本格執筆し直し再開・2004/8/7日
 
保険代理店必携(保険募集のプロは保険契約のプロではありません
      セールスレディから特級保険事務所まで
 
保険募集担当者のための
保険代理店をめぐる義務と損害賠償責任
−−−実際の裁判例から勉強する、その指針と教訓−−−
     付録1・Risk Looking
     付録2・保険関連判例 
                  大阪弁護士会所属
                      弁護士 服 部 廣 志  
 
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(指針と教訓)−−保険代理店の方への指針等を記載しています。
(指導と教育)−−元請保険会社の方へ指針等を記載しています。
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目次
 序論
第一編 保険代理店をめぐる義務と損害賠償責任
一 保険募集に関する諸活動・募集行為の分類と紛争発生の契機
1 保険契約の締結の代理又は保険契約締結の媒介
2 見込み客の発見
3 契約締結前の行為
 
第二編 Risk Looking
 
第三編 保険関連判例
 
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序論
 
 保険募集についての制限が緩和され、生保レデイーも損害保険の募集業務を行うようになり、また銀行などの金融機関の窓口においても保険商品の販売が可能とされ、保険募集の業界は、戦国時代、乱世のような状況になってきています。
 このように、各種の保険商品を販売する窓口のチャンネルが多様化されてきますと、当然、保険販売を担当する者について、募集をしている保険商品についての知識のみならず、保険契約に関する裁判例や法律の知識が必要となってきます。
 実際に起きている裁判の例や保険に関する法律の知識を勉強しておかないと、あなた自身が保険募集や保険販売に関係するトラブルに巻き込まれることとなります。
 
 元請け保険会社で、あなたの相談に乗ってくれる元請け保険会社の担当社員も、必ずしも、十分な知識を持っていない場合が多いのです。元請け保険会社の担当書の助言が間違っていたとしても、その社員はトラブルの責任をとってくれないでしょう。自分自身の保身のために、責任の所在をあいまいにして、結局、あなたが責任をとらざるを得なくなる場合もあるのです。
 また、あなたがミスをして元請け保険会社が損害賠償の責任を負うこととなれば、元請け保険会社は、あなたとの保険募集にすることについての委託契約を解除、解約することは十分ありえることなのです。
 
 保険会社は、保険商品の販売の窓口が多く認められるようになってきていることから、成績を上げない、またミスをするような保険代理店との保険募集の委託契約を解除して、元請け保険会社の利益の確保にマイナスとなるような保険の代理店を切り捨てしたいのです。
 
 ごご自分の生活と仕事は、自分で守るという気持ちが大切なのです。そのためには、ご自分で、自分を守るための勉強をしておく必要があるのです。
 
 本書は、このような動機と観点から、主として現実に裁判で問題となった保険に関する紛争の事例を勉強することにより、保険代理店としての注意事項や留意事項を学ぶとともに、リスクと保険法を学ぼうするものです。
 
第一 保険代理店をめぐる義務と損害賠償責任
 
一 保険募集に関する諸活動・募集行為の分類と紛争発生の契機
 
1 保険契約の締結の代理又は保険契約締結の媒介
 保険の募集に関する諸活動は、保険契約の締結の代理又は保険契約締結の媒介に分けられますが、その実際の活動は
イ 見込み客の発見
ロ 保険内容の説明
ハ 保険料の呈示
ニ 保険契約締結の勧誘
ホ 保険契約の締結
ヘ 保険料の受領、領収、そして保険料領収書の発行、交付等の行為に分けることができます(「損害保険実務講座・補巻、東京海上火災保険株式会社編、有斐閣217頁以下)。
 
 このような保険募集人の諸活動を分類し、そこで問題となり得るような行為の類型等の考えてみましょう。
 
2 見込み客の発見
 この行為の類型においては、問題となることは少ないものと考えられる。
 しかし、保険代理店の方の成績のよしあしは、実際は、この見込み客の発見探知能力のよしあしにかかると言っても言い過ぎではないのかもしれない。
 現在、保険業界も自由化の波を受けています。保険商品についても自由化され、従来とは異なり、保険会社により同種類の保険商品であっても、その内容が異なります。
 
 保険業法違反−−比較行為の不当性など
 
 
 
 
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3 契約締結前の行為
 「保険内容の説明」、「保険料の呈示」及び「契約更新手続き」等の契約締結に至る前段階の諸活動
 保険代理店の募集行為に関連して問題となる多くの事例は、この保険契約締結前の行為に集約されると言っても過言ではないように思います。
 保険募集人としては、保険契約の締結がその仕事の成果であり、それが手数料収入に結びつくことから、いきおい「保険契約の締結」を目的とし、また高額の手数料収入に結びつく「より高額な保険料の契約締結」へと誘導しかねないものであり、また保険契約締結後の更新手続き等については、その保険料が低額な場合に保険代理店は保険契約契約更新手続きに熱心でないことがあるからです。
 
イ 保険約款の拘束力と約款内容の説明等
 
 保険契約というような、その契約数が膨大であるものについては、保険契約約款が設けられており、仮に保険契約を締結する人が、その約款内容を正確に知らなかったとしても、保険契約者は「当該約款」に拘束され、その約款の規制を受けると一般には考えられている。
 これが「普通取引約款の拘束力」といわれる問題であり、これに関する裁判例等は多数見られる。
 従来は、この問題は「どのような場合に、約款の適用、拘束を受けるのか」という側面からのみ論じられてきたが、西暦2001年から「消費者契約法」・「金融商品販売法」の施行が予定されており、これらの法律は事業者に対し「契約内容について必要な情報の提供義務や説明義務を課しており、今後は、単に「約款がある」というような論法のみでは保険契約を律することが困難となると予想される。
 従って、保険代理店が保険契約の締結代理ないし媒介代理を行う際、「どのような説明をしたのか」、「どのような説明をすべきか」という点は、約款の拘束力の前提条件及び消費者契約法・金融商品販売法等の内容を十分理解しておく必要があると考えられる。
 
