誤判、冤罪の真の理由と原因・
                     悪魔の正体
 
                 大阪弁護士会所属
                    弁護士 五 右 衛 門
                        (続・刑事訴訟の仕組み
 
1話
 誤判や冤罪はつきない。
 何故、誤判や冤罪が起きるのか。もちろん、誤判や冤罪事件には、それぞれ、その事件特有の誤判や冤罪を起こす諸要因があったであろうことは想像できる。 
 そして、誤判や冤罪を防ぐために誤判や冤罪の研究もなされているのだろう。
 しかし。いくら研究しても、誤判や冤罪の真の理由や原因から目をそらしていては、誤判や冤罪などなくなりはしない。
 正面から、誤判や冤罪の原因を追及すべきである。
                  真の誤判や冤罪の原因を!! 
 悪魔の正体を!! 
 
2話
 誤判,冤罪の理由や原因を追及するためには、初動捜査時の客観的証拠の有無と程度、そして被疑者、被告人の自白の有無と自白否認の時期などを注視して事件を分析していく必要がある。
 犯人を特定できるだけの客観的な証拠がない場合に、捜査機関の推測、見込み捜査による自白の追求と誤認により犯人ではないのかとの標的となった人との、熾烈な闘争が始まるのである。
 日本の刑事司法においては、米国のような司法取引は認められていない。
 利益誘導や被疑者の自由意思を抑圧する形での取り調べはいけない、ということとなっている。
 しかし、現実の捜査は、各種の利益誘導と精神的、肉体的抑圧を利用して、自白の追求が行われている。
 この現実の捜査を直視せず、きれいごとをのたまう人に、誤判や冤罪を語る資格はない。
 
 
事例1
窃盗で起訴の男性に無罪
岐阜、「調書の信頼性低い」
 知人と共謀し、駐車場の車からタイヤを盗んだとして、窃盗罪に問われた男性被告(33)=岐阜県瑞穂市=の判決公判が平成17年5月17日、岐阜地裁であり、土屋哲夫裁判官は「検察の調書の信頼性は低く、被告人が有罪と言える証拠が不十分」として、求刑懲役2年6月に対し無罪を言い渡した。
 男性は昨年7月、窃盗容疑で逮捕された知人の男(24)が「男性と一緒に犯行に及んだ」と供述したため、岐阜県警羽島署に共犯として逮捕され、約10カ月間拘置されていたが、判決後、直ちに釈放された。
 男性は公判で「自分はやっていない」と一貫して否認。証人として出廷した知人も「自分一人の犯行」と供述を翻した。男性の犯行をうかがわせる有力な証拠がなかったため、知人の供述の信用性が争われた。
 土屋裁判官は「捜査段階での知人の供述は信用できない」として、公判での供述を採用した。
(共同通信)
 
事例1−外形検討
1 犯人の供述のみによる引き込み事案
2 逮捕後の身柄拘束継続
3 捜査段階で自白−公判後、一貫否認
4 自白強要、虚偽利益誘導(警察の常套手段か)の疑い濃厚
5 本事例のような場合、検察官調書に意味はない−警察調書の上塗り−強要、虚偽利益誘導隠蔽機能
6 検察の警察チェック機能なし−追認機能のみ(検察のチェック意思の存在も疑問)
7 「常に、警察や検察は真実と正義を追究する」というのが幻想であることに気づくはず。
 
事例1−悪魔の探索
1 犯人の引き入れ供述に基づく逮捕までは−やむを得ないか
  犯人供述を前提とした追求捜査もやむを得ないか
2 虚偽利益誘導の程度はどうか
3 送致を受けた捜査検事の心証はどうであったのか
4 自白を否認しだした公判後の公判立合検事は、どのように理解したのか・・ここに小市民的、悪魔がいた可能性がある!!
5 タイヤ窃盗という被害金額がそれほど大したことのない事件で−−10ケ月間も勾留を継続した・・担当裁判官はなぜ勾留を継続したのか、ここに事なかれ主義の、検察迎合型の、悪魔がいた可能性がある。
6 複数の小悪魔が存在すると、その害悪は、その数乗、増大する!!
 
・・続く・・・
 
事例2
 無罪判決賀地検が控訴
 時効直前起訴の北方事件
 佐賀県北方町の山中で1989年、3女性の遺体が見つかった「北方事件」で、時効直前に殺人罪で起訴された松江輝彦被告(42)に無罪(求刑死刑)を言い渡した佐賀地裁判決に対し、佐賀地検は18日、福岡高裁に控訴した。
 新倉英樹佐賀地検次席は「地裁が被告の上申書を却下したことには法令違反があり、無罪判決は証拠の評価を誤っている」と控訴理由を説明した。
 松江被告は別件で起訴拘置中の89年、県警の任意の調べに対し、いったんは殺害を認める上申書を書いたが、佐賀地裁は「長時間にわたるなど違法な調べだった」として証拠請求を却下。今月10日の判決で「犯人と推認できる証拠はなく、犯罪の証明がない」として無罪を言い渡した。(共同通信)
 坂主裁判長は、吉野タツ代さん=当時(37)=が殺害された日の松江被告の行動について「合理的な理由がないまま幾多も供述が変遷している」としてアリバイの成立は認めなかった。しかし「変遷や虚偽のアリバイ主張があっても、直接犯人とは推認できない」とした。(共同通信)
事例2−外形検討
1 15年も前の事件・・証拠は散逸、消失しているか
2 証拠の主たるものは被告人の自白上申書のみか
3 長時間にわたる、違法な取り調べがなされたよう
4 自白上申書の評価ひとつで、人を死刑にするのか