、三年間行使しないときは、消滅する。ただし、第二号に掲げる債権の時効は、同号の工事が終了した時から起算する。
一 医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権
二 工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権
第百七十一条 弁護士又は弁護士法人は事件が終了した時から、公証人はその職務を執行した時から三年を経過したときは、その職務に関して受け取った書類について、その責任を免れる。
(二年の短期消滅時効)
第百七十二条 弁護士、弁護士法人又は公証人の職務に関する債権は、その原因となった事件が終了した時から二年間行使しないときは、消滅する。
2 前項の規定にかかわらず、同項の事件中の各事項が終了した時から五年を経過したときは、同項の期間内であっても、その事項に関する債権は、消滅する。
第百七十三条 次に掲げる債権は、二年間行使しないときは、消滅する。
一 生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権
二 自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権
三 学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権
(一年の短期消滅時効)
第百七十四条 次に掲げる債権は、一年間行使しないときは、消滅する。
一 月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権
二 自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権
三 運送賃に係る債権
四 旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権
五 動産の損料に係る債権
 
 この取引内容、職業別の各別の短期消滅時効期間は、合理性に欠けるとして、これを廃止することとした。
 
改正法の内容
・職業別の短期消滅時効はすべて廃止
商事時効(5年)も廃止
権利を行使することができる時から10年という時効 期間は維持しつつ、
 権利を行使することができること を知った時から5年という時効期間を
追加【新§166】
→ いずれか早い方の経過によって時効完成
 
改正法の内容@
生命・身体の侵害による損害賠償請求権の時効期間)
人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の時効期間について長期化する特則を新設。【新§167、724-2】
「知った時から5年」(不法行為につき3年から5年に長期化
「知らなくても20年」(債務不履行につき10年から20年に長期化
 
改正法
起算点 時効期間
@
債務不履行に基づく損害賠償請求権
 権利を行使することができることを知った時から5年
 権利を行使することができる時から10年
A
不法行為に基づく損害賠償請求権
 損害及び加害者を知った時から3年
 不法行為の時から(=権利を行使することができる時から)20年
@・Aの特則
 生命・身体の侵害による損害賠償請求権
 知った時から 5年
 権利を行使することができる時から20年
 
改正法の内容A
(不法行為債権に関する長期20年の期間制限の意味)
・不法行為債権全般について、不法行為債権に関する長期20年の制限期間が時効期間であることを明記。【新§724】
 
 従来、時効の中断、停止(改正による時効の完成猶予、時効の更新)が認められなかった除斥期間であるとの解釈が有力であった不法行為の20年について、
「他人を殺害して20年以上自宅床下に埋めて隠匿していたような事案」(下記最高裁平成21年 4月28日判決)の発生により、「これを時効である」と明記した。
 
最高裁平成21年 4月28日第三小法廷判決抜粋 
 民法724条後段の規定は,不法行為による損害賠償請求権の除斥期間を定めたものであり,不法行為による損害賠償を求める訴えが除斥期間の経過後に提起された場合には,裁判所は,当事者からの主張がなくても,除斥期間の経過により上記請求権が消滅したものと判断すべきである(最高裁昭和59年(オ)第1477号平成元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2209頁参照)。
 ところで,民法160条は,相続財産に関しては相続人が確定した時等から6か月を経過するまでの間は時効は完成しない旨を規定しているが,その趣旨は,相続人が確定しないことにより権利者が時効中断の機会を逸し,時効完成の不利益を受けることを防ぐことにあると解され,相続人が確定する前に時効期間が経過した場合にも,相続人が確定した時から6か月を経過するまでの間は,時効は完成しない(最高裁昭和35年(オ)第348号同年9月2日第二小法廷判決・民集14巻11号2094頁参照)。そして,相続人が被相続人の死亡の事実を知らない場合は,同法915条1項所定のいわゆる熟慮期間が経過しないから,相続人は確定しない。
 これに対し,民法724条後段の規定を字義どおりに解すれば,不法行為により被害者が死亡したが,その相続人が被害者の死亡の事実を知らずに不法行為から20年が経過した場合は,相続人が不法行為に基づく損害賠償請求権を行使する機会がないまま,同請求権は除斥期間により消滅することとなる。
 しかしながら,被害者を殺害した加害者が,被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,そのために相続人はその事実を知ることができず,相続人が確定しないまま除斥期間が経過した場合にも,相続人は一切の権利行使をすることが許されず,相続人が確定しないことの原因を作った加害者は損害賠償義務を免れるということは,著しく正義・公平の理念に反する。
 このような場合に相続人を保護する必要があることは,前記の時効の場合と同様であり,その限度で民法724条後段の効果を制限することは,条理にもかなうというべきである(最高裁平成5年(オ)第708号同10年6月12日第二小法廷判決・民集52巻4号1087頁参照)。
 そうすると,被害者を殺害した加害者が,被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,そのために相続人はその事実を知ることができず,相続人が確定しないまま上記殺害の時から20年が経過した場合において,その後相続人が確定した時から6か月内に相続人が上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは,民法160条の法意に照らし,同法724条後段の効果は生じないものと解するのが相当である。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効)
167条
  人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。
724条の2
  人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。
 
二(不法行為債権に関する長期20年の期間制限の意味)
 
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
724条
  不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一  被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二  不法行為の時から二十年間行使しないとき。
 
三 改正法の内容
 多岐にわたる中断事由について、各中断事由ごとにその効果に応じて、
「時効の完成を猶予する部分」は完成猶予事由
「新たな時効の進行(時効期間のリセット)の部分」は更新事由
振り分ける。
 
 民法改正で、「時効の中断」は「時効の完成猶予」に変わります。
 しかし、民法164条、203条,204条の時効の中断は、民法改正後も維持されます。
 占有中止による取得時効の自然中断の場合です。
 
(占有の中止等による取得時効の中断)
164条
 162条の規定による時効は、占有者が任意にその占有を中止し、又は他人によってその占有を奪われたときは、中断する。
(占有権の消滅事由)
203条
 占有権は、占有者が占有の意思を放棄し、又は占有物の所持を失うことによって消滅する。ただし、占有者が占有回収の訴えを提起したときは、この限りでない。
(代理占有権の消滅事由)
204条
 代理人によって占有をする場合には、占有権は、次に掲げる事由によって消滅する。
一 本人が代理人に占有をさせる意思を放棄したこと。
二 代理人が本人に対して以後自己又は第三者のために占有物を所持する意思を表示したこと。
三 代理人が占有物の所持を失ったこと。
2 占有権は、代理権の消滅のみによっては、消滅しない。
 
承認
 
152条,,更新事由
  時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
2 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。
 
裁判上の請求,,,完成猶予事由,更新事由
 
(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)
147条  次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一  裁判上の請求
二  支払督促
三  民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停
四  破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
2  前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。
 
催告など,,,完成猶予事由
(催告による時効の完成猶予)
 
150条
  催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2  催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
 
停止事由については、「完成猶予」事由とする。【新§158〜161】
(未成年者又は成年被後見人と時効の完成猶予)
 
158条
 時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。
2  未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。
(夫婦間の権利の時効の完成猶予)
159条
 夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
(相続財産に関する時効の停止)
160条
 相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
 
改正法の内容
天災等による時効の完成猶予の期間(障害が消滅した後の猶予期間)を伸長する(現在の2週間から3か月へ)。
【新§161】
当事者間で権利についての協議を行う旨の合意が書面又は電磁的記録によってされた場合には、時効の完成が猶予されることとする (新たな完成猶予事由とする。)。【新§151】
 
(天災等による時効の完成猶予)
161条
 時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため第百四十七条第一項各号又は第百四十八条第一項各号に掲げる事由に係る手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から三箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
 
(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)
151条
 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
一  その合意があった時から一年を経過した時
二  その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
三  当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時
2  前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて五年を超えることができない。
3  催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第一項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。
4  第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。
5  前項の規定は、第一項第三号の通知について準用する。
 
2.法定利率に関する見直し・・・・・・・・・・・・・・・12
(法定利率)
 
改正法の内容
法定利率の引下げ 【新§404U】
・施行時に年3%へ
緩やかな変動制の導入 【新§404V〜X】 → 詳細は次ページ参照
・法定利率を市中の金利の変動に合わせて緩やかに上下させる変動制の導入
・3年ごとに法定利率を見直し。 貸出約定平均金利の過去5年間の平均値を指標とし、この数値に前回の変動時と比較して1%以上の変動があった場合にのみ、1%刻みの数値で法定利率が変動(法定利率は整数になる。)
商事法定利率の廃止 【現商法§514の削除】
・商行為によって生じた債務についても、民法に規定する法定利率を適用
 