ロ 保険約款の拘束力
 
 普通取引約款の拘束力を肯定したリーディンク判例は、大審院大正4年12月24日第1民事部判決である。
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 大審院大正4年12月24日第1民事部判決・民録21輯2182頁
・・事実の概要
 ]ほか一名(原告・控訴人・被上告人)は、わが国で保険事業を営む外国会社であるY株式会社(被告・被控訴人・上告人)との間で、その所有家屋につき火災保険契約を締結した。その際の保険申込書にはY会社の保険約款を承認し申込をなす旨が印刷により記載されていた。Y会社の保険約款には、わが国保険会社の約款には存在しない、樹林火災または森林の燃焼により起これる損害については会社は責任を負わない旨の免責条項があった。]の家屋が森林火災の延焼により焼失したので、]が保険金の請求をしたところ、Yは、右保険約款の免責条項により損害填補の責任はないと抗弁した。
 原審(東京控判大正4・3・17新聞1011号21頁)は、火災保険の填補範囲を定める商法419条(現665条)は任意規定であるが、「本件に於いては当事者間に右商法の規定に異なり保険者たるY会社の責任を定むる意思表示ありしものと認め得」ずとして、]の請求を認容した。その際、@保険契約成立前に]に保険約款を交付したことも、Y会社の保険約款中に係争の免責条項の存することを告知したこともない、A申込書に約款を承認し申込む旨の前記印刷の記載があるが、申込人は単に主要事項を記入するだけだから、また、保険申込前に交付された営業案内書に保険金の支払は保険約款の条項に抵触しない範囲内においてなす旨記載されていたが、それには保険約款の条項を掲げていないから、申込書の記載や営業案内書によって、]が約款を承認して契約の内容とする意思表示があったものとすることはできない、B係争免責約款は我が内国火災保険会社の普通保険約款中に掲げる事例はなく、そういう場合、信義上予めその免責約款の存在を申込人に告知するか、保険約款を交付して知らせるペきなのに、そうしていない、と判示する。
 Y会社上告。破棄差戻。
・・判旨
1 「火災保険契約当事者ノ一方タル保険者力我国二於テ営業スル以上ハ其内国会社ナルト外国会社ナルトヲ間ハス苟モ当事者双方力特二普通保険約款二依ラサル旨ノ意志ヲ表示セスシテ契約シタルトキハ反証ナキ限リ其約款ニ依ルノ意志ヲ以テ契約シタルモノト推定スヘク」
2 「本件事実ノ如ク我国二於テ火災保険事業ヲ営メル外国会社二対シ其会社ノ作成二係ル書面ニシテ其会社ノ普通保険約款二依ル旨ヲ記載セル申込書二保険契者カ任意調印シテ申込ヲ為シ以テ火災保険契約ヲ為シタル場合ニ於テハ仮令契約ノ当時其約款ノ内容ヲ知悉セサリシトキト雖モ一応之二依ルノ意思ヲ以テ契約シタルモノト推定スルヲ当然トス」)
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 この大審院判決が、保険約款の拘束力に関し、「法律の任意規定と異なる条項は両当事者がその内容を知って意思表示しなければならないとする原審の伝統的な契約の拘束力にそった考え方を排して、約款による意思表示を推定するものとした」(大塚龍児・損害保険判例100選4頁以下)ことから、その後の裁判例は普通保険約款について、当事者がその約款の内容を知らなかったとしても、約款の拘束力、効力を肯定するという方向で判決をしてきている。
 法律には、その内容について、当事者の自由意思に委ねてもよいという条項(任意規定)と当事者の自由意思に委ねることを許さず法律の規定どおりの内容の実現を求める条項(強行法規)があり、強行法規違反の約款に、その効力を認めることはできないものの、任意規定の場合には、その任意規定と異なる約款について、当事者は当該約款に従う意思があったものと推定し、約款の効力、適用を認めるというものである。
 
 「どのような場合に、当事者に約款に従う意思の存在を推定するのか」、また「どのような場合に、約款に従う意思を推定しないのか」という問題は、当該約款の内容と各事例毎に検討を要する事項であると考えられる。
 
 従って、保険約款の適用が肯定される限りにおいて、例えば保険契約者が、「普通保険約款に定められたよる不担保事故」を知らなかったとしても、右約款に従って保険金請求は認められず、また「普通保険約款に定められた保険開始条件等、例えば、保険契約が成立していても、保険料が未払いの場合には保険金は支払わない」というようなことを知らなかったとしても、保険契約上は保護されず、保険金請求は認められないこととなる。
 
保険約款の拘束力と説明義務の関係
 
 このような普通契約約款の存在と、契約者はかならずしもこのような約款の中の重要な事項をも知らない場合があることから、紛争ないしトラブルがおき得るものと考えられる。
 このように意思推定という理由により、保険契約者がその内容を知らなかったとしても、その適用が肯定されることから「保険代理店はどの程度の説明をしたのか」、また「どの程度の説明をすべきなのか」ということが問題となるのである。
 
保険約款による保険金請求否定と説明義務違反の効果
 
 一般論として、保険契約上の問題について、「普通契約約款の有効性が認められ契約者の保険金請求が認められない」という問題と、当該契約者が「保険金請求できるものと誤信したことによる損害の補填」という問題は、別の問題である。
 この区別をしておかなければならない。
 約款の適用が肯定され、保険契約者の保険金請求が認められなかったとしても、それで問題は解決しないのである。
 
 普通契約約款の有効性が認められ契約者の保険金請求が認められないとしても、当該契約者が「保険金請求できるものと誤信したことによる損害」の補填は認めるべきであると考えられる事例は当然存在すると推測され、それは「その契約者の誤信は止むを得ず、かつその誤信に基づく期待は保護すべきであるという事情」が一方では認められ、他方で「保険契約に関し、保険内容の説明、保険契約締結の勧誘ないし保険契約の締結等という行為の中に、保険代理店等に非難されるべき事由」が認められるような場合には、保険金請求ではなく、不法行為、債務不履行(附随義務違反を含む)等を根拠として、保険代理店に保険金相当の金員の損害賠償請求が認められ、また場合により保険業法283条に基づき元請保険会社も同様の責任を負う場合があるのである。
 
 この後者に該当するような行為をした保険代理店は、元請保険会社から、場合により、保険募集委託契約を解除されるという憂き目にあうこととなるのかもしれない。
 
以上・平成12年11月12日掲載
 
 
 
 
 
 
 
