海と法律の仕組み
                  −海上衝突予防法−
                   海事補佐人・小型船舶操縦士 
                  BSACスポーツダイバー
                  アマチュア無線技師
                  弁護士 五 右 衛 門
 
 好きな海の法律について、趣味と復習を兼ねて、ボチボチ継続記載してい
くつもりです。
 
             海難事故その他海関連法適用例
               http://www.zunou.gr.jp/hattori/umi2.html
 
凡例
三法解説=海上交通三法の解説・改訂版、巻
幡竹夫・有山昭二共著・成山堂書店
予防法解説=海上衝突予防法の解説・改訂6版
、海上保安庁監修・海文堂
 
 
雑文0
 何故、お前がこんな法律解説するのかって
? う〜〜ん、海事関係の法律書は殆どが海の専門家により執筆されているようで、法律書としては、どうなのかなぁ、というように思うからです。法律実務家のひとりとして、法律解説として書いてみようとおもったんです。
 
 海の交通安全等を守る法律には
1 海上衝突予防法(すべての海域に適用されます)
2 海上交通安全法(東京湾、伊勢湾、瀬戸内海にのみ適用されます)
3 港則法(港湾に適用されます)
4 都道府県条例等(特定の河川での交通規制や港湾施設の利用規則など)の各種の法令があります。
 
 海は広いのに、何故そんな法律が必要? なんて言ってはいけません。太平洋の真ん中なら別として、例えば大阪湾に船をだして行ってごらんなさい。360度の方位から、包囲から、船がきます。四六時中、周囲を監視しなければ衝突の危険があるのです。海は広くて狭いのです。
 
雑文1
 先日、某海峡でクルージングをされていたご家族のうち子供が海に転落し、これを助けようと海の飛び込んだご両親が悲しい悲劇を迎えられたようです。
1 潮流の早い海で、船から離れること自体間違いです。
2 海に落ちた子供を、飛び込んで助けるという方法は危険です。マニュアルどおりの救助方法をとるべきでしょう。おぼれる子供は怪力でしがみついてきます。海の中では自由が利きません。
 
注意1
 海での事故は、人の生命を奪います。陸上の交通事故よりも危険といっていいでしょう。従って、陸上の交通違反の場合のように、軽微な違反の場合には「反則金を納付することにより、刑罰を受けなくなる」という反則金制度は採用されていません。
 どんな軽微な違反であっても、罰金、禁固、懲役刑という刑罰が待っています。
 それほど、海は危険なのです。自然を侮ることは、自分と他人の生命を奪うこととなります。
                              
海上衝突予防法
第1章 総  則 
(目的) 
第1条  この法律は、1972年の海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約に添付されている1972年の海上における衝突の予防のための国際規則の規定に準拠して、船舶の遵守すべき航法、表示すべき灯火及び形象物並びに行うべき信号に関し必要な事項を定めることにより、海上における船舶の衝突を予防し、もつて船舶交通の安全を図ることを目的とする。
 
 この規定の仕方からわかるでしょ。
 海上衝突予防法は、国際条約に基づき制定されているもので、その内容は万国共通となっているのです。海はひとつ、世界の海はひとつなのです。従って、世界の船舶が同じルールに従わないと、太平洋上で衝突事故が起きてしまいます。世界共通の海のルールがあるからこそ、世界の海の安全が保たれるのです。
 
(適用船舶) 
第2条  この法律は、海洋及びこれに接続する航洋船が航行することができる水域の水上にある次条第1項に規定する船舶について適用する。
 
 法律って、むずかしいですね。イヤですね。
 この法律は、「あるところ」にいる「ある船」に適用しますって、言っているんです。
 第一に「海洋及びこれに接続する航洋船が航行することができる水域」に・・・いることが適用の前提条件とされています。
  「ある船」が陸上にいても、適用しません。 
  「ある船」が琵琶湖にいても、適用しません。
  「ある船」が池にいても、適用しません。
 「航洋船」なんていう言葉、常用漢字にあるんでしょうかね。航海洋用船というような意味なんでしょうねぇ。要するに、海、海洋を航海するような船っていう意味ですね。
 それじゃ、「海洋」って何?って言われると、要するに、陸地に囲まれていない海、広い海っていう意味ですね。
 例え、海、海洋とつながっている大きな河川や運河であっても、海洋から入るのにゲート等の仕切があるようなところは含まれないってことになりますね。
 世界の船に適用するのが、この海上衝突予防法ですから、「世界の船が、船として、物理的に自由に航海できる場所」を指している、と理解して貰えばいいんでしょうね。
 第二に「水上」にある・・次条第1項に規定する船舶・・ことが適用条件
です。
 次の3条に該当する船に適用されます。潜水艦であろうと、水上飛行機であろうと適用されます。でも、潜水中の潜水艦や飛行中の水上飛行機には適用されません。何故って、水中や空中にいて、「水上」にいないでしょ。
 
