金利計算理論と実務の誤謬−その1
・・・「金利計算に2種類の計算構造があることに気づかないこと」
民法想定の
  標準的、消費貸借契約における
               利息金計算の方法
−−貸付日基準構造による利息金計算書−−
 
                       2005/4/8加筆訂正
 
               大阪弁護士会所属
                   弁護士 五 右 衛 門
 
一 期間計算の方法
 
1 民法の期間計算の方法は、原則として、起算日である初日不算入による暦年計算である。
2 他方、消費貸借契約における利息金計算は、最高裁の判例により、初日利息金算入であることから、消費貸借契約における利息金計算の場合は、原則として初日算入により期間計算を行うこととなる。
 
二 利息金計算の方法
 
1 年利と称される利息金計算の方法には大別して、五種類の方法がある。また、年利よる金利計算には、「計算単位構造による計算」と「貸付日基準構造による計算」の二種類の計算方法、計算構造がある。(「金利及び弁済金額計算に関する法律と実務・付録、元利計算くん」、「消費者金融金利計算の実務と返せ計算くん」参照)。
 
 利息金計算の種別・参照
    http://www.zunou.gr.jp/hattori/risoku.htm
  
2 この計算構造のうち、借入及び弁済を反復するような消費者金融のような場合(準消費貸借契約が介在すると考えられるような場合)には「計算単位構造」による計算が妥当するとして、そうではない民法が、標準的な態様として、想定していた、消費貸借契約における「貸付日基準構造による金利計算の方法」はどのようにすべきなのか。
 これは、計算単位構造による場合と貸付日基準構造による場合とで、計算利息金が異なる結果となる場合に問題となる。
 例えば、法務局が採用する正当な反復弁済計算方法である端数期間2月29日計算による場合などである(全期間暦年計算や年365日計算では問題とならない)。
 
3 当初貸付日を基準として期間計算を行い、その期間計算を用いて金利計算をしようとすれば、方法は二種類考えられる。
 
 具体的な計算方法としては、
 計算単位期間について、当初貸付日からの期間計算方法による使用分母(365日ないし366日)の種別と使用期間を算出して、右の種別毎に利息金計算を行い、これを合算するという方法(分類合算計算方法)と
 計算すべき対象期間の残元金額により、当初貸付日を基準として、計算すべき期間の終期を基準として利息金計算を行い、次いで、計算すべき期間の始期の前日までの利息金計算を行って、前者から後者を控除するという方法(控除計算方法)
とが考えられる。
 
 なぜなら、本来の民法が想定していたはずである消費貸借契約においては、当初の貸付により、発生する利息金は、その約定利息金利率により決定、固定されたはずであるからである。この貸付当初に決定、固定された利息金額を算出する方法は上記のような計算方法でのみ計算可能と考えられるからである。
 計算単位構造による計算方法を採用すれば、当初決定、固定された利息金額と異なる利息金額を算出する結果を招来するからである。
 この計算方法のうち、控除計算方法に基づく金利計算プログラム「弁済計算くん(控除計算方法)」を制作してみた。「当初貸付日からの期間」とともに、「弁済間隔期間」をも並列表示するようにした。
    http://www.zunou.gr.jp/hattori/kasi.htm
 
4 この計算方法によれば、計算単位である計算期間が同じ長さの期間であったとしても、計算される利息金額は微妙に異なる結果が生じることとなる。
 
5 これでいいのか。
 計算単位構造による計算、即ち「計算単位期間が同一なら、原則として、計算利息金額は同一である」という発想からすれば違和感が生じる。
 しかし、これでいいのだろう。
 
6 蛇足
  貸付日基準構造の「弁済計算くん(控除計算方法)」を制作してみると、面白い現象が見えてくる。
 それは、利息金計算における小数点以下の切り捨て処理による数値の齟齬である。「弁済計算くん」では当初貸付日からの期間表示もなされているため、切り捨て処理による数値の減の有無と切捨て累計金額がはっきりと見えてくる。
  そして、年数、日数計算のマジックが見えてくる。年数、日数計算にマジックなんてありはしないって? そう、、なの?、、????? 
 
三 利息金計算の弁護士実務
 
1 既に述べたように、借入と弁済を反復するような消費者金融のような場合には、「計算単位構造の計算」(上記「返せ計算くん」など)が妥当する。
 
2 その他の金融機関とのローン計算等においては、当該金融機関との契約に基づく、各計算がおこなわれている。
 
3 弁護士実務においては、上記1ないし2の場合が殆どであり、民法が想定するオーソドックスな態様の「貸付日基準構造による元利金計算ないし利息金計算」を行う必要がある場合は、あまりないのかもしれない。
 しかし、オーソドックスな態様の消費貸借残金請求訴訟のような場合には必要なケースがでてくるのかもしれない。
 
4 実務対応
 しかしながら、他方、オーソドックスな態様の消費貸借残金請求訴訟のような場合においても、残元金額などの主張には、主張責任論、弁論主義が適用されることから、現実に、このような利息金計算の結果というか、計算方法が訴訟上問題とされることは殆どないようにも思われる。
 弁論主義の適用上からも、また金額の誤差が大したものでもないことからも、訴訟上問題とされることは少ないものと思われる。
 
5 上記のように現実の実務で問題となることは殆どないとしても、上記のような理論的側面は理解しておく必要がある。
 
四 関連法律の立場など
 
 貸金業の規制等に関する法律施行規則別表
 貸金業の規制等に関する法律施行規則別表には貸金業者が掲示すべき貸付条件の計算方法の記載がある。
 この別表の記載を見ると貸金業法は計算単位構造を採用しているようである。その利息金計算の数式から見ると計算単位構造と理解できるからである。ただ、「この別表の記載は、利息金計算の方法の表示を要求しているものではない」という理解を前提とすれば、この別表の記載は計算単位構造に触れていないということになる。
 この施行規則制定担当者が、利息金計算に上記のような二種類の計算構造があることを理解したうえで立法に関与したか否かは不明であるる。