保険約款による保険金請求肯定と強行法規違反
 
 保険約款上は保険金請求が認められそうではあるものの、強行法規に違反するということで保険金請求が否定される場合もある。
 
 山口地裁平成11年2月9日判決・判例時報1681号152頁である。保険約款に定める保険金支払事由である保険契約締結後一年を経過後の被保険者の自殺について、保険約款の適用が否定され、商法680条1項1号が適用され、保険金の請求が否定されている。
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 山口地裁平成11年2月9日判決論旨
 本件各約款には、「被保険者が契約日から起算して一年以内に自殺した場合には死亡保険金を支払わない」旨規定していることが認められるところ、かかる約款は、すべての自殺を法定免責事由として定めた商法680条1項1号の適用を、その限りにおいて一部排除したものであると解される。
 そして、かかる規定を反対解釈すれば、被保険者が右の一年を経過した後に自殺した場合には、死亡保険金が一律に支払われるかのごとくである。しかしながら、本来、商法の規定の適用を排除する約款の解釈は厳格になされるべきところ、右商法の規定が、生命保険契約において被保険者の自殺を免責事由としたのは、射倖契約としての性質をも有する生命保険契約は、偶然の事実の経過によって事を決することをその本質とするのであるから、契約者又は被保険者において故意に危険を生ぜしめてはならないことは、保険契約上要請される信義誠実の原則として当然のことであり、また、被保険者が自殺した場合にも保険金を支払うものとすれば、自殺の誘発の危険があるとともに、生命保険契約が不当の目的に利用され、保険契約上の危険が予測不可能なものとなって、生命保険契約制度の維持が困難となるので、かかる事態を防止しようとする趣旨によるものである。かくして、本件各約款は、右商法の規定を受けつつ、個々の場合における自殺の目的を究明することが困難であることに鑑み、右法の趣旨を没却せしめない限りにおいて、被保険者が保険契約締結後一年以上経過して自殺した場合には、保険金取得をその唯一又は主要な目的としたものではなく、かえって、これが、何ら保険契約締結の事実とは無関係な事態であると推定されることを前提とした規定と解するのが相当である。
 とするならば、保険者において、被保険者の自殺が、保険金取得をその唯一又は主要な目的としたものであること、及び自殺免責期間である右一年の経過と保険事故の発生日時に有意的な相関関係があることを主張・立証すれば、右推定は覆され、本件各約款はその前提を失うことになる。したがって、かかる場合は、本件各約款の存在をもって商法六八〇条一項一号の適用は排除されず、たとえ、被保険者の自殺が保険契約締結後一年以上経過してのものであっても、保険者は免責されるとするのが、前記商法の規定の趣旨、及びこれの適用を排除する約款の規定は厳格に解釈すべきとの前記解釈態度にも適うものと思料される。
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 自殺の場合において生命保険金の請求が認められるか、という点である。
 約款上は「被保険者が契約日から起算して一年以内に自殺した場合には死亡保険金を支払わない」旨規定しており、右約款の反対解釈として、「被保険者が契約日から起算して一年を経過した後に自殺した場合には死亡保険金を支払う」という解釈となるが、「当該自殺が生命保険金の取得をその唯一又は主要な目的としたもの」である場合にも前記約款を適用して生命保険金を支払うことは、「商法680条1項1号に違反し、許されない」旨判示し、前記の約款の適用について「当該自殺が生命保険金の取得をその唯一又は主要な目的としたものではない」ことを条件とすると解釈したのである。
 その理由は判決理由のとおりであり、妥当なものと考えられる。
 この場合には、約款上では生命保険金請求権が認められそうであるものの、商法の強行法規に違反するとして生命保険金の請求が否定されているわけです。
 
 このように約款の文理解釈(単純な文言解釈)からすれば、保険金請求が認められると考えられ易いケースについては、質問を受けた場合には、保険代理店としては「正しく説明する義務」があるものと考えられる。
 「自殺による保険金取得目的で保険契約を締結して自殺した場合は生命保険金は請求できませんよ」・・・・と。
 
(指針と教訓・1)
 「保険商品についての正しい知識の会得」ということに留意しない保険代理店の人の陥り易い−不当行為−の一例と思われます。
 「自殺?」
 「あっ、1年経過していたら、保険金でますよ」・・・・と。
 保険商品についての正しい知識の会得ということに留意しない保険代理店の方は、約款その他の約束事について、単純に文言のみで解釈するという問題があります。
 「何故なんだろう?」という「問いかけ」をする習性を身につけた代理店の方は、このような不当行為に及ばないか、不当行為をしても問題発生前に訂正修正できることとなると思われます。
 「専門家である」と自負する限り、それに見合う努力が要請されることとなるわけです。
(指導と教育・1)
 上記のように保険代理店の方が勘違いし易い事項については、保険会社として、保険代理店の人が誤解しないように周知徹底すべきでしょう。
(指導と教育・2)
 保険会社の担当者が、保険代理店の問い合わせに対し、約款内容を十分理解していなかったため、間違った回答をし、それが保険代理店から契約者に伝えられるというケースが少なからずあります。
 保険会社としては「間違っていました。申し訳ない。」という言葉で終わることができても、保険代理店は、契約者の信頼を失い顧客を失ってしまうわけです。
 保険会社の社員として、自分が回答する内容が、保険代理店の生死を決める場合があるのだということを理解して欲しいと思います。
 「自信がなければ、調べて回答します」と言うべきでしょう。即答することが、信用でも、保険会社社員としての体面でも、なんでもないのです。
 
以上・平成12年11月13日掲載(13日一部加筆訂正)
 
 
 
 
 
 
 
