消費者金融業者の法定重利計算への反駁
 
              検討中
                  大阪弁護士会所属
                    弁護士 五 右 衛 門
 
一 利息制限法超過の約定利率と法定重利の主張
 
1 某MLにおいて、消費者金融貸金業者が法定重利の計算による残債権額の主張をし、膨大な債権金額を主張してきているとの報告があった。
 今、全国の弁護士らが消費者金融業者らの不当な金利要求に対し闘争をしているが、消費者金融業者らも。対弁護士対策等判例の研究をし、対策を講じてきているものが見られるようになってきた。
 
2 この利息制限法超過の約定利率と法定重利の主張も、このような対弁護士対策の一環かもしれない。
 
二 利息制限法超過の約定利率と法定重利計算の無効
 
1 利息制限法を超過する違法な約定利率に基づく利息金の元本組み入れという重利計算は、民法405条に違反する無効なものというべきである。
 民法405条は利息金組み入れについて3つの要件を要求している。
イ  その1は1年以上の遅滞
ロ そして、支払の催告
ハ 債務者が、支払催告に応じなかったこと
 法律が上記3つの要件を要求しているのは、債務者が債権者の正当な支払催告を無視したことによる、一種のペナルティという要素がある。
 このペナルティを課す正当性の根拠は、
イ 債権者の催告が法律上正当なものであり
ロ 債務者がこの支払催告に応じなかったことについて責があること
と考えれば
 仮に
イ 債権者の支払催告が、利息制限法超過の無効な利息金の支払を 催告したものであれば、これは正当な、というか、法定重利を正当化させる 前提としての保護すべき催告ではない。即ち、民法405条所定の催告に該当しないと解釈すべきである。
ロ 従って、上記要件の3が存在せず、従ってまた同4も存在せず、貸金業者の主張する「利息金の元本組み入れ」という重利の主張は不当ということとなる。
 
2 以上のとおり、利息制限法超過の利率の約定をしている貸金業者らは、法定重利の計算に基づく主張は効力がなく、許されないものというべきである。
 
二 法定重利計算の厳格解釈の根拠
 
1 民法405条が法定重利の規定をおいていることから法定重利計算それ自体を排斥することは困難である。
2 しかし、諸外国の立法例では「重利を禁止する」例が多いとしいうことである(金銭消費貸借と利息の制限・鎌野邦樹・393頁以下)。
 このように重利計算禁止の立法例の存在は、重利計算自体の不当性、不合理性を示すものとも言える。 
3 日本においては前記のとおり、これを認める規定が存在することから、その存在を否定することは困難であるが、その正当性の根拠が薄弱であることから、その重利計算を肯定するための要件は厳格に解釈すべきであり、前記のとおり、利息制限法を超過する約定利率に基づく利息金の支払催告を前提とする組み入れ計算は無効と解釈すべきである。
 
4 一部無効理論の排斥
 利息制限法超過利率の約定がなされた場合においても利息制限法上限利率の限度で、その効力を認めるという解釈がある。この場合、利息制限法超過の約定利率の部分のみを無効とすることにより利息制限法の趣旨を守ることができるという発想ないし前提があるように思われる。
 本件の場合、利息制限法超過の約定利率を前提とした支払い催告についても、利息制限法の上限利率の限度で、民法405条の催告の効力を認めるという見解もあるかもしれない。しかし、このような見解は不当である。
 金銭支払い催告について、通常一般の人に対し、「その一部は無効であるから利息制限法超過約定利率に基づく支払催告に応じなくてもいいが、利息制限法上限利率の限度においては、その支払催告の効力を認めるべきであり、その限度で支払に応じるべきである」というようなことを求めること自体不当であるからである。通常一般人に期待不可能なことを法律は求めるべきではないからである。
 従って、催告全部について、民法405条所定の催告には該当しないと解釈すべきである。 
 
三 最高裁昭和45年4月21日判決について
 
 
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