 
404条
1 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2 法定利率は、年3パーセントとする。
3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
4 各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率加算し、又は減算した割合とする。
5 前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の六年前の年の一月から前々年の十二月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が一年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を六十で除して計算した割合(その割合に〇・一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。
 
 
改正法の内容(変動制の具体的な内容)
 日本銀行が公表している貸出約定平均金利の過去5年間における短期貸付けの平均金利の合計を60で除して計算した割合(0.1%未満は切捨て)を「基準割合」とする。
※過去5年間=各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までの各月
(例えば、平成35年4月1日が期の初日である場合には、平成29年1月〜平成33年12月の各月)
直近変動期の基準割合と当期の基準割合との差(1%未満は切捨て)に相当する割合を、直近変動期における
法定利率に加算し、又は減算する。
※1つの債権については1つの法定利率(例えば、交通事故の損害賠償の遅延損害金は事故時(初めて遅滞の責任を負った時、利息債権については最初に利息が発生した時)の法定利率が適用され、事後的に変動しない)
 
改正法施行日
−32/4/1   3%
−基準割合A
−基準割合B    1% 未満切り捨て
−35/4/1   3+−(A--B)・・・・新法定利率 
 
改正法の内容
中間利息控除にも法定利率(変動制)を適用
【新§722T】
※ 事故時(損害賠償請求権が生じた時点)の法定
利率を適用することも明確化
 
 
3.保証に関する見直し・・・・・・・・・・・・・・・・・17
 
平成16年民法改正(貸金等債務に関する包括根保証の禁止)
商工ローンの保証などの社会問題化が背景
貸金等債務の根保証をした個人保証人の保護のため、以下の措置を講ずる。
極度額(保証の上限額):極度額の定めのない根保証契約は無効(現§465−2)
元本確定期日(保証期間の制限):保証人が責任を負うのは元本確定期日までの間に行われた貸金等に限定
: 元本確定期日までの期間を原則3年(最長5年)に制限(現§465−3)
元本確定事由(特別事情による保証の終了):
元本確定期日の到来前であっても特別な事情(保証人や主債務者の死亡・破産等)が発生した場合には、その時点で元本確定(それ以前の貸金等に限り責任を負う)(現§465−4)
主債務者が債務の支払をしない場合に、これに代わって支払をすべき義務のこと
通常の保証:契約時に特定している債務の保証
(例:住宅ローンの保証)
根 保 証 :将来発生する不特定の債務の保証
(例:継続的な事業用融資の保証)
保証とは・・・
平成16年民法改正後の二つの課題
@ 包括根保証の禁止の対象を拡大することの当否
A 保証人保護のさらなる拡充(第三者保証の法的制限など)
 
 
問題の所在
・貸金等債務以外の根保証(ex賃貸借や継続売買取引の根保証)についても、想定外の多額の保証債務や、想定していなかった主債務者の相続人の保証債務の履行を求められる事例は少なくない。
→ 例えば、借家が借主の落ち度で焼失し、その損害額が保証人に請求されるケースや、借主の相続 人が賃料の支払等をしないケースなど
・包括根保証禁止の既存のルールをすべての契約に拡大すると、例えば、賃貸借契約について、最長でも5年で保証人が存在しなくなるといった事態が生ずるおそれがある。
 
改正法の内容
@極度額の定めの義務付けについては、すべての 根保証契約に適用。【新§465-2】
 
・根保証条項
ー根・連帯保証条項に、保証限度額を記載しないと、保証条項は無効になります。
ー(不動産賃貸借契約保証条項一例)
ーー丙は甲に対し、本契約書により乙が甲に対して負う債務について乙と連帯してその履行の責を負う。
 但し、丙の連帯保証債務は、本契約書記載の月額賃料の12ケ月分相当の金額を限度とする。
 
(個人根保証契約の保証人の責任等)
465条の2  一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
2  個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
3  第四百四十六条第二項及び第三項の規定は、個人根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。
 
 
 
 
A保証期間の制限については、現状維持(賃貸借 等の根保証には適用せず)。【新§465-3】
B特別事情(主債務者の死亡や、保証人の破産・死 亡など)がある場合の根保証の打ち切りについて は、すべての根保証契約に適用。ただし、主債務 者の破産等があっても、賃貸借等の根保証が打 ち切りにならない点は、現状を維持。【新§465-4】
 
改正法の内容
事業用融資の第三者個人保証に関して次のような規定を新設。【新§465-6〜465-9】
事業用融資の保証契約は、公証人があらかじめ保証人本人から直接その保証意思を確認しなければ、 効力を生じない。ただし、このルールは次のものには適用しない。
@ 主債務者が法人である場合の理事、取締役、執行役等
A 主債務者が法人である場合の総株主の議決権の過半数を有する者等
B 主債務者が個人である場合の共同事業者又は主債務者が行う事業に現に従事している主債務者の配偶者
 
 公正証書作成の例外‥配偶者
・ 主債務者が行う事業に現に従事しているとは、文字どおり、保証契約の締結時においてその個人事業主が行う事業に実際に従事している といえることが必要。単に書類上事業に従事しているとされているだけでは足りず、また、保証契約の締結に際して一時的に従事したというのでは足りない。
・ 主債務者が法人である場合に、その代表者等の配偶者が例外になるわけではない。
・ 例外となる配偶者は、法律上の配偶者に限られる。
 
 公証人による保証意思の確認
○ 保証人になろうとする者が保証しようとしている主債務の具体的内容を認識していることや、保証契約を締結すれば保証人は保証債務を負担し、主債務が履行されなければ自らが保証債務を履行しなければならなくなることを理解しているかなどを検証し、 保証契約のリスクを十分に理解した上で、 保証人になろうとする者が相当の考慮をして保証契約を締結しようとしているか否かを見極める。
※ 公証人は、保証意思を確認する際には、保証人が主債務者の財産状況について情報提供義務(§465-10⇒次頁)に基づいてどのような情報の提供を受けたかも確認し、保証人がその情報も踏まえてリスクを十分に認識しているかを見極める。
 
保証意思が確認できない場合
 
保証人の保証意思を確認することができない場合
には、公証人は、無効な法律行為等については証書を作成することができないとする公証人法26条に基づき、 公正証書の作成を拒絶しなければならない。
 
 公正証書の作成手続の特徴
・ 代理人による嘱託は不可。
必ず保証人本人が出頭しなければならない。
・ 手数料は、1通1万1000円を予定
 
 公証人に対する口授・筆記
・ 保証人になろうとする者は,公証人に対し,保証意思を宣明するため,主債務の内容など法定された事項(右欄参照)を口頭で述べ,公証人は,保証人になろうとする者が口頭で述べた内容を筆記し,これを保証人になろうとする者に読み聞かせ,又は閲覧させる。
※ 口がきけない者については,通訳人の通訳又は自署
・保証人になろうとする者は,公証人が証書に記載した内容が正確なことを承認して署名押印するなどし,公証人は,その証書が法定の方式に従って作ったものである旨を付記して,これに署名押印する。
 
 保証意思宣明公正証書の性質
・ 保証契約の契約書(保証契約公正証書)とは別のもの。
・ 保証意思宣明公正証書自体には執行認諾文言を付けることはできない。
 
公証人に対する口頭での申述・筆記事項
@ 通常の保証契約(根保証契約以外のもの)の場合
1) 主債務の債権者及び債務者
2) 主債務の元本と従たる債務(利息,違約金,損害賠償等)についての定めの有無及びその内容
3) 主債務者がその債務を履行しないときには,その債務の全額について履行する意思を有していること。
A 根保証契約の場合
1) 主債務の債権者及び債務者
2) 主債務の範囲,根保証契約における極度額,元本確定期日の定めの有無及びその内容
3) 主債務者がその債務を履行しないときには,極度額の限度において元本確定期日又は元本確定事由が生ずる時までに生ずべき主債務の元本及び従たる債務の全額について履行する意思を有していること。
※ いずれについても,連帯保証の場合には,債権者が主債務者
に対して催告をしたかどうか,主債務者がその債務を履行することができるかどうか,又は他に保証人があるかどうかにかかわらず,その全額について履行する意思を有していること。
 