保険約款の適用と解釈
−−−−中間省略・後日記載予定−−−−
説明義務に関連する裁判例
 
(生命保険関係)
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大阪地裁平成9年7月31日判決・判時1645号98頁
 変額保険加入に際し、変額保険の危険性等を説明する義務がある。説明義務を尽くさなかった本件の場合、不法行為が成立する。
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 保険契約と消費貸借契約が密接に関連し、銀行が変額保険の締結に深く関与している場合、銀行は、消費貸借契約の内容について説明することはもちろんのこと、信義則上、変額保険の内容、危険性についても説明すべき義務が生ずるというべきである。
 本件において、相続税対策という経済目的を実現するためには、銀行からの借入と変額保険への加入がいわば「セット」になっており、密接な関連性を有している。
 被告第一勧銀(担当者・被告B)も被告第一生命(担当者・A)も、借入金が変額保険の保険料の原資となることを十分に認識し、かつ、極めて高額の契約を締結するために相互に利用し合って本件各契約を締結したのであって、各契約の関連性及びある契約の当事者が他の契約の締結にも関与の度合いはいずれも極めて大きいというべきである。
 このような状況に照らすとき、被告第一生命は、本件消費貸借契約の効果や危険性、本件変額保険との関連性等についても、説明すべき義務があるというべきである。
 A及び被告Bは、信義則上、本件各変額保険の仕組み及びその危険性並びに本件消費貸借と組合わせられた際に生じる危険性等について、説明義務を尽くしておらず、被告Bの右勧誘行為は、大蔵省令及び生保協会の自主規制に反するものであって、私法上も違法といわざるを得ず、原告に対し、不法行為を構成する。
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大阪高裁平成8年12月5日判決・判時1605号57頁
 変額保険訴訟で保険会社および払込保険料を融資した銀行の責任が否定された事例
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 業者において、顧客の年齢、学歴、経歴、地位、商品認識等の属性に応じて、顧客に対し、当該金融商品の性格や基本的仕組み及びその商品が危険性を有する場合にはその危険性を理解し認識するのに必要な程度の説明がなされたか否かの観点から判断されるべきであり、顧客において、その性格や基本的仕組み及び危険性等について理解し認識していないこと、あるいは、これらを誤解していることを、業者において知っていたか、あるいは容易に知り得るような特段の事情のない限り、それ以上に詳細に右危険性等について説明する義務までは負わないというのが相当である。
 A(同人は、前記1(2)のとおり、変額保険販売員の資格を有していた。)は、Bに対し、変額保険は株式・債権で運用するものであるから、運用実績により、解約返戻金の額にも変動があり、場合によっては払込保険料よりも減ることがある等、前記1(3)のとおり変額保険の内容や仕組み及び危険性を説明し、Bに対し、控訴人アリコ発行のパンフレット(《証拠略》と同一のものと推認する。)を交付したこと、右パンフレットには同(4)のとおりの記載がされていたこと、Bは、同(1)のとおりの属性を有していること等の前記1認定事実に照らせば、Aは、Bに対し、Bの属性に応じて、変額保険の内容や基本的仕組み及び危険性を理解し認識するのに必要な程度の説明したものであり、かつ、Bにおいてもこれを理解し認識し得たと解するのが相当である。
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最高裁第二小法廷平成8年10月28日判決・金融法務1469号49頁
 変額保険の募集にあたり、保険外務員の説明義務違反および「断定的判断の提供」を認めた事例
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 一審被告A本人の原審供述中には、Bが、テレビ報道を鵜呑みにして、簡単に融資が受けられて高額の保険に入れるいい保険があると思い込み、変額保険の詳しい内容について質問がなかったので通り一遍の説明しかしなかった旨の部分も存するけれども、仮にBがそのような思い込みをし、変額保険の持つ投資リスク等について十分な認識を欠いていたのであればなおさらのこと、変額保険の持つ投資リスク、保険契約者の自己責任の原則について説明すべきであり、かかる場合にパンフレットの記載内容を概観しただけの通り一遍の説明をしただけでは、説明義務を果たしたとは到底いえない。
 一審被告生命の運用実績が九パーセントを下回ることがないことを強調した一審被告Aの行為は、前記の大蔵省通達の禁止する「将来の運用成績についての断定的判断の提供」にも該当するところ、右禁止の趣旨は保険契約者の利益保護にあると解されること、一審被告Aの右の運用実績に関する判断は、十分な根拠がなかったこと、一審原告が本件変額保険加入を決断するに当たり、一審被告Aの右の説明が重大な影響を及ぼしたこと(なお、Bは株式投資の経験はあったけれども、一審被告生命のようないわゆる機関投資家には一般の個人投資家とは別の株式運用方法があるものと思い、一審被告Aの右の説明を信用したことは前述した。)などに照らすと、一審被告Aの右の行為は、それ自体違法と評価されるべきである
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浦和地裁平成8年10月25日判決・判タ946号237頁
 七八歳の会社社長に変額保険の勧誘をした保険会社の営業所長に説明義務違反がないとされた事例
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 Aは、変額保険の特質とその投資リスクの存在を明記したパンフレット、設計書を交付し、それらに基づき、変額保険による保険料が特別勘定により株式中心で運用され、その運用実績により保険金額が増減するとの変額保険の特色について明確に説明したのであり、原告もそれによる投資リスクの存在を理解したからこそ、株価下落による心配を表明したものであって、これに対するAの応答も、株価の一般的傾向を自己の判断を交えて説明したものであり、株式で運用しても絶対に安全であると表明したものではないのである。そして、原告は、右勧誘を受けた当時、七八歳と高齢であったとはいえ、B社の代表者として毎日出社してその経営に当たっていたのであり、変額保険の危険性についての理解力が通常人よりも格別に劣っていたとみることもできない。してみれば、Aの右説明内容をもって、右3のとおりの説明義務に反したものということはできない。
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東京地裁平成8年9月27日判決・判タ924号193頁
 変額保険の勧誘に際して、当時の運用実績について誤つた情報を提供した点が説明義務違反を構成するとして、生命保険会社の責任を肯定し(過失相殺七割)、銀行の責任を否定した事例
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横浜地裁平成8年9月4日判決・判時1587号82頁
 変額保険契約の締結に要素の錯誤があったとされた事例
 変額保険の勧誘について保険会社、保険代理店及び銀行の共同不法行為責任が認められた事例(過失相殺二五ないし三〇%)
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 Aには、本件各変額保険の加入を勧誘するに当たって説明義務違反の違法があったものというべきであり、右説明義務違反について同人に過失のあることは明らかであるうえ、原告らは、被告横浜銀行行員らの後記違法な勧誘行為に加え、事実上の提携関係に基づくAの右違法な行為があったなればこそ、本件各変額保険の加入申込みも取り消さず、その各成約に至っているものであって、Aの右行為は民法七一九条一項の共同不法行為に該当し、被告代理社には民法七一五条に基づく使用者責任が、被告明治生命には募取法一一条に基づく損害賠償責任がそれぞれ認められ、両被告には原告らがAや政金らの違法な行為の結果被った後記損害を賠償すべき義務がある。
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東京地裁平成8年7月10日判決・判時1576号61頁
 賠償責任等が変額保険において肯定された例
 説明義務違反で生命保険会社の賠償責任を肯定し(過失相殺七割)、銀行、信用保証会社の責任を否定した事例
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 被告銀行については、前認定のとおり、本件融資契約は、被告保険会社から飛び込みで持ち込まれた話であり、被告銀行自らが主導的に変額保険の勧誘をしたり、Bないし原告の変額保険への加入の意思決定に積極的な役割を果たしたものとはいえない(この点、乙山は被告銀行のAの説明によりBが加入を決意したもののごとく供述するが、前記のとおり、Aが変額保険についてBに説明をした事実は認めることができない。)から、被告銀行は、本件融資契約についての具体的条件等について説明すれば足り、変額保険について及びこれを利用した相続税対策についての説明義務を負うものではないというべきである。また、これは、被告保証会社についても同様であり、被告銀行、被告保証会社には、B及び原告に対する説明義務違反はないものというべきである。
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富山地裁平成8年6月19日判決・判時1576号61頁
 賠償責任等が変額保険において肯定された例
 説明義務違反で生命保険会社、銀行の賠償責任を肯定した事例(過失相殺六割)
 変額保険の募集にあたり、銀行支店長については、募集行為を行なつたとして、また生命保険会社の営業職員については、自ら説明・募集・勧誘を行なわなかつたとして、いずれも保険募集の取締に関する法律違反を認定するとともに、不法行為の成立を認め、損害賠償請求を認容した事例
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 被告第一生命と被告北陸銀行は、原告に対する共同不法行為により、連帯して、不法行為により生じた損害を賠償する責任を負うが、この損害については、本件融資契約に基づく支払利息及び弁護士費用に限られると解するのが相当である。その理由は以下のとおりである。
