ザ・特集 ・1月14日(ニッポン放送ラジオ)   
飲酒運転を取り締まる、もうひとつの方法!ウィドマーク法とは? 
 ニッポン放送と文化放送では、今度の日曜日・1月20日まで共同企画『ストップ!飲酒運転キャンペーン』を行っています。そんな中、飲酒運転を取り締まるための新たな方法について阿部悦子レポーターが調べてきてくれました。
 
 まず、飲酒運転かどうかを調べる方法として一般的には、その場で息を風船に吹き込ませる事により、アルコール濃度を測定する、いわゆる「風船方式」が知られています。
 但し、この風船方式の場合、問題点があります。飲酒運転で事故を起こした後、現場から立ち去り、その間に水を飲んだりして、酔いを覚ましてから出頭した場合、その時点で体内のアルコール濃度を調べても、事故当時の数値とは違ってしまう事です。
 
 そこで新たに取り入れられたのが、ウィドマーク法です。ウィドマーク法とは、時間が経っても呼気中のアルコールの濃度が推定出来る、計算方法の事です。
飲酒量・アルコール摂取量、体重、経過時間などから特定の日時の体内アルコール濃度を推定するものです。
 
 このウィドマーク法は1920年頃、ウィドマークさんという、ドイツの法医学研究者が考え出したものです。発案から90年近く経って、日本でも飲酒運転に対する刑罰が
厳しくなったのを受けて、ウィドマーク法を使って立件するケースが出始めています。
例え大量のアルコールを摂取して飲酒運転をしても、時間が経ってしまえば、運転当時のアルコール濃度が分からなくなるため、「逃げれば刑が軽くなる」いわゆる「逃げ得」をする事が可能になってしまいます。その「逃げ得」を防ぐ意味でも、ウィドマーク法が有効だそうです。
 
 飲酒運転により3人の幼い命を奪った事件で先週、福岡地裁は危険運転致死傷罪の適用を見送る判決を下しましたが、被告は事故を起こした後、逃走して1リットルの水を飲んだ後に現場に戻ったそうです。事故を起こしてから40分が経過し、しかも大量の水を飲んでからの検査でしたので、結果は呼気1リットルあたりのアルコール濃度は、0.25ミリグラムで、酒気帯び運転との認定でした。これは、あくまでも推測ですが、もしウィドマーク法を使っていたら、もっと高い数値が出ていた可能性も考えられます。
 
 山口県で去年、男性が飲食店でお酒を飲んだ後、飲酒運転をし自転車に乗っていた女子高生に追突し、怪我を負わせて逃走しました。3日後にこの男性を発見し、当初は道路交通法と自動車運転過失傷害容疑で逮捕しました。その後、男性がお酒を飲んでいたと供述したため、ウィドマーク法を適用しました。
 
 何故、ウィドマーク法を使ったのか?
 去年、飲酒運転に関する罰則が強化された事もあって、機運が高まっている中で、絶対に隠蔽させない!という姿勢の中、下松署では信憑性を重視して、ウィドマーク法を使ったそうです。実際、3日前の体内アルコール濃度を推定したところ、体内アルコール濃度が酒気帯び運転の基準の、呼気1リットルあたり0.15ミリグラムを超えていると判明し、この男性を追起訴しました。ちなみにこの判決は今週・金曜日、18日に出るそうです。
 
この様に、お酒を飲んでも覚めてから出頭するケースが多い中、ウィドマーク法はかなり効果があるといえます。その反面、ウィドマーク法で起訴したものの、酒気帯び運転が無罪判決になったケースがあります。
(事例)
 2006年、友人とビールを飲み、その後トラックを運転していた大阪の男性が追突事故を起こし、5時間後に出頭しました。飲酒検知では、酒気帯び運転のアルコールの基準値を下回ったものの、検察はウィドマーク法を適用して酒気帯び運転で起訴しました。
 裁判では、男性の供述が争点となり、当初は飲酒量は知人と2人でビール5、6本だったのが、供述では7本に変わった事が不自然だと指摘されました。
 これが、ウィドマークと何故?関係するのかといいますと・・・
 ウィドマーク法は、飲酒量・アルコール摂取量、体重、経過時間などから特定の日時の体内アルコール濃度を推定するものですから、それぞれの数値が重要になります。このケースだと「本数増やす=量を増やすこと」で、酒気帯び運転の基準値を超えたという事になります。つまり当初の5、6本で計算すると、基準値を下回る事になります。それを7本にする事で、基準値を超える・・・本数のつりあげを迫った事が考えられるわけです。その結果、酒気帯びに関しては、無罪判決が下されました。
 
 実はこの時の裁判を担当したのが、最初にコメントを紹介した服部廣志弁護士で、服部弁護士はウィドマークの運用方法についてこのように話しています。
 医学の世界では、よく知られているウィドマーク法ですが、飲酒運転の罰則も厳しくなり、逃げ得をさせないためにも、今後はウィドマークを適用する動きが広がってくる可能性は十分にあります。 この動きが広がる事で、飲酒運転する側に「逃げれば、時間が経てば刑が軽くなる」という意識が無くなる事で、少しでも飲酒運転が減るのでは?と思います。