「事業のために負担した貸金等債務」の要件
・ 事業性
「事業」とは,一定の目的をもってされる同種の行為の反復継続的遂行をいい,「事業のために負担した貸金等債務」とは,借主が借り入れた金銭等を自らの事業に用いるために負担した貸金等債務を意味する。
 例えば,製造業を営む株式会社が製造用の工場を建設したり,原材料を購入したりするための資金を借り入れることにより負担した貸金債務が「事業のために負担した貸金等債務」の典型例である。このほか,いわゆるアパート・ローンなども「事業のために負担した貸金等債務」に該当するものと考えられる。
 他方で,貸与型の奨学金については「事業のために負担した貸金等債務」に該当しないと考えられる。
・ 判断
 借主が使途は事業資金であると説明して金銭の借入れを申し入れ,貸主もそのことを前提として金銭を貸し付けた場合には,実際にその金銭が事業に用いられたかどうかにかかわらず,その債務は事業のために負担した貸金等債務に該当する。
※ 借入時において,借主と貸主との間で,例えば,その使途を居住用住宅の購入費用としていた場合には,仮に借主が金銭受領後にそれを「事業のために」用いてしまったとしても,そのことによって「事業のために負担した」債務に変容するものではない。
 
問題の所在
 保証人になるに当たって、主債務者の財産状況等(保証のリスク)を十分に把握していない事例が少なくない。
 現状では、主債務者は、自らの財産状況等を保証人に説明する義務を負っていない。
 債権者も、主債務者の財産状況等を保証人に伝える義務を負っていない。
 
改正法の内容
 主債務者による保証人への情報提供義務の規定を新設【新§465-10】
1 対象
個人に対して事業上の債務の保証を委託する場合
(貸金債務の保証に限らない)
2 提供すべき情報
@ 財産及び収支の状況
A 主債務以外の債務の有無、その債務の額、その債務の履行状況
B 担保として提供するもの(例えば、ある土地に抵当権を設定するのであれば、その内容)
3 情報提供義務違反の場合の措置
 保証人は、保証契約を取り消すことができる。ただし、次の要件を満たすことが必要。
@ 保証人が主債務者の財産状況等について誤認
A 主債務者が情報を提供しなかったこと等を債権者が知り、又は知ることができた
 
問題の所在
 保証人の負担額は、主債務者が支払を遅滞した後に発生する遅延損害金によって大きくふくらむ。特に、主債務者が分割金の支払を遅滞して期限の利益を喪失し、一括払を求められるケースにおいて顕著。
 主債務者が支払を遅滞し、期限の利益を喪失したことを保証人が知っていれば、早期に立替払をして遅延損害金が発生することを防ぐなどの対策を取ることも可能。しかし、保証人は、主債務者が支払を遅滞したことを当然には知らない。
 
改正法の内容
 期限の利益喪失に関して債権者の保証人に対する情報提供義務の規定を新設【新§458-3】
1 対象
 保証人が個人である保証一般
2 情報提供義務の内容
 主債務者が期限の利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その喪失を知った時から2か月以内に、その旨を通知しなければならない。
3 義務違反の場合の措置
 2か月以内に通知をしなかったときは、債権者は、期限の利益を喪失した時からその後に通知を現にするまでに生じた遅延損害金 については、保証債務の履行を請求することができない(主債務者は支払義務を負う。)。
※ 保証人が主債務者の履行状況を知りたいと考えたときに、知ることができる制度も必要 →次頁
 
問題の所在
 保証人にとって、主債務の履行状況は重要な関心事であるが、その情報の提供を求めることができるとの明文の規定はない。
 銀行等の債権者としても、保証人からの求めに応じ、主債務者のプライバシーにも関わる情報を提供してよいのかの判断に困り、対応に苦慮。
 保証人が個人の場合だけでなく、法人の場合にも上記の問題は発生。
 
改正法の内容
 主債務者の履行状況に関する債権者の情報提供義務に関して次のような規定を新設【新§458-2】
1 債権者は、保証人から、請求があったときは、主債務の元本、利息及び違約金等に関する次の情報を提供しなければならない。
@ 不履行の有無(弁済を怠っているかどうか)
A 残額
B 残額のうち弁済期が到来しているものの額
2 ただし、上記の請求をすることができるのは、主債務者から委託を受けた保証人(法人も可)に限られる。
 
問題の所在
 
 
4.債権譲渡に関する見直し・・・・・・・・・・・・・・・27
債権譲渡による資金調達の拡充とそれに伴う問題
 近時、債権譲渡(譲渡担保)による資金調達が、特に中小企業の資金調達手法として活用されることが期待されている。
※例えば、中小企業が自己の有する現在又は将来の売掛債権等を原資として資金調達を行うことがある。
しかし・・・
 現466条の定める譲渡制限特約が資金調達を行う際の支障になっている。
 将来の債権の譲渡が可能であることが条文上明確でない。
 
改正法の内容
 債権の譲渡制限特約の効力の見直し → 詳細は次ページ
 将来債権の譲渡が可能であることを明らかにする規定の新設 【新
 
問題の所在
 債権譲渡に必要な債務者の承諾を得られないことが少なくない。
 債権譲渡が無効となる可能性が払拭しきれないため、譲渡(担保設定)に当たって債権の価値が低額化。
 
改正法の内容 【新§466、 466-2、 466-3】
 譲渡制限特約が付されていても、債権譲渡の効力は妨げられない(ただし、預貯金債権は除外)。
 弁済の相手方を固定することへの債務者の期待を形を変えて保護
・債務者は、基本的に譲渡人(元の債権者)に対する弁済等をもって 譲受人に対抗することができる(免責される)。
譲受人の保護
・債務者が譲受人から履行の催告を受け、相当の期間内に履行をしないときは、債務者は、譲受人に対して履行をしなければならない。
・譲渡人が破産したときは、譲受人は、債務者に債権の全額に相当する金銭を供託するよう請求することができる(譲渡人への弁済は譲受人に対抗できない)。
 
実務上の懸念
 譲渡制限特約が付された債権の譲渡が有効であるとしても、債権者・債務者間の特約に違反したことを理由に契約が解除されてしまうのではないか?
解除ができるとすると・・・
 債権譲渡をしたために取引を打ち切られるリスクがある。
 譲受人にとっても、解除によって債権が発生しないおそれがあるため、そのような債権を譲り受けるのは困難。
 資金調達の円滑化につながらないおそれがないか?
 
改正法の下での解釈論
 改正法では、債務者は、基本的に譲渡人(元の債権者)に対する弁済等をすれば免責されるなど、弁済の相手方を固定することへの債務者の期待は形を変えて保護されている。
 そうすると、以下の解釈ができると考えられる。
 譲渡制限特約が弁済の相手方を固定する目的でされたときは、債権譲渡は必ずしも特約の趣旨に反しないと見ることができる。
 そもそも契約違反(債務不履行)にならない。
 債権譲渡がされても債務者にとって特段の不利益はない。
 取引の打切りや解除を行うことは、極めて合理性に乏しく、権利濫用等に当たりうる。
 
5.約款(定型約款)に関する規定の新設・・・・・・・・・30
現状
現代社会においては、大量の取引を迅速に行うため、詳細で画一的な取引条件等を定めた約款を用いることが必要不可欠だが、民法には約款に関する規定がない。
   ⇒解釈によって対応せざるを得ないが、いまだ確立した解釈もないため、法的に    不安定
 
問題の所在
 民法の原則によれば契約の当事者は契約の内容を認識しなければ契約に拘束されないが、約款を用いた取引をする多くの顧客は約款に記載された個別の条項を認識していないのが
    ⇒どのような場合に個別の条項が契約内容となるのか不明確
 民法の原則によれば、契約の内容を事後的に変更するには、個別に相手方の承諾を得ることが必要だが、承諾を得られないこともあり得る。
約款中に「この約款は当社の都合で変更することがあります。」との条項を設ける実務もあるが、その有効性については見解が分かれている。
    ⇒契約内容の画一性を維持することができないと、取引の安定性を阻害
 
問題の所在
 「約款」という用語は、現在も企業の契約実務や学界において広く用いられている。
 もっとも、その意味についての理解は千差万別
 約款に関する規定を新設するに当たり、改正の趣旨を踏まえた定義等が必要
 大量取引が行われるケースにおいて取引の安定等を図る観点から新たなルールを設けるのは、約款によって画一的な取引をすることが事業者側・顧客側双方にとって合理的であると客観的に評価することができる場合に限定する必要がある。
 
改正法の内容
・ 対象とする約款(定型約款)の定義
@ ある特定の者が不特定多数の者を相手方とする取引で、
A 内容の全部又は一部が画一的であることが当事者双方にとって合理的なもの を「定型取引」と定義した上、 この定型取引において、
B 契約の内容とすることを目的として、その特定の者により準備された条項の総体
「定型約款」という名称
 従来の様々あった「約款」概念と切り離して、規律の対象を抽出したことを明らかにするための名称
【該当】 鉄道・バスの運送約款、電気・ガスの供給約款、保険約款、インターネットサイトの利用規約等
【非該当】 一般的な事業者間取引で用いられる一方当事者の準備した契約書のひな型、労働契約のひな形等
 