 ハワイ沖で起きた米国海軍原子力潜水艦と日本水産高校の実習船の衝突事故。原子力潜水艦が浮上時におきています。水中から水上への浮上時については、この海上衝突予防法の全てが適用されないとしても、衝突防止のための安全確認義務や衝突防止のための回避義務等は準用され、適用されると考えるべきでしょう。海上自衛隊の潜水艦「そうりゅう」(広島県・呉基地所属)が大型貨物船と衝突した事故も同様でしょう。
 水中から水上への浮上時については、潜水艦に衝突防止のための安全確認義務や衝突防止のための回避義務等が課せられるということです。
 
 
定義) 
第3条  この法律において「船舶」とは、水上輸送の用に供する船舟類(水上航空機を含む。)をいう。
 
 海上衝突予防法が適用される各種の船舶を、以下、定義しています。
 陸上でも「老人、子供に注意!」っていう言葉があるでしょ。老人や子供は、その運動能力等から、自分の身の安全を守る能力に欠けている場合が多いので、注意してあげましょう、という意味ですね。
 以下に定義されている船舶も同種の発想なんです。船としての操縦性能、機動力の有無、程度等により分類されていると言ってもよいでしょう。「衝突の危険の回避措置」は、操縦性能、機動力を有している方の船に課するように衝突回避措置義務等が、後の条文等によりから定められているのです。
 2項3項で「ヨット等を含む帆船」であっても「エンジンによりスクリュウを回転させている場合」には、「動力船」となります。当然ですよね。風力のみに頼って動いていないわけで、風力と無関係に操縦可能なわけですから、風力のみに頼る帆船のような保護は不要であるからなのです。わかるでしょ。
 
 客船火災、海難審判へ 長崎理事所申し立て 進水後は「船舶」2003.03.26掲載
 三菱重工業長崎造船所(長崎市)で昨年十月に起きた建造中の豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」(一一三、〇〇〇トン、現在名サファイア・プリンセス)火災で、長崎地方海難審判理事所は二十六日、出火原因究明のため、長崎地方海難審判庁に審判開始を申し立てた。建造中の船舶火災について審判申し立てをするのは全国で初めて。
 同理事所は、就航前の建造中の船でも進水後は自力航行できるため、海難審判法で定める「船舶」に当たると判断した。
 
 
 
 2   この法律において「動力船」とは、機関を用いて推進する船舶(機関のほか帆を用いて推進する船舶であつて帆のみを用いて推進しているものを除く。)をいう。
 
 エンジン・スクリュー等の動力機関及び帆を持っていても、その動力機関を運転せず、帆のみで航行している船は、帆船となり、動力機関を運転している場合には、動力船となります。
 
 3   この法律において「帆船」とは、帆のみを用いて推進する船舶及び機関のほか帆を用いて推進する船舶であつて帆のみを用いて推進しているものをいう。
 
 従って、動力機関を持ってる船は、動力機関を運転している場合には−帆を併用しているか否かにかかわらず−動力船となるのです。
 
 それじゃあ、動力機関と帆を併有している船が、停止中は、動力船なんですか、帆船なんですか? 
 
??う〜ん 
停船って言うんです?? この法律は「推進中の船」ないしは「当該船舶の船としての機能を活用している船?」に対する規制法なんです??
 