 前記のとおり、原告は、被告らの前記不法行為により、本件各契約を締結し、本件融資契約に基づき被告北陸銀行から一九一〇万円を借り受け、本件保険契約の保険料の支払のために一九一〇万九七〇〇円を出捐し、被告北陸銀行に、本件融資契約の利息として合計四四六万四一三二円を支払う結果となつた。
 ところで、原告は、本件保険契約に関し、いまだ解約権を行使していない。また、既に判示したように、原告の主張する錯誤無効や契約解除の主張は認められない。その結果、本件保険契約は、現在でも有効に存続していることになる。
 したがつて、原告は、本件保険契約に基づく保険契約者の地位を依然有しており、これは前記保険料の対価であるから、保険料の支払をもつて損害と評価することはできないというべきである。確かに、保険契約者としての地位の中心をなす保険料給付請求権の内容(変動保険金)は現時点では減少しているが、これは、経済情勢の変化の結果であり、この減少は、本件不法行為によるものとはいえない。
 次に、本件融資契約に基づく利息について検討する。確かに、保険料支払のための金銭の調達は、本来保険加入者において行うべきものであり、この資金のために銀行融資を受けた場合でも、融資に伴う利息などの費用は、本来変額保険の締結から通常発生する損害にはあたらない。しかし、前記二で判示したとおり、本件においては、Aは、保険料を借入れることにより原告に本件保険契約による節税効果が発生すると説明しており、当初から銀行融資により保険料を調達することが、原告及びA、Bの間で前提とされていたものであるから、前記A及びBの違法行為と右利息支払との間には、相当因果関係があると解するのが相当である。本件における前記不法行為と相当因果関係にある損害としての弁護士費用は、金四〇万円をもつて相当と認められる。
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東京地裁平成8年3月26日判決・判時1576号61頁
 賠償責任等が変額保険において肯定された例
 説明義務違反で生命保険会社、税理士の賠償責任を肯定し(過失相殺八割)、銀行、信用保証会社の責任を否定した事例
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 本件においては、被告保険会社の投資効率が悪かつたために、本件保険契約を締結したことは、結果として所期の利益には結びつかなかつたのであるが、被告乙山及び被告保険会社の変額保険の勧誘上の不法行為の有無にかかわらず、右借入自体は、その当時の原告にとつて合理的な理由のある投資行動ないし相続税節約行動であつたものである。
 そのことを考えると、本件において原告が銀行から借り入れた利息及び借入のために要した費用は、原告の投資行動ないし相続税節約行動に伴う経費であり、被告乙山及び被告保険会社による本件保険契約締結の勧奨の際の不法行為と因果関係にある損害ということはできない。本件保険契約の解約後においても、原告は被告銀行からの借入れを完済することができず、今なお被告銀行に利息の支払を継続していることが認められる。そして、この利息も、本件保険契約の解約により清算しきれなかつたものであるから、解約前の利息と性質の異なる利息とはいえない。しかし、銀行の貸付行為が不法行為に当たるとして損害賠償を認める場合は格別、被告銀行の貸付行為は不法行為に当たるといえない以上、本件保険契約の解約の前後を通じ、これらの利息及び借入費用は、被告乙山及び被告保険会社による本件保険契約締結の勧奨の際の不法行為と因果関係のある損害ということはできないのである。
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東京地裁平成8年3月11日判決・判タ915号177頁
 変額保険の勧誘に際し説明義務違反があつたとする損害賠償請求が棄却された事例
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 特別勘定資産の金額は、その性質上、株価のように絶えず上下に変動するものであり、したがつて変額保険の運用実績も、それに伴い上下に変動するものであるから、変額保険の募集人のある時点における運用実績についての説明に客観的事実に反する点があつたからといつて、それが直ちに違法となるという性質のものではなく、右のような説明が違法となるか否かは、むしろ、将来における特別勘定資産の運用実績について相手方の的確な予測を妨げたか否かという観点から、換言すると、その時点における運用実績についての説明が、右運用実績に関するその他の説明とあいまつて、将来における運用実績についての相手方の的確な予測を妨げるような断定的判断の提供に当たるか否かという観点から、これを判断するのが相当である。
 そして、前認定の大蔵省通達や生保協会発行のテキストにおける禁止事項の内容、さらには、証券取引法五〇条一項一、二号の規定の趣旨等を参酌すると、募集人の右のような説明が特別勘定資産の将来の運用実績についての右の断定的な判断の提供に該当し、それによつて将来の運用実績の予測についての相手方の的確な判断を誤らせたものと認められる場合には、その提供の態様、判断内容の合理性、相手方の職業、経歴や株式等の有価証券取引についての知識経験の有無・程度などの事情いかんによつては、右断定的判断の提供行為が違法との評価を受けることがあり得るというべきである。
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東京地裁平成8年2月23日判決・判時1576号61頁
 変額保険において賠償責任等を肯定した事例
 説明義務違反で生命保険会社、保険外務員の損害賠償責任を肯定し(過失相殺五割)、税理士、税理士事務所事務員の責任を否定した事例
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 前認定のとおり、被告A及び同Bの説明義務違反の程度は著しいこと、被告Aは、原告らが健康診断の結果アリコジャパンの変額保険については謝絶となつたにもかかわらず、敢えて被告Bに原告らを紹介し、保険料の支払原資の借入れにも積極的に関与して原告らを被告ニコスの本件変額保険に加入させるなど、その勧誘の態様には悪質な面があること、被告Bも、もともと競争関係にあるはずの被告Aが敢えて被告Bに対し本件変額保険の加入希望者として、それも保険金額二億円もの高額の保険に加入を希望している者として原告らを紹介したということから、保険業界に身を置く被告Bとしては、当然、原告らにアリコジャパンの本件変額保険に加入することが困難な何らかの事情(通常は謝絶が予想されよう。)があることを推測したはずであるにもかかわらず、その点について、原告らにも何ら確認することなく(この点は、弁論の全趣旨から明らかである。)、変額保険の加入手続を進めており、その一連の対応には、説明義務違反の点以外にも生命保険募集人として非難されてもやむを得ない面があることなどを考慮すると、被告A及び同B側の過失の程度には重いものがあるといわなければならない。以上のほか、本件に現れた諸般の事情を総合考慮すると、原告らの過失割合は五割と認定するのが相当である。
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東京高裁平成8年1月30日判決・判時1580号111頁
 保険会社の外務員による変額保険への加入の勧誘について保険会社の外務員に説明義務違反があつたとして右外務員と保険会社の不法行為責任が認められた事例
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 変額保険についても証券取引法でいう適合性の原則がそのまま適用されるべきかどうかはともかくとして、一審原告は、本件不動産(前記の一審被告銀行による調査時点で六億円を超す価値があつた)を所有するものの、自宅の土地建物であり、生活に不可欠の資産であつて遊休資産ではなく、他に見るべき資産はなかつた上、所得は少なかつたから、本来変額保険が予定している投資リスクに耐えられる顧客層に属するかどうか疑問があつたこと、さらに、一審原告は、自己資金がないため、銀行から融資を受けて変額保険に加入しようというものであり、かつ、利息の支払いについても追加融資を受け、一審原告の死亡時までに発生する借受金全部を死亡保険金で一括して弁済できるとの前提で、本件変額保険加入を決断したものであり、一審被告Aはこの事実を知つていたのであるから、このような事実関係のもとにおいては、変額保険募集人たる一審被告Aにおいて、募集時に要請される一般的説明に加え、信義則上、少なくとも当時の金利水準、変額保険の運用実績に基づいて検討した場合、一審原告の右前提事実の判断に錯誤がないかどうか、その判断の基礎となる事実を説明すべき義務があつたものというべきであり、この理は、一審被告生命と同銀行との業務提携の有無によつて左右されるものではないというべきである。しかるに、一審被告Aは、右の点に関する説明をせず、かえつて、死亡保険金が相続税支払いの原資になる旨を述べるなどしたのであるから、この点からも説明義務に違反するものというべきである。
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大阪地裁平成6年7月6日判決・金融法務1397号48頁
 保険外務員の変額保険の勧誘に際しての説明について、不法行為に基づく損害賠償責任を肯定した事例
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 保険会社は法制度上特別の地位を与えられ、保険に関する知識・経験も豊富であり、契約者も自己に相応しい保険は何か等について保険会社ないし生命保険募集人の知識・経験を信頼してその助言を参考にするのが通常であるから、変額保険に関する右特質及び状況に鑑みると、保険会社はその勧誘にあたつては、信義則上、契約者が契約の結果、不測の損失を被ることがないよう十分に配慮すべき義務があるというべきである。
 具体的には、契約者の方から加入を積極的に求めてきた場合や契約者にあらかじめ十分な知識があることが明らかな場合は別として、保険会社の側から積極的に勧誘する場合には、契約者には従来の保険に関する程度の認識しかないことを念頭に、従来の保険との本質的ないし重要な相違点を十分に説明すべき義務がある。したがつて、これを欠いたことによつて契約が締結され、契約者が損失を被つたときは、不法行為が成立しうるというべきである。そして従来の保険との相違点としては、変動部分の保険金や解約払戻金が特別勘定の運用実績に連動しており、運用対象である株式等の相場変動の影響を受けるため、右解約払戻金等に相当幅のある変動が生じ、場合によつては元本割れする場合もありうることが理解できる程度の説明をしなければならない。
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(損害保険関係)
 