 民法の原則によれば契約の当事者は契約の内容を認識しなければ契約に拘束されない。
 
約款(定型約款)に関する規定の新設
・ 「定型約款」については、細部まで読んでいなくても、その内容を契約内容とする旨の合意があるのであれば、顧客を契約に拘束しても不都合は少ない。
・ 明示の合意がない場合であっても、定型約款を契約内容とする旨が顧客に「表示」された状態で取引行為が行われ
ているのであれば、同様に不都合は少ない。
 顧客は定型約款の条項の細部まで読まないことが通常であるが、不当な条項が混入している場合もある。
 顧客の利益を一方的に害するような条項は契約内容とならないようにする余地を認めることが必要
 
改正法の内容
・ 定型約款が契約の内容となるための要件(組入要件)
次の場合は、定型約款の条項の内容を相手方が認識していなくても合意したものとみなし、契約内容となることを明確化※
32
問題の所在
 民法の原則によれば契約の当事者は契約の内容を認識しなければ契約に拘束されない。
約款(定型約款)に関する規定の新設
・「定型約款」については、細部まで読んでいなくても、その内容を契約内容とする旨の合意があるのであれば、
 顧客を契約に拘束しても不都合は少ない。
・明示の合意がない場合であっても、定型約款を契約内容とする旨が顧客に「表示」された状態で取引行為が行われているのであれば、同様に不都合は少ない。
 ただし、相手方への「表示」が困難な取引類型(電車・バスの運送契約等)については、「公表」で足りる旨の特則が個別の業法に設けられている。
 顧客の利益を一方的に害するような条項は契約内容とならないようにする余地を認めることが必要【新§548-2】
@ 定型約款を契約の内容とする旨の合意があった場合
A (取引に際して)定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ相手方に「表示」していた場合
改正法の内容
・ 定型約款が契約の内容となるための要件(組入要件)
次の場合は、定型約款の条項の内容を相手方が認識していなくても合意したものとみなし、契約内容となることを明確化※
32
 
問題の所在
 民法の原則によれば契約の当事者は契約の内容を認識しなければ契約に拘束されない。
約款(定型約款)に関する規定の新設
・ 「定型約款」については、細部まで読んでいなくても、その内容を契約内容とする旨の合意があるのであれば、顧客を契約に拘束しても不都合は少ない。
・ 明示の合意がない場合であっても、定型約款を契約内容とする旨が顧客に「表示」された状態で取引行為が行われているのであれば、同様に不都合は少ない。
 顧客の利益を一方的に害するような条項は契約内容とならないようにする余地を認めることが必要【新§548-2】
@ 定型約款を契約の内容とする旨の合意があった場合
A (取引に際して)定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ相手方に「表示」してただし、相手方への「表示」が困難な取引類型(電車・バスの運送契約等)
については、「公表」で足りる旨の特則が個別の業法に設けられている。
契約の内容とすることが不適当な内容の契約条項 (不当条項)の取扱い
(定型取引の特質に照らして)相手方の利益を一方的に害する契約条項であって信義則(民法1条2項)に反する内容の条項については、合意したとはみなさない(契約内容とならない)ことを明確化
(例) 売買契約において、本来の目的となっていた商品に加えて、想定外の別の商品の購入を義務付ける不当な(不意打ち的)抱合せ販売条項など
 
問題の所在
 長期にわたって継続する取引では、法令の変更や経済情勢・経営環境の変化に対応して、定型約款の内容を事後的に変更する必要が生ずる
 
改正法の内容
 次の場合には、定型約款準備者が一方的に定型約款を変更することにより、契約の内容を変更することが可能であることを明確化 (→ 既存の契約についても契約内容が変更される。)
@ 変更が相手方の一般の利益に適合する場合
又は
A 変更が契約の目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的な場合
 
 
6.意思能力制度の明文化・・・・・・・・・・・・・・・・34
問題の所在
判例・学説上は、異論なく認められ、実際にも活用されているが、民法に明文の規定はない。
改正法の内容
? 民法を国民一般に分かりやすいものとする観点から、意思能力を有しない者がした法律行為は無効
とすることを明文化【新§3-2】
※併せて、意思能力を有しなかった者が相手方にする原状回復義務の範囲は、「現に利益を受けている限度」にとどま
る旨の規定を新設【新§121-2V】
 
問題の所在
 現95条は 「法律行為の要素」に錯誤があることが必要であると規定。
 判例はこの要件について、次のように判断。
@ 表意者が錯誤がなければその意思表示をしなかったであろうと認められることが必要(主観的因果性)
A 通常人であっても錯誤がなければその意思表示をしなかったであろうと 認められることが必要(客観的重要性)
B @)間違って真意と異なる意思を表明した場合(表示の錯誤)とA)真意どおりに意思を表明しているが、その真意が何らかの誤解に基づいていた場合(動機の錯誤)とを区別し、動機の錯誤については、上記@、Aの要件に加えて、その動機が意思表示の内容として表示されていることが必要。
⇒現95条の文言と判例の考えは必ずしも一致しない。意思表示の効力を否定する要件を明確化することが必要ではないか。
 
改正法の内容
@ 意思表示が錯誤に基づくものであること(判例@の要件に対応)
A 錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであること(判例Aの要件に対応)
B 動機の錯誤については、動機である事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていること(判例Bの要件に対応)
※ 例えば、離婚に伴う財産分与として土地等を譲渡する場合において、分与をする者の側に課税されないことがその財産分与の前提とされていることが表示されているようなときに、認められる(最判平成元年9月14日)
 
問題の所在
@)判例は、錯誤を理由とする意思表示の無効は、誤解をしていた表意者のみが主張でき、相手方は主張できないと判示
⇒通常の無効とは異なる扱い
(例えば、売買契約において買主に錯誤があるケースでは、買主は無効を主張できるが、売主は無効を主張できない。)
A)詐欺があった場合は、意思表示の効力を否定することができるのは5年間
⇒錯誤があった場合に期間制限を設けないのは、バランスを欠く
(例えば、売買契約において詐欺があったケースでは、5年間しかその売買契約の効力を否定できないが、錯誤があったケースでは、 5年を経過した後も、売買規約の効力を否定できる。)
 
改正法の内容
 改正法は、錯誤の効果を「無効」から「取消し」に改める。
 
7.意思表示に関する見直し・・・・・・・・・・・・・・・35
 
8.代理に関する見直し・・・・・・・・・・・・・・・・・38
問題の所在
 制限行為能力者が「他の制限行為能力者」の法定代理人である場面においては、代理行為の取消しができないと、「他の制限行為能力者」の保護が十分に図れないおそれがある。
この場面においては、「他の制限行為能力者」は自ら代理人を選任しているわけではない。
 
改正法の内容【新§102】
制限行為能力者が「他の制限行為能力者」の法定代理人としてした行為については、例外的に、行為能力の制限の規定によって取り消すことができる。
※併せて、制限行為能力者が被保佐人、被補助人である場合に代理行為を取り消すための根拠規定を新設【新§13TI】
※この場合に、本人である「他の制限行為能力者」やその承継人も取消権者とする規定を新設【新§120T】
 
 
9.債務不履行による損害賠償の帰責事由の明確化・・・・・39
 債務不履行による損害賠償は、債務者に帰責事由(=責めに帰すべき事由)がないときは免責される。このことは現415条後段(履行不能)にのみ規定されているが、同条前段(履行遅滞、その他)にも共通のルールと解されており、条文と解釈が齟齬
【参照条文(現行法)】
(債務不履行による損害賠償)
 第415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請 求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
「責めに帰すべき事由」という要件について、裁判実務においては、帰責事由の有無は契約や社会通念に照らして判断されているが、条文上は明らかでない。
債務不履行による損害賠償は、債務者に帰責事由(=責めに帰すべき事由)がないときは免責される。このことは現415条後段(履行不能)にのみ規定されているが、同条前段(履行遅滞、その他)にも共通のルールと解されており、条文と解釈が齟齬
例:売ったパソコンの引渡しをすることができなくなったが・・・
@通常は想定することができない規模の地震によって壊れてしまった → 通常は帰責事由なし
A売主の不注意による失火でパソコンが焼失してしまった → 通常は帰責事由あり
B引渡しのための運送中に運送人の過失による事故で壊れてしまった → 通常は帰責事由あり
改正法の内容 【いずれも新§415
現415条(債務不履行による損害賠償)に関して、判例や一般的な解釈を踏まえ、債務者に帰責事由がないことを同条後段(履行の不能)のみに限らない一般的な要件として定める。
その免責要件の有無は、契約及び社会通念に照らして判断される旨を明記する。
 