 4   この法律において「漁ろうに従事している船舶」とは、船舶の操縦性能を制限する網、なわその他の漁具を用いて漁ろうをしている船舶(操縦性能制限船に該当するものを除く。)をいう。
 
 この意味はわかるでしょ。
 「漁をしている最中の漁船」って、言う意味ですね。
 漁船であっても、漁場への往復中のものは該当しませんよね。当然ですよね。特別の保護は不要だもん。
 なになに?早く、港にかえらなきゃ、獲物が腐るって?? そんなん、自分でなんとか、してよ!
??
 三法解説・4頁に「船舶の操縦性能を制限しない漁具を用いて漁ろうしている船舶、例えば引きなわ漁船、一本釣りしている漁船などは除く」と記載してあります。
 前記の条項の記載の仕方からすれば、右三法解説の記載は正しいとも考えられますが、現実に「操縦性能の制限を受けているか否か」で「漁ろう中の船舶に該当するか否か」を判断すべきではないと考えられます。何故なら、第1に、本件規定は後記のとおり、海上衝突を予防するための船舶の優先順位を規定することとなりますから、「外形的に判断可能でなければ、海上の船舶は、その優先順位を判断することが不可能」となり、海上交通のルールとなり得ないからです。第2に、操縦性能の制限を受けるか否かは、当該漁船が使用している漁具と当該船舶の動力の馬力との相関関係により決定され、これは外部から判断困難であると考えられるからです。
 従って、本件「漁労中漁船」に該当するか否かは、「一般的に操縦性能制限をする漁具を用いて漁労中の船舶」と解すべきであり、「具体的に操縦性能制限を受けているか否かは問わない」と考えるべきではないでしょうか。
 
 
 5   この法律において「水上航空機」とは、水上を移動することができる航空機をいう。
 
 この意味はわかるでしょ。わからなければ、わかるまで、どこかの港を放浪してきてください。
  
 6   この法律において「運転不自由船」とは、船舶の操縦性能を制限する故障その他の異常な事態が生じているため他の船舶の進路を避けることかできない船舶をいう。
  
 ここから説明します「運転不自由船」、「操縦性能制限船」そして「喫水制限船」は、いずれも特別な理由により、操縦性能ないし機動力が制限されており、その場所から移動せよ、と言われても簡単に移動はできません。
 このように特別な理由により操縦性能が制限されている船に、優先権を与え、他の動力船、帆船、漁労船などはこれらの船を優先させてあげなければならないのです。
 
 7   この法律において「操縦性能制限船」とは、次に掲げる作業その他の船舶の操縦性能を制限する作業に従事しているため他の船舶の進路を避けることができない船舶をいう。
 
航路標識、海底電線又は海底パイプラインの敷設、保守又は引掲げ
しゆんせつ、測量その他の水中作業
航行中における補給、人の移乗又は貨物の積替え
航空機の発着作業
掃海作業
船舶及びその船舶に引かれている船舶その他の物件がその進路から離れることを著しく制限するえい航作業
 
 上記の言葉で理解できない言葉ありますか。
 もし、あるっていうのなら、いつも、ご自分の机の上に国語辞典か広辞苑か百科事典を置いておいて、理解できない都度、調べてください。
 私は、昔は、送りがな辞典、いつも机の上に置いていました。
 要するに、「作業中の船で、自由に動けない船」っていうことですよね。優先権あげなければ・・・・わかるでしょ。
 運転不自由船は、船自体の故障その他の異常な事態を原因として「自由に動けない船」のことですが、
 操縦性能制限船は、船自体の故障その他の異常な事態を原因とせず、「作業等の外部的な原因」により「自由に動けない船」のことを言うのです。
 船内部の問題か、船外部の問題かっていう分類で、理解してもらえればと思います。
 
 船を操船できる唯一の船長が急病で倒れた場合は、どちらでしょう?
 運転不自由船になるんでしょうね。
 
 8   この法律において「喫水制限船」とは、船舶の喫水と水深との関係によりその進路から離れることか著しく制限されている動力船をいう。
 
 これもわかるでしょ。何!!わからないって???
 大きな船は、浅い所に行けば座礁するでしょ。
 ある方向に動けば、座礁しますって、いう船ですよ。
 どこの港も、航路はしゅんせつしているから、深いんですが、航路以外は浅い場合があるので、大きな船は座礁する危険があるのです。わかるでしょ!!
 航路って? う〜ん 港に、よくあるでしょ。赤と青の浮標(ブイ)が。この赤と青の浮標に挟まれたところが航路なんです。
 
雑文2
 この航路を示す浮標は、一基、数千万円もするって言う話し聞きました。高いんですよね。この高価な浮標をレジャークルーザ−が、衝突か接触等で、よく壊すようですね。そのまま、あて逃げが多いというように聞いています。浮標を目印にして、遊んでいるんでしょうかね?大切な海の標識であり、人命に関係するものだから、大切にして欲しいですね。
 
愚問1
 航路は深く、航路でないところは、浅いですよね。この航路と航路でないところの区切りというか、航路の端というか、ここでよくとれる魚はなんでしょうか??
 