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旭川地裁昭和57年10月29日判決・交通民15巻5号1415頁
 貨物自動車につき、自家用として自動車保険(任意保険)契約を締結した者が、その後、右自動車を営業用に使用していたにもかかわらず、用途変更につき、通知、承認の請求をしない間に事故を起こした場合につき、保険会社は、自動車保険普通保険約款第四章一般条項四条二項により保険金の支払義務を負わないとした事例
 保険契約の締結に際し、自家用と営業用との限界について保険会社代理店に説明義務の不履行があつたとの主張を認めなかつた事例
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以上・平成12年11月18日掲載(但し、未完成後日部加筆訂正予定)
 
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札幌地裁平成2年3月29日判決・判タ730号224頁
 契約当事者が普通保険約款を誤解して損害保険契約を締結した場合において、普通保険約款どおりの契約の成立を認めた事例
 普通保険約款を適用する保険契約を締結する際に、契約当事者がその保険契約に適用される普通保険約款をたまたま誤解していて、その誤解に基づく内容の意思の合致があつたように見える場合(本件で言えば、商品の盗難被害にも保険金が支払われる旨の説明をしていた場合・・・)でも、そのような意思の合致と見えるものは、締結しようとする保険契約に適用される普通保険約款の内容が説明を受けたとおりのものであるならば、これを適用する保険契約を締結しようという保険契約締結の動機を形成したにすぎず、当該保険契約に適用される普通保険約款とは異なる特約をする合意であるとか普通保険約款自体を変更する合意であるとみることもできないというべきである。
 仮に、そのような意思の合致と見えるものに保険契約の内容を構成するような合意としての効力を認めるとすると、多数の加入者を前提としてその多数の加入者についての危険の分散を図ろうとする保険制度の団体性に反して一部の加入者に特別の有利な契約条件を認めることにもつながるから、結局右のような意思の合致と見えるものがあつても、それは、保険契約の内容になることはないと解すべきである。
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札幌地裁昭和54年3月30日判決・判時941号111頁
 遺族からの加害者に代位してする保険金の支払請求において、保険会社の若年運転者制限特約に基づく免責の主張を、右の特約についての合意がなかつたとして認めなかつた事例
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 この裁判例は、法律上の解釈問題を含むというものではなく、若年運転者制限特約についての合意の存否という事実認定上の問題である。
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大阪地裁昭和61年3月28日判決・判タ590号89頁
 被保険自動車を変更した場合、三〇日以内に被保険車両変更承認の裏書請求承認を得ない限り保険責任を負わない旨の約款が無効とされ、保険会社の免責を認めなかつた事例
 一般に自動車保険契約において、保険契約者は自己の所有する自動車に起因する損害をてん補するために契約するもので、約款の具体的内容を知らない場合が多いと考えられるところ、保険契約者が被保険自動車を廃車にし新たに被保険自動車と同一の用途及び車種の入れ替え自動車を新たに取得した場合において、その入れ替え自動車によって特段著しい危険の増加を伴わないときにも、保険契約者が入れ替え自動車の前記記載日から三〇日を過ぎて入れ替え自動車の上人裏書き請求手続きをとっても、車両入れ替え承認裏書き請求書を被告が受領したとき以降に入れ替え自動車によって生じた事故に起因する損害しか填補しないとする前記・・約款と特約条項・・は保険契約者にとって過酷に過ぎるといわなければならない。
 それ故、商法650条・656条・657条が、危険の著しい変更増加を要件として、損害保険契約の失効又は解除の効果を認めていることの立法趣旨の類推適用ないし信義則上、保険契約者が被保険自動車を廃車し(爾後従来の被保険自動車について対人・対物損害発生の余地がなくなる)新たに被保険自動車と同一の用途で同種の入れ替え自動車を取得し、その入れ替え自動車によって特段著しい危険の増加を伴わない場合には、前記特約条項・・記載の「記載日から三〇日以内」の制限は無効であり、右期間の経過後に自動車入れ替え証人裏書き請求書を被告が受領した後ときでも、記載日以後右請求書受領以前に入れ替え自動車によって生じた事故に起因する損害につても、右期間内に被告が右請求書を受領していたならば軽減できたと認められる部分を除き、被告は自動車保険契約上の損害てん補責任を負うと解するのが相当である。
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大阪高裁昭和62年10月30日判決・判時1278号139頁
 自家用自動車保険普通保険約款中の被保険自動車の入替における自動担保特約二条所定の被保険自動車の変更承認の裏書請求に付された期間制限の有効性を肯定した事例
 自動車保険契約における被保険自動車入替承認裏書請求がされた場合に入替承認上の自動車の異動日の記載を事故前の日に誤記した場合の効果を否定した事例
 
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中間省略・後日裁判例補充予定
 こんなんばっかし・スミマセン!!(m^-^m:;)
 
 
 
 
 
 
 
保険自由化と従前の裁判例・今後の裁判
 
 上記に記載した裁判例はすべて保険自由化以前の裁判例である。
 「保険の自由化」という規制緩和が、保険に関する裁判例の意味等に関係するのか、「無関係である」というのが一般的な理解であろうと推測される。
 保険自由化というような、規制緩和という事象が裁判例の意味等に関係するわけがないと・・!!
 しかし、私は大いに関係するし、保険自由化以前と以後では、同種事案についての判決も微妙に異なってくるものと推測している。
 