 
10.契約解除の要件に関する見直し・・・・・・・・・・・・40
改正法の内容
 債務不履行による解除一般について、債務者の責めに帰することができない事由によるものであっても解除を可能なものとする。【新§541、542】
不履行が債権者の責めに帰すべき事由による場合には、解除を認めるのは不公平であるので、解除はできないとしている。【新§543】
 
問題の所在
 契約解除の可否をめぐるトラブルは、裁判実務における代表的な紛争類型の一つであり、重要な判例が積み重ねられているが、それは現在の条文からは読み取れない。
現541条の催告解除(履行の催告をしても履行がない場合に認められる解除)と現542条・543条の無催告解除(履行の催告を要しない解除)について、判例を踏まえ、それぞれ要件を明文化すべきではないか。
 検討課題@(催告解除が制限される要件の明文化)現541条(履行遅滞等による解除権)の文言上は、あらゆる債務不履行について催告解除が認められるように読めるが、判例は、付随的な債務の不履行や、不履行の程度が必ずしも重要でない場合については、催告をしても解除が認められないとする。このことを適切に明文化すべきではないか。
@付随的な債務の不履行の例
・「長時間連続して使用すると本体に熱がこもり、破損するおそれがある」という使用上
の注意を付すことを怠った。
A不履行の程度が必ずしも重要でない場合の例
・パソコン本体に、目立たない程度の引っ掻き傷がついていた。
 検討課題A(無催告解除の要件の明文化)
 無催告解除ができる場合について、現542条・543条は、@ある時期までに履行がなければ契約の目的が達せられない場合において、履行遅滞があったとき(現§542)、A履行不能となったとき(現§543)を規定。
 このほか、B履行を拒絶する意思を明示したときや、C契約の目的を達するのに充分な履行が見込めないときにも、無催告解除が可能であると解されている。
 
改正法の内容
 催告解除の要件に関して、判例を踏まえ、契約及び取引通念に照らして不履行が軽微であるときは解除をすることができない旨を明文化する。【新§541】
 無催告解除の要件に関して、履行拒絶の意思の明示、(一部の履行はできる場合でも)契約をした目的を達するのに足りる履行の見込みがないこと等の事情があれば解除が可能であることを明文化する。【新§542】
 
 
11.売主の瑕疵担保責任に関する見直し・・・・・・・・・・42
問題の所在@(瑕疵担保責任の全般的な見直し)
買主の権利
 商品の種類を問わず、引き渡された商品に欠陥があった場合に買主がどのような救済を受けることができるのか(修補等の請求をすることができるのか等)について、国民に分かりやすく合理的なルールを明示するべきではないか。
「隠れた瑕疵」の用語
「隠れた瑕疵」という用語も、その内容に応じて、分かりやすいものとすべきではないか。
基本的な改正の方向性
買主の権利
・特定物か不特定物かを区別することなく、売主は売買契約の内容に適合した目的物を引き渡す義務を負い、修補等の履行の追完をすることができることとするのが適切
・損害賠償や解除は特別の法定責任とは位置付けず、債務不履行の一般則に従ってすることができることを明示するのが適切(加えて、損害賠償の範囲は「信頼利益」に限定されず、要件を満たせば「履行利益」まで可能となる)
・商品に欠陥がある場合に代金の減額で処理される事案も多いことから、買主に代金減額請求権を認めるのが適切
「隠れた瑕疵」の用語
判例は、「瑕疵」は「契約の内容に適合していないこと」を意味するものと理解 → 判例の明文化
※「隠れた」とは、契約時における瑕疵についての買主の善意無過失をいうと解されているが、上記改正法の考え方の下では、当事者の合意した契約の内容に適合しているか否かが問題であるため、「隠れた」の要件は不要。
 
改正法の内容
 買主の権利 【新§562〜564】
 買主は、売主に、@修補や代替物引渡しなどの履行の追完の請求、A損害賠償請求、B契約の解除、C代金減額請求ができることを明記。
「隠れた瑕疵」の用語 【新§562】
「隠れた瑕疵」があるという要件を、目的物の種類、品質等に関して「契約の内容に適合しない」ものに改める。
問題の所在A(買主の権利の期間制限)
 瑕疵担保責任の追及は、買主が瑕疵を知ってから1年以内の権利行使が必要(履行済みと考えている売主の保護)とされているが、買主の負担が重すぎるのではないか。【現§570、566】
※「権利行使」の意味
 判例は、「裁判上の権利行使をする必要はないが、少なくとも売主に対し、具体的に瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し、請求する損害額の算定の根拠を示すなどして、売主の担保責任を問う意思を明確に告げる必要がある。」としている。
 
改正法の内容
 買主は、契約に適合しないことを知ってから1年以内にその旨の通知が必要。【新§566】
※「通知」としては、不適合の種類やおおよその範囲を通知することを想定
※別途、消滅時効に関する規律の適用があることに注意が必要
 
 
12.原始的不能の場合の損害賠償規定の新設・・・・・・・・44
問題の所在
?原始的不能の場合に債権者が債務不履行に基づく損害賠償を請求することができるかどうかについては、明文の規定がない。
?このような契約は無効であり、債務不履行となる余地はなく、債務不履行に基づく損害賠償請求は不可との考え方も有力である。
?しかし、 履行不能になったのがたまたま契約の成立前というだけで、火事の原因が債務者の火の不始末である場合など債務者に帰責性がある場合でも、債務不履行に基づく損害賠償を請求することができないとするのは不当ではないか。
 
改正法の内容
?原始的不能の場合であっても、債務不履行に基づく損害賠償を請求することは妨げられない旨の規定を新設 【新§412-2U】
 
13.債務者の責任財産の保全のための制度・・・・・・・・・45
問題の所在
 債権者が他人である債務者の財産管理に介入する制度であるにもかかわらず、現423条は骨格を定めているのみ。
→具体的なルールは判例によって形成されている。
【参照条文(現行法)】
 第423条 債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。
2 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。
改正法の内容
次のようなルール等を創設
 金銭債権等を代位行使する場合には、債権者は自己への支払等を求めることができる。【新§423-3】
 債権者の権利行使後も被代位権利についての債務者の処分は妨げられない。 【新§423-5】
 債権者が訴えをもって代位行使をするときは、債務者に訴訟告知をしなければならない。 【新§423-6】
※訴訟告知:訴訟が提起されたことを利害関係のある第三者に告知する裁判上の手続をいう
 
問題の所在
 債権者が他人(債務者)がした行為の取消し等を裁判上請求するという強力な制度であり、複雑な利害調整を要するにもかかわらず、現424条以下の3か条で骨格を定めているのみ。
→具体的なルールは判例によって形成されている
 関係当事者の利益調整も考慮しつつ、ルールの明確化・合理化を図る必要がある。
 
改正法の内容
 次のようなルール等を創設
 債権者は、債務者がした行為の取消しとともに逸出財産の返還(返還が困難であるときは価額の償還)を請求することができる。【新§424-6】
 詐害行為取消しの訴えにおいては、受益者を被告とし、債務者には訴訟告知をすることを要する。【新§424-7】
 詐害行為取消権の要件(詐害行為性、詐害意思等)についても、類似する制度(破産法の否認権等)との整合性をとりつつ、具体的に明確化する。 【新§424-2〜 § 424-4】
 
 
14.連帯債務に関する見直し・・・・・・・・・・・・・・・48
問題の所在
 絶対的効力事由とした結果、次のような問題が生ずる。
 連帯債務者の一人に対する履行の請求があったとしても、他の連帯債務者は当然にはそのことを知らず、いつの間にか履行遅滞に陥っていたなどといった不測の損害を受けるおそれがある。
 免除をした結果、他の連帯債務者に対して請求することができる額が減少するが、これは免除をした債権者の意思に反するおそれがある。
ある特定の連帯債務者から履行を受けるつもりであっても、全ての連帯債務者との関係で消滅時効の完成を阻止する措置をとらなければならず、債権者の負担は大きい。
 
改正法の内容
 連帯債務の絶対的効力事由を削減する。
 連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。
 連帯債務者の一人についての免除、消滅時効の完成も、他の連帯債務者にも効力が生じない。
※ 本来は連帯債務者Aに生じても他の連帯債務者Bに効力が生じない事由(相対的効力事由)に関し、債権者Cと他の連帯債務者Bにおいて、Aにその事由が生ずればBにもその効力が生ずるなどという別段の意思を表示していたときは、Aに生じた事由のBに対する効力は,その意思に従う(新§441但書)。
※ 連帯保証人についても、同様の改正(保証人に対する履行の請求は、主債務者に対して効力を生じない。新§458参照)。
 