 上記保険自由化以前の裁判例を見てみると、東京高裁平成7年4月28日判決−−いわゆるドライバー保険の締結に当たり、保険代理店において同居の親族所有の自動車を借用運転中の事故が保険の対象とならない旨の特約を保険契約者に積極的に告知する義務はないとされた事例−−の判示「本件全証拠によっても、本件ドライバー保険と別個に被控訴人主張のような保険契約が成立したことを認めることはできないから・・・」と同種ないし類似の論法を用いて、保険約款と異なる保険契約の成立を全て否定しており、保険約款と異なる内容の保険契約の成立を肯定した裁判例は見あたらない。
 これは法理論的には、単なる事実認定の問題であり、当事者間にどのような合意があったのかという問題に過ぎないとも言える。
 しかし、このような事実認定の背景には、
1 保険約款はすべて主務官庁の認可を受けており、全保険会社に 共通である。
2 普通保険約款の機能からして、保険約款と異なる保険契約は全 保険会社を通じて存在しない。
というような現実の保険契約内容のありようが微妙に影響しているものと推測している。
 
 保険が自由化され、同種の保険契約においても、保険約款が保険会社ごとに異なることを許容する今後、上記のような裁判例が踏襲されるのであろうか。保険会社ごとに保険契約の内容を異にすることが一般的に肯定されてくると、契約者ごとに、その内容を異にする保険契約締結の合意が、事実認定として容認されてくるような気がしてならないのである。
 
 換言すれば、保険自由化以前の裁判例の事実認定は「統一された保険約款による保険内容」というドグマに影響を受けていたが、今後は、このようなドグマは存在し得ず、「保険約款と異なる保険契約の合意があった」との事実認定がなされてくるのではないか、ということである。
 
 直接は関連しないが、参照すべき最高裁の判例を、記載しておきます。
  最高裁昭和45年12月24日判決は「・・保険業者が、主務大臣の認可を受けないで普通保険約款を変更し、その約款に基づいて保険契約を締結しても、その変更が保険業者の恣意的な目的に出たものでなく、変更された条項が強行法規もしくは公序良俗に違反しまたはとくに不合理なものである場合でないかぎり、変更後の約款は、保険契約の内容を定めるものとして当事者を拘束する効力を有する。」と判示し、船舶海上保険に関してではあるが、主務官庁の認可なき普通保険約款の有効性を肯定した。
 
 
第二編 Risk Looking
一 Risk Looking
1 「リスクを管理する」という発想は不十分である。
 リスクはあらゆるところにある。「リスクを管理」することなど不可能である。社会の変化や法律の変動に伴い新たに発生してくるリスクを、その「誘発する原因」に目を向けることに全力を注ぐべきである。
 リスクを誘発する原因に目を向ければ、自ずとリスクを誘発する原因の除去に努めることとなる。、自ずとリスクの原因となり得るものの状態や状況の把握に努め、リスクを誘発する「原因の除去に努める」行動にでることとなる。
2 従来の「リスクマネイジメント」という表現によるリスク管理の発想に異論を唱えるものではない。
 しかし、従来の「リスクマネイジメント」という用法は、「リスクを誘発する原因」を「既定の、明確に示されたもの」として把握し、「これを管理する」というような発想に繋がるような気がする。
3 このような「リスクを誘発する原因を既定の、明確に示されたものとして把握し、これを管理する、というような発想」自体がリスキーなもののように思える。
 リスクの管理など不可能である。
 社会は変化し続けている。法律も激変していっている。このようなめまぐるしく動く社会生活環境の変化のなかで、日々、あらたに発生してくるリスクを誘発するものに注意を注ぐべきである。
 だからこそ、日々、リスクを誘発する原因の追及と探求に力を注ぐべきものなのである。
 
 
(注意−条文、判例は読みやすく加筆、訂正しています)
 
序文
 「最も法律に強い」と考えられている弁護士。その弁護士は、実際、「最も法律に弱い」とさえ言えるものである。法令の遵守が誰よりも要求される弁護士にとって、「法律は最大の驚異、リスク」なのである。弁護士以外の業種の方も、「法はリスクの一類型である」との視点で法律を捉えることにより、初めてコンブライアンス(法令遵守)の徹底を図ることができる。
 本書は、「法はリスクである」との視点から、人間行動の危機管理の思想を追求しょうとするものである。
 
 人間行動、企業行動における負の要素、マイナスの要素を、通常「リスク=危険性」と表現されてきた。
 従来は、このような負の要素は、偶発的要因により発生するものであるとして、正面から、この分析や把握をすることを避けがちであったものの、現在においては、人間行動、企業行動においても、これらの要因を偶発的要因と捉えるのではなく、企業行動等に内在する不可避なものであるとして、正面からこれを把握し、これの発生を可能な限り抑制、管理するのが常識となってきている。
 社会における各種保険制度の充実、企業会計における環境会計の採用等はこのような発想に基づくものとも言えるのみならず、ISO (International Organization for Standardizatio 国際標準化機構)の認定、認証を取得する企業行動もその一環と把握できるのかも知れない。
 リスクと正面から向き合わない人間行動、企業行動は、そのこと自体を理由として、社会から放逐される運命にある。
 
第一編 企業行動における危機管理
 
第一章 危機の要因、誘因
 
一 従業員の偶発的体調要因と事故
1 建設現場において作業に従事する人間の精神的、また肉体的体調は、常に万全とは限らない。むしろ、常になんらかの体調不調の要素を保有していると考えて差し支えない。
 事故は、このような従業員の体調不良が誘因となる場合がある。
2 最も頻発する可能性のある体調不良を誘因とする労災事故の類型である−「腰椎症」−を素材として考えてみる。
 
 このような、誰にでも、どこででも発症する可能性のある腰椎症を取り上げることにより、危機管理の視点や発想の整理を試みる。
 本書は腰椎症のみを取り上げるものではない。建設現場における危機管理のみを取り上げるものではない。これらの素材の検討を介して、企業行動における危機管理の思想を追求するものである。
 
イ いわゆるギックリ腰と言われる症状は、整形外科の知見では、腰椎症、椎間板ヘルニア等他種類の病名が付されている。
 これらの腰椎症等は、多くの場合、加齢に伴う椎間板の老化を誘因とし、一時的ないし過度の外力が作用した場合に発症するようである。そして、発症の原因となる外力は、必ずしも、通常生じないような強い又は異常な外力のみを原因とするものではなく、軽微な外力においても、その軽微な外力を受ける際の事故者の姿勢その他の要因と競合して発生し得る。
ロ このように考えてみると、建設現場において、腰椎症の発症を防止するというようなことは、完全には不可能であることがわかってくる。
ハ 使用者が、従業員の労働時間以外の私的な時間、私生活の内容にまで干渉することは認められておらず、従業員の体調管理は完全には不可能である。
 また、作業中における軽微な外力の作用とそれに不適切な姿勢その他の競合を防止することなど、およそ不可能とさえ言える。
ニ しかしながら、
  事故者の加齢に伴う椎間板の老化と
  事故者の前日来の生活状態の不良と
  事故者の不注意により、事故者に、いわゆるギックリ腰が発生した場合、使用者は安全配慮義務違反の責を免れることは不可能と言ってよい。
3 法律が使用者に要求する従業員に対する安全配慮義務は、上記のように実際上、使用者が管理、干渉できない要因が競合して発生した場合にも及ぶのである。
 このような法律!! まさにリスク以外のなにものでもない。  
4 このような検討を前提に、リスクの回避に努めなければならない。
  「管理、干渉ができない世界への管理、干渉に努める」のである。
  これこそが、建設現場における事故発生というリスクを回避する「極意の1」である。
 
 債務不履行=(民法415条)債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは債権者はその損害の賠償を請求することができる。債務者の責に帰すべき事由によって履行をできないこととなったときも同様である。
 
 安全配慮義務=(最高裁第三小法廷昭和59年4月10日判決)雇傭契約は、労働者の労務提供と使用者の報酬支払をその基本内容とする双務有償契約であるが、通常の場合、労働者は、使用者の指定した場所に配置され、使用者の供給する設備、器具等を用いて労務の提供を行うものであるから、使用者は、右の報酬支払義務にとどまらず、労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負つているものと解するのが相当である。
 
二 従業員自体が保有する危険への要因
1 「事故者の加齢に伴う椎間板の老化など」が誘因となって事故が発生し、その場合においても、安全配慮義務違反の責任を問われる、ということを意識する必要がある。
2 従業員には、年齢、男女差、知的能力、肉体的能力、肉体的疾患歴その他の差違がある。これらの従業員固有の多様な保有条件が事故発生の誘因となっても責任を負う、ということは、従業員の持つ、これらの多様な保有条件の把握と管理を要求されるということを意味する。
3 使用者は、同一対価である賃金を支払っていることを理由に、従業員に対し、同一条件での労働を要求できないことを意味するのである。画一的環境による就労を要求することにより、その従業員が保有する前記のような多様な条件、差違が誘因となって事故が発生した場合、当該従業員に対する労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務に違反したという法的評価を受け得るのである。
 「従業員の生命、身体を保護すべきである」という使用者に課せられた安全配慮義務の履行との関係においては、「法の下の平等」という命題は通用しないことを理解する必要がある。
 これこそが、建設現場における事故発生というリスクを回避する「極意の2」である。
 
三 従業員の乱れた日常生活態度が持つ危険への要因
1 昨日までは、なんらの問題もなく作業に従事してきたから、今日も大丈夫であろう。
この発想は、Risk Looking の観点から言えばダメなのです。
2 「昨日まで、問題がなかったから、今日も大丈夫である」などという発想が、どうして生まれるのでしょうか。このような発想は、多くの人が抱く発想かもしれません。しかし、多くの人と同じようなこのような発想で対処することは、リスクが現実のものになることを誘発するのです。
3 あなたは、昨日の仕事が終わるまでの当該従業員を知っていたとしても、今日の当該従業員を知らないはずです。ひょっとしたら、昨日、仕事が終わってから、今日の始業時まで、当該従業員は、夜のディスコで踊り狂っていたのかもしれません。
 昨日の彼は、今日の彼ではない!!
 これこそが、建設現場における事故発生というリスクを回避する「極意の3」である。
 
四 従業員の蓄積疲労が持つ危険への要因
1 今日、なんらの問題もなく作業に従事して帰宅したから、今日も大丈夫であろう。
この発想は、Risk Looking の観点から言えばダメなのです。
2 人間の疲労は蓄積し、それが過労死その他の事故にもつながるのです。
  「目先のリスクの存否」のみを考える発想や「リスクを管理する」という発想ではダメなのです。リスクを「誘発する原因」に目を向け、その原因となり得るものの状態や状況の把握に努め、リスクを誘発する「原因の除去に努める」必要があるのです。
 今日の無事は、本当か!!
 これこそが、建設現場における事故発生というリスクを回避する「極意の4」である。
 
五 従業員退職後の危険への要因
1 従業員が退職した場合、通常、使用者は当該従業員を起因するリスクは消失したと考えることが多い。
  この発想は、Risk Looking の観点から言えばダメなのです。
2 仮に、当該従業員が、就労中に腰椎症を発症していたとして、またその腰椎症が緩解していたとして、それが退職後に憎悪する場合があるのです。退職後の憎悪、発症であったとしても、就労中の業務が起因していたと認定される場合もあるのです。
3 従業員の退職時の状態の管理、把握をしておかなければならないのです。
また退職後に発症、憎悪する可能性があり得るのなら、退職時と退職後の当該従業員の新就労状況への関与を忘れてはならないのです。
 人は去っても、リスクは残る!!
 これこそが、建設現場における事故発生というリスクを回避する「極意の5」である。
 
六 緊張と弛緩の狭間の危険への要因
1 事故は、いつ起きるのか。
必ずしも弛緩の継続時でもなく、緊張の過度の継続時でもない。緊張と弛緩と、その絶妙のバランス喪失時に起きるのかもしれない。
2 この事故発生を防止する絶妙のバランスは、知識と経験と感と、そして補助により可能となる。
3 事故は本人のみで防げるものではない。
  全員が助け合って、事故を防ぐ!! その心!!
 これこそが、建設現場における事故発生というリスクを回避する「極意の6」である。
 
第二章 出退勤における危機管理
 
一 通常の出退勤における危機への要因
1 公共交通機関を利用した出勤退勤時における事故の発生は、企業で防止できるものではないかもしれない。
2 しかし、従業員が企業所有車両、マイカー、そしてマイバイク等を利用して出勤退勤する場合における事故は、防止しなければならない。その事故は、企業存続の危機を招くものである。
3 出退勤も仕事の一部!!
 これこそが、企業行動における危機管理の「留意事項の7」である。
 
二 特別の出退勤における危機への要因
1 通常の出勤ではなく、現場への直行、取引先への直行、出勤の形態にもいろいろある。
2 このような特別の指示ないし就労形態における出勤時の事故。それは出勤という名の就労状態である。
3 特別な指示の存在、それは従業員を支配下においたものと言える。
  特別指示は支配である!!
 これこそが、企業行動における危機管理の「留意事項の8」である。
 
第三章 建築士(設計・監理契約など)との関係における危機管理
 
一 建設業者自らが、企業内部に建築士などを従業員として持っていない場合には、外部の建築士らに建築物の設計などを依頼することとな。
1 設計には、建築物の構想プランとも称すべき「構想」、その構想を具体化した「基本設計」、そして実際に大工、工務店らが建設工事を行うための「実施設計」とに大別される。
2 この構想ないし基本設計段階において、小規模建設業者の場合、契約書の作成や締結ないしは設計料の合意がなされないことが多く、「なぁなぁ」で、ことが進行して設計料などをめぐるトラブルが発生する。「なぁなぁ」は、お互いに勝ってな期待と希望を抱かせるもの。その期待が裏切られ、その程度が許容範囲を超えると紛争が勃発する。
 なぁなぁは、トラブルを誘発する!!
 これこそが、企業行動における危機管理の「留意事項の9」である。
 
                                
 
 
 
第三編 保険関連判例