15. 債務引受に関する見直し・・・・・・・・・・・・・・・49
改正法の内容
 債権者・引受人間の契約によってすることができる。
→ 債権者が契約をした旨を債務者に通知した時に効 力発生【新§472U】
債務者・引受人間で契約をし、債権者が承諾をすることによってもすることができる。【新§472V】
 引受人は債務者に対して求償権を取得しない。【新§472- 3】
 債権者は、担保権・保証を引受人が負担する債務に移すことができる(債務者の承諾不要)。【新§472- 4】
※ただし、引受人以外の者が設定した担保権については、設定者の承諾(保証については書面等によるもの)が必要
 
改正法の内容
 債権者・引受人間の契約によってすることができる。【新§470U】
 債務者・引受人間の契約によってもすることができる。
→ 債権者が引受人に対して承諾をした時に効力発生
【新§470U】引受人は、債務者と連帯して、債務を負担する。【新§470U】
 
 
16.相殺禁止に関する見直し・・・・・・・・・・・・・・・50
問題の所在
 例えば、AとBが双方の過失で交通事故(物損)を起こし、相互に不法行為債権を有している場合に、Bが無資力であっても、Aは相殺できず、自己の債務のみ全額弁済。
⇒相殺禁止の理由に照らして合理的な範囲に限定すべきではないか。
 
 改正相殺禁止の対象となる不法行為債権を次の@Aに限定し、それ以外は相殺可能に
@ 加害者の悪意による不法行為に基づく損害賠償(← a 誘発防止という観点)
A 生命・身体を侵害する不法行為に基づく損害賠償(← b 現実弁償が必要という観点)
※ Aに関連して、一般の債務不履行に基づく生命・身体の侵害による損害賠償も相殺を禁止している法の内容
 
 
17.弁済に関する見直し(第三者弁済)・・・・・・・・・・51
問題の所在
 債務者の意思に反していることを知らない債権者が受けた弁済が後に無効になるおそれがある。
 債権者は、見知らぬ第三者から弁済をしたい旨の申し出があっても、拒絶することができない。
新法の内容
「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者」の弁済が債務者の意思に反する場合であっても、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときには、その弁済は有効としている。 【新§474】
「弁済をするについて正当な利益を有する者以外の第三者」は、債権者の意思に反して、弁済をすることができない。【新§474】
※ 「利害関係を有しない第三者」の表現を「弁済をするについて
正当な利益を有する者でない第三者」に変更
 
18.契約に関する基本原則の明記・・・・・・・・・・・・・52
19.契約の成立に関する見直し・・・・・・・・・・・・・・52
問題の所在
 これらの基本原則は確立した法理として異論なく認められているが、民法に明文の規定はない。
改正法の内容
 「法令に特別の定めがある場合を除き」、「法令の制限内において」といった文言を加えた上で、契約に関する基本原則を明文化 【新§521、 522U】
 
対話者の対する契約の申込みの効力等の明記
問題の所在
 隔地者に対して承諾の期間を定めないで(〜ま でに回答してください、と定めずに)行った申込 みについては規定があるが、対話者に対して 承諾の期間を定めないで行った申込みについ て規定はなく、そのルールが不明瞭。
 
改正法の内容
 対話者に対して承諾の期間を定めないで行った 申込みに関する有力な解釈を明文化 対話が継続している間であればいつでも申 込みの撤回が可能(新§525U) 対話継続中に承諾がされなければ、申込み は効力を失う(新§525V)
※ 併せて、原則撤回不可の申込みも撤回権を留保し たケースでは撤回可能等の例外的取扱いについて の解釈も明文化(新§523T、 §525T、 §525V)
 
隔地者間の契約の成立時期の見直し
問題の所在
 承諾通知の発信時に契約が成立すると、申込者が知らない 間に履行遅滞 に陥るおそれがあるなど、申込者が不測の損 害を被るおそれがある。
 当事者が迅速な契約の成立を望むのであればメール等を 使えばよく、迅速な通信手段のある今日では例外規定を置 く必要性に乏しい。
      ↓
※既にインターネット上の取引においては、発信主義ではなく、到達主義 を採用(電子消費者契約法)。
 
改正法の内容
§ 526Tを削除
 隔地者間の場合でも、承諾の意思表示が相手方に到達した 時に効力が発生(現§97Tが適用される。)
 
20.危険負担に関する見直し・・・・・・・・・・・・・・・55
問題の所在
@について債権者主義を採用すると、例えば、建物の売買契約の 締結直後にその建物が地震によって滅失した場合にも買主は代金 を支払う義務を負うこととなるが、この結論は債権者に過大なリスク を負わせるものであって不当ではないか。
              ↓
改正法の内容
@について債務者主義を採用(現§534・535を削除)
※ 併せて、契約解除の要件に関する見直しに伴い、効果を反対 給付債務の消滅から反対給付債務の履行拒絶権に改める。【新§536】
※ 買主が目的物の引渡しを受けた後に目的物が滅失・損傷したときは、買主は代金の支払(反対給付の履行)を拒めない。【新§567T】
 
21.消費貸借に関する見直し・・・・・・・・・・・・・・・56
問題の所在
 現587条によれば、金銭の借入について貸主と借主が合意をして も、実際に金銭が交付されるまで契約は成立しない(要物契約)。
 借主は、金銭を交付せよという請求ができない。
 例:住宅ローンを利用して不動産を購入する場合判例上、合意のみによる消費貸借の成立も認められている(諾成 的消費貸借)が、区別があいまいで不安定
                   ↓
改正法の内容【いずれも新§587-2】
 書面によることを要件として、合意のみで消費貸借の成立を認める。
 借主は、金銭の交付を受ける前は、いつでも契約を解除できる。→ 借主に借りる義務を負わせない趣旨
 その場合に貸主に損害が発生するときは、貸主は賠償請求できるが、限定的な場面でのみ請求は可能
   例:相当の調達コストがかかる高額融資のケース
     → 消費者ローンなど少額多数の融資では、借主の契約解除による損害なし
 
22.賃貸借に関する見直し・・・・・・・・・・・・・・・・57
賃貸借終了時のルールの明確化(@敷金)
問題の所在
 賃貸借の終了時における敷金の返還等について、民法 には規定がない。
 この問題を巡る紛争は少なくなく、判例の積み重ねに よって紛争解決
 → 市民生活に多くみられるトラブルの解決指針とな るルールは民法に明記すべきではないか
改訂法の内容 【いずれも新§622-2】
 敷金の定義(賃料債務等を担保する目的で賃借人が 賃貸人に交付する金銭で、名目を問わない)を明記
 賃貸借に当たっては、敷金のほか、地域によって 「礼金」「権利金」「保証金」等の名目で金銭が差し入れられることがあり、その目的も様々なものがある。 名目にかかわらず、担保目的であれば敷金に当たると整理。
 敷金の返還時期(賃貸借が終了して賃貸物の返還を 受けたとき等)・返還の範囲(賃料等の未払債務を控除した残額)等に関するルールを民法に明記
 
賃貸借終了時のルールの明確化(A原状回復)
問題の所在
 賃貸借の終了時における賃借物の原状回復の範囲等 について、民法には規定がない。  この問題を巡る紛争は少なくなく、判例等の積重ねによって紛争解決
→市民生活に多くみられるトラブルの解決指針となるルールは民法に明記すべきではないか。
     ↓
 賃借物に損傷が生じた場合には、原則として賃借人は原状回復の義務を負うが、通常損耗(賃借物の通常の使用収益によって生じた損耗)や経年変化についてはその義務を負わないというルールを民法に明記。【新§621】
 
賃貸不動産が譲渡された場合のルールの明確化
問題の所在
 例えば、家主Aが賃貸中の建物を第三者Cに譲渡したという事例で、賃借人Bは誰に対して賃料を支払えばよいか、民法には規定がない。
改訂法の内容
 次のような判例法理を明文化する。【新§605-2T・V】
 上記の事例で、賃貸人の地位はAからCに移転
 もっとも、CがBに対して賃料請求等をするには、Cへの建物の所有権移転登記が必要(賃借人Bの保護)
 
〈賃貸人の地位の移転の例外(旧所有者への留保)〉
・多数の入居者がいる賃貸マンションなどで、投資法人Cが、入居者のいる優良な賃貸不動産として取得したうえで、入居者との間の賃貸管理を引き続き旧所有者(賃貸人)に行わせるため、1棟ごと旧所有者に賃貸する(入居者は転借人となる)という実務がある。
・現在は、Cに賃貸人の地位が移転してしまうため(判例法理)、多数の賃借人との間で別途合意をする必要あり。
→同意を得るのが煩瑣。もっとも単純に同意不要とすると、AC間賃 貸借が終了すると入居者はCに対抗できず、退去を余儀なくされかねない。
改正法の内容
例外として、ACの合意のみで賃貸人の地位をAに留保できるが、AC間賃貸借が終了した場合には、BらとCの賃貸借関係に移行する旨を明文化【新§605-2U】
 
賃貸借の存続期間の見直し
問題の所在
 現代社会においては、20年を超える賃貸借のニーズあり(例:ゴルフ場の敷地である山林の賃貸借)。
 
改正法の内容
  賃貸借の存続期間の上限を50年に伸張
  (参考) 物権である永小作権の存続期間は、上限50年(民法§278T)
 
(賃貸借の存続期間)
604条
 賃貸借の存続期間は、五十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。
2  賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五十年を超えることができない。
 
 太陽光発電所、ゴルフ場用地など
 
(永小作権の存続期間)
278条
 永小作権の存続期間は、20年以上50以下とする。設定行為で50年より長い期間を定めたときであっても、その期間は、50年とする。
2  永小作権の設定は、更新することができる。ただし、その存続期間は、更新の時から50年を超えることができない。
3  設定行為で永小作権の存続期間を定めなかったときは、その期間は、別段の慣習がある場合を除き、30年とする。
 
(定義)
借地借家法2条
 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。
 
(借地権の存続期間)
借地借家法3条
 借地権の存続期間は、30年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。
 
(建物賃貸借の期間)
借地借家法29条
期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。
2 民法604条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。(期間制限規定)
 
土地賃貸借契約、、、期間制限あり
建物賃貸借契約、、、期間制限なし
 
(贈与等に関する経過措置)
附則34条
 施行日前に贈与、売買、消費貸借(旧法第五百八十九条に規定する消費貸借の予約を含む。)、使用貸借、賃貸借、雇用、請負、委任、寄託又は組合の各契約が締結された場合におけるこれらの契約及びこれらの契約に付随する買戻しその他の特約については、なお従前の例による。
2 前項の規定にかかわらず、新法604条2項の規定は、施行日前に賃貸借契約が締結された場合において施行日以後にその契約の更新に係る合意がされるときにも適用する。
3 第一項の規定にかかわらず、新法第六百五条の四の規定は、施行日前に不動産の賃貸借契約が締結された場合において施行日以後にその不動産の占有を第三者が妨害し、又はその不動産を第三者が占有しているときにも適用する。
 
23.請負に関する見直し・・・・・・・・・・・・・・・・・61
@報酬
問題の所在
 請負の報酬は、完成した仕事の結果に支払われるものとされ、中途で契約が解除されるなどした場合については、特にルー ルを設けていない。
 他方で、判例は、請負契約が中途で解除された事案においても、注文者が利益を得られる場合には、中途の結果についても、利益の割合に応じた報酬の請求は可能と判断
⇒ 中途の結果について報酬が請求され、紛争に発展するケースは、実際にも少なくないことから、明確なルールが必要
改正法の内容
 次のいずれかの場合において、中途の結果のうち可分な部分によって注文者が利益を受けるときは、請負人は、その利益の割合に応じて報酬の請求をすることが可能であることを明文化【新§634】
 @仕事を完成することができなくなった場合
 A請負が仕事の完成前に解除された場合 
(注) 仕事を完成することができなかったことについて注文者に帰責事由がある場合には、報酬の全額を請求することが可能【新§536U】
 
A請負人の担保精勤の整理
問題の所在
 「瑕疵」という用語については、「契約の内容に適合していないこと」を意味するものと解釈されていることを踏まえ、規定を見直すべき。
 改正法においては、売買における売主の担保責任について、代金減額請求をすることができることを明記するなど整理。売買と請負とで担保責任の在り方が大きく異なるのは合理性が乏しい。
改正法の内容
 売買の規定を準用して、次のとおり見直し【§559・562等】
 目的物が契約の内容に適合しない場合に、請負人が担保責任を負うと規定
 その担保責任として、注文者は、@修補等の履行の追完 A損害賠償請求 B契約の解除C代金減額請求 をすることができると規定
 
Bその他
(1)建物等の建築請負における解除権の制限の見直し
問題の所在
 現代においては、深刻な瑕疵があっても解除できないのは、注文者にとってあまりに不合理ではないか。
 判例も建替費用相当額の損害賠償は認めており、解除の制限は実質的に意味を失っている。
 
改正法の内容
 建物等の建築請負における注文者の解除権を 制限する規定を削除
(2)注文者の権限の期間制限の見直し
問題の所在
 瑕疵に気付かずに期間が経過してしまうおそれ。
 制限期間内に権利行使までするのは注文者の 負担が重い
 
改正法の内容
 契約に適合しないことを知ってから1年以内にその旨の通知が必要と改める。建物等の例外的取扱いは廃止。
 
24.寄託に関する見直し・・・・・・・・・・・・・・・・・64
問題の所在
 現657条によれば、物の保管について寄託者と受寄者が合意をしても、実際に物が交付されるまで契約は成立しない(要物契約)。
→ 寄託者は、物を受領せよという請求ができない。
 判例上、合意のみによる寄託の成立も認められ(諾成的寄託)、実務上も利用されていた。
 
改正法の内容【新§657・657-2】
 合意のみで寄託の成立を認める。
  ※書面は不要
 物の交付前の契約の解除について、以下のルールを新設
 @ 寄託者は、物の交付をする前は、いつでも契約を解除できる。
   その場合に受寄者に損害が発生するときは、受寄者は賠償請求できる。
   → 寄託者は物の交付後いつでも返還を請求できるのと同様
 A 書面による寄託の場合を除き、無報酬の受寄者は、物の交付を受ける前は、いつでも契約を解除できる。
   → 軽率な契約や紛争のおそれを防止する趣旨
 B 報酬を得る受寄者と書面による寄託の無報酬の受寄者は、寄託者が物の引渡しの催告を受けても物の引渡しをしないときは、契約を解除できる。
   → 保管場所を確保し続ける負担から受寄者を解放する趣旨
 
(1)当事者の権利・義務・・・・・・・・・・・65
問題の所在(寄託物に関する権利を主張する第三者との関係)
 現660条は、寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対する訴えの提起等をした場合に、受寄者は寄託者に通知する義務を負う旨のみを規定。
 → 受寄者は寄託物を誰に返還すればよいのかなどについて明確なルールを定めるべきではないか。
 
改正法の内容【新§660】
 受寄者は、原則として寄託者に対して寄託物を返還しなければならないと規定。
 ただし、受寄者が訴えの提起等を受けたことを寄託者に通知した場合等において、寄託物を第三者に引き渡すべき旨を命ずる確定判決等があったときに、その第三者に寄託物を引き渡したときは、例外的に寄託者に対する返還は不要と規定。
 
問題の所在(損害賠償及び費用償還の請求権の期間制限)
 寄託物の一部滅失等に関する寄託者の損害賠償請求や受寄者の費用償還請求が寄託物の返還後にされる場合には、一部滅失等が受寄者の保管中に生じたものか否かについて争いが生ずることがある。
 寄託者の保管中に寄託者の損害賠償請求権の消滅時効が完成するのは不合理。
改正法の内容【新§664-2】
 寄託物の一部滅失等による寄託者の損害の賠償及び受寄者の費用の償還は、寄託者が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならないと規定。
 寄託物の一部滅失等による寄託者の損害賠償請求権については、寄託者が返還を受けた時から1年を経過するまでは、時効の完成を猶予。
 
(2)特殊な類型の寄託・・・・・・・・・・・・66
(混合寄託)
問題の所在
 現実に行われているが、民法に明文の規定がなく、ルールが不明瞭
改正法の内容【新§665-2】
 混合寄託の要件について、各寄託者の承諾が必要であることを明文化。
 寄託物の一部が滅失したときは、各寄託者は、受寄者に対し、総寄託物に対する自己の寄託した物の割合に応じた数量の寄託物の返還を請求できるにとどまると規定。
  ※ 併せて、損害賠償請求は妨げられないことを注意的に規定。
 
(消費寄託)
問題の所在
 現666条で準用する消費貸借の規定には、寄託の性質にそぐわない部分がある。
 例:消費寄託では、返還時期を定めたときでも、寄託者はいつでも寄託物の返還を請求できる(§663)とするのが合理的
改正法の内容【新§666】
 消費寄託についても寄託の規定を適用することを原則とする。
 寄託物の担保責任については消費貸借の規定を準用。
 預貯金については、更に特例を設けて、受寄者による期限前の返還(新§591U)を可能にする。
 
 
 
(法務省Hpから)
 
・民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行期日
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について
 平成30年7月6日,民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)が成立しました(同年7月13日公布)。
 民法のうち相続法の分野については,昭和55年以来,実質的に大きな見直しはされてきませんでしたが,その間にも,社会の高齢化が更に進展し,相続開始時における配偶者の年齢も相対的に高齢化しているため,その保護の必要性が高まっていました。
 今回の相続法の見直しは,このような社会経済情勢の変化に対応するものであり,残された配偶者の生活に配慮する等の観点から,配偶者の居住の権利を保護するための方策等が盛り込まれています。このほかにも,遺言の利用を促進し,相続をめぐる紛争を防止する等の観点から,自筆証書遺言の方式を緩和するなど,多岐にわたる改正項目を盛り込んでおります。
 今回の改正は,一部の規定を除き,2019年(平成31年)7月1日から施行されます(詳細は以下の「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行期日」の項目をご覧ください。)。
 改正法の概要については,併せて以下の資料もご参照ください。
 ■相続法改正の概要について【PDF】
 ■ポスター【PDF】
 ■パンフレット【PDF】
 ■チラシ【PDF】
 
 また,同時に成立しました「法務局における遺言書の保管等に関する法律」の概要については,以下のページもご参照ください。
 ■法務局における遺言書の保管等に関する法律について
 
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の概要
1 配偶者の居住権を保護するための方策について
  配偶者の居住権保護のための方策は,大別すると,遺産分割が終了するまでの間といった比較的短期間に限りこれ
 を保護する方策(後記?)と,配偶者がある程度長期間その居住建物を使用することができるようにするための方策(後
 記?)とに分かれています。
 ? 配偶者短期居住権
    配偶者短期居住権の要点は,以下のとおりです。
    以下の資料も併せてご参照ください。   
    ■配偶者短期居住権について【PDF】
 
   (要点)
    ア 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合の規律
      配偶者は,相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には,遺産分割によりその建物の
    帰属が確定するまでの間又は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間,引き続き無償
     でその建物を使用するこ とができる。
    イ  遺贈などにより配偶者以外の第三者が居住建物の所有権を取得した場合や,配偶者が相続放棄をした場合な
     どア以外の場合
      配偶者は,相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には,居住建物の所有権を取得し
    た者は,いつでも配偶者に対し配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができるが,配偶者はその申入れを
     受けた日から6か月を経過するまでの間,引き続き無償でその建物を使用することができる。
 
 ? 配偶者居住権
    配偶者居住権の要点は,以下のとおりです。
    以下の資料も併せてご参照ください。
    ■配偶者居住権について【PDF】
 
   (要点)
    配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の所有建物を対象として,終身又は一定期間,配偶者にその使用
  又は収益を認めることを内容とする法定の権利を新設し,遺産分割における選択肢の一つとして,配偶者に配偶者
  居住権を取得させることができることとするほか,被相続人が遺贈等によって配偶者に配偶者居住権を取得させる
  ことができることにする。
 
・ 仮登記の効用?
 
 
2 遺産分割に関する見直し等
 ? 配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定)
   持戻し免除の意思表示の推定規定の要点は,以下のとおりです。
    以下の資料も併せてご参照ください。
    ■長期間婚姻している夫婦間で行った居住用不動産の贈与等について【PDF】
 
   (要点)
    婚姻期間が20年以上である夫婦の一方配偶者が,他方配偶者に対し,その居住用建物又はその敷地(居住用不
  動産)を遺贈又は贈与した場合については,民法第903条第3項の持戻しの免除の意思表示があったものと推定し,
  遺産分割においては,原則として当該居住用不動産の持戻し計算を不要とする(当該居住用不動産の価額を特別受
  益として扱わずに計算をすることができる。)。
 
 ? 遺産分割前の払戻し制度の創設等
    遺産分割前の払戻し制度の創設等については,大別すると,家庭裁判所の判断を経ないで預貯金の払戻しを認
  める方策(後記ア)と,家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策(後記イ)とに分かれます。 それぞれの方
   策の要点は,以下のとおりです。
    また,以下の資料も併せてご参照ください。
    ■遺産分割前の払戻し制度について【PDF】
 
   (要点)
   ア 家庭裁判所の判断を経ないで,預貯金の払戻しを認める方策
     各共同相続人は,遺産に属する預貯金債権のうち,各口座ごとに以下の計算式で求められる額(ただし,同一の
     金融機関に対する権利行使は,法務省令で定める額(150万円)を限度とする。)までについては,他の共同相続
    人の同意がなくても単独で払戻しをすることができる。
 
     【計算式】
      単独で払戻しをすることができる額=(相続開始時の預貯金債権の額)×(3分の1)×(当該払戻しを求める共
     同相続人の法定相続分)
 
    イ 家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策
      預貯金債権の仮分割の仮処分については,家事事件手続法第200条第2項の要件(事件の関係人の急迫の
     危険の防止の必要があること)を緩和することとし,家庭裁判所は,遺産の分割の審判又は調停の申立てがあっ
     た場合において,相続財産に属する債務の弁済,相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯
     金債権を行使する必要があると認めるときは,他の共同相続人の利益を害しない限り,申立てにより,遺産に属
     する特定の預貯金債権の全部又は一部を仮に取得させることができることにする。    
 
 ? 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲
    遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲に関する規律の要点は,以下のとおりです。
    以下の資料も併せてご参照ください。
     ■相続開始後の共同相続人による財産処分について【PDF】
 
   (要点)
    ア 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても,共同相続人全員の同意により,当該処分さ
      れた財産を遺産分割の対象に含めることができる。
    イ 共同相続人の一人又は数人が遺産の分割前に遺産に属する財産の処分をした場合には,当該処分をした共
     同相続人については,アの同意を得ることを要しない。
 
3 遺言制度に関する見直し
 ? 自筆証書遺言の方式緩和
    自筆証書遺言の方式緩和の要点は,以下のとおりです。
    以下の資料も併せてご参照ください。
    ■自筆証書遺言に関する見直し【PDF】
 
   (要点)
    全文の自書を要求している現行の自筆証書遺言の方式を緩和し,自筆証書遺言に添付する財産目録については
  自書でなくてもよいものとする。ただし,財産目録の各頁に署名押印することを要する。
 
   Q&Aも併せてご参照ください(自筆証書遺言に関するルールが変わります。)。
 
  ? 遺言執行者の権限の明確化等
    遺言執行者の権限の明確化等の要点は,以下のとおりです。
 
    (要点)
     ア 遺言執行者の一般的な権限として,遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行
      為は相続人に対し直接にその効力を生ずることを明文化する。
     イ  特定遺贈又は特定財産承継遺言(いわゆる相続させる旨の遺言のうち,遺産分割方法の指定として特定の財
      産の承継が定められたもの)がされた場合における遺言執行者の権限等を,明確化する。
 
4 遺留分制度に関する見直し
  遺留分制度に関する見直しの要点は,以下のとおりです。
  以下の資料も併せてご参照ください。
  ■遺留分制度の見直し【PDF】
 
  (要点)
   ? 遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生ずるとされている現行法の規律を見直し,遺留分に関
    する権利の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずることにする。
   ? 遺留分権利者から金銭請求を受けた受遺者又は受贈者が,金銭を直ちには準備できない場合には,受遺者等
    は,裁判所に対し,金銭債務の全部又は一部の支払につき期限の許与を求めることができる。
 
5 相続の効力等に関する見直し
  相続の効力等に関する見直しの要点は,以下のとおりです。
  以下の資料も併せてご参照ください。
  ■相続の効力等の見直し【PDF】
 
 (要点)
  特定財産承継遺言等により承継された財産については,登記等の対抗要件なくして第三者に対抗することができると
 されている現行法の規律を見直し,法定相続分を超える部分の承継については,登記等の対抗要件を備えなければ第
 三者に対抗することができないことにする。
 
6 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
  相続人以外の者の貢献を考慮するための方策の要点は,以下のとおりです。
  以下の資料も併せてご参照ください。
  ■相続人以外の者の貢献を考慮するための方策【PDF】
 
 (要点)
  相続人以外の被相続人の親族が,無償で被相続人の療養看護等を行った場合には,一定の要件の下で,相続人に
 対して金銭請求をすることができるようにする。
 
7 その他
  今回の改正に関するその他の資料については,以下のとおりです。
  ■新旧対照表【PDF】
  ■経過措置について【PDF】
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行期日
 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行期日は,以下のとおりです。なお,以下の資料もご覧ください。
 
 
 (要点)
 (1) 自筆証書遺言の方式を緩和する方策  
    2019年1月13日
 
 (2) 原則的な施行期日
    2019年7月 1日
 
 (3) 配偶者居住権及び配偶者短期居住権の新設等
     2020年4月 1日
 
 民法(相続関係)改正法の施行期日について【PDF】