 答え−−太刀魚でした。
     太刀魚のキラキラした表面の部分は化粧品に使われているって!!
 
 9   この法律において「航行中」とは、船舶がびよう泊(係船浮標又はびよう泊をしている船舶にする係留を含む。以下同じ。)をし、陸岸に係留をし、又は乗り揚げていない状態をいう。
 
 びょう(錨)泊って、わかるでしよ。いかり(錨)を海底に引っかけ、停船している状態を言うんですよね。自分の船をびょう泊させず、びょう泊している船にロープ等で繋いでいる場合も含むっていうことですね。船を繋ぐ浮標に繋いでいる場合も含む。
 要するに、直接、陸岸に繋いでいる場合、繋がなくとも陸岸に乗り上げている場合のみならず、他の船や浮標を介して、陸岸等に繋がっている場合も含むっていうことですね。
 
雑文3
 いかりは、ロープで繋ぎますよね。「いかり結び」なんて結び方で。
 このいかり結びした場合でも、新品の錨を使用する場合には注意が必要なんです。船上で、錨結びするでしょ。これで大丈夫って思って海中に投錨すると、新品の錨が海底の底に落ちちゃうことがあるんです。悲しい・・!!
 一旦錨結びで結んだ後、海水につけてロープに海水をしみ込ませて結び目を締め付けておく必要があるんです。そうでないと、水分を含まない新品のロープで投錨すると結び目がほどけて錨は海底の底ってことにもなりかねないんです。
 昔、友人が私の目の前で、失敗していました。
 
 10   この法律において「長さ」とは、船舶の全長をいう。
  
 11   この法律において「互いに他の船舶の視野の内にある」とは、船舶が互いに視覚によつて他の船舶を見ることができる状態にあることをいう。
  
 12   この法律において「視界制限状態」とは、霧、もや、降雪、暴風雨、砂あらしその他これらに類する事由により視界が制限されている状態をいう。
 
第2章 航  法 
 
第1節  あらゆる視界の状態における船舶の航法 (第4条〜第10条)
第2節  互いに他の船舶の視野の内にある船舶の航法 (第11条〜第18条)
第3節  視界制限状態における船舶の航法 (第19条)
第2章 航  法
 第1節 あらゆる視界の状態における船舶の航法 
 
(適用船舶) 
第4条  この節の規定は、あらゆる視界の状態における船舶について適用する。
  
(見張り) 
第5条  船舶は、周囲の状況及び他の船舶との衝突のおそれについて十分に判断することができるように、視覚、聴覚及びその時の状況に適した他のすべての手段により、常時適切な見張りをしなければならない。
  
(安全な速力) 
第6条  船舶は、他の船舶との衝突を避けるための適切かつ有効な動作
をとること又はその時の状況に適した距離で停止することができるように
、常時安全な速力で航行しなければならない。この場合において、その
速力の決定に当たつては、特に次に掲げる事項(レーダーを使用してい
ない船舶にあつては、第1号から第6号までに掲げる事項)を考慮しな
ければならない。
 
視界の状態
 
船舶交通のふくそうの状況
 
自船の停止距離、旋回性能その他の操縦性能
 
夜間における陸岸の灯火、自船の灯火の反射等による灯光の存在
 
風、海面及び海潮流の状態並びに航路障害物に接近した状態
 
自船の喫水と水深との関係
 
自船のレーダーの特性、性能及び探知能力の限界
 
使用しているレーダーレンジによる制約
 
海象、気象その他の干渉原因がレーダーによる探知に与える影響
 
適切なレーダーレンジでレーダーを使用する場合においても小型船舶及び氷塊その他の漂流
 
物を探知することができないときがあること。
 
レーダーにより探知した船舶の数、位置及び動向
 
自船と附近にある船舶その他の物件との距離をレーダーで測定することにより視界の状態を
正確に把握することができる場合かあること。
 
(衝突のおそれ) 
第7条  船舶は、他の船舶と衝突するおそれがあるかどうかを判断するため、その時の状
況に適したすべての手段を用いなければならない。
  
 2   レーダーを使用している船舶は、他の船舶と衝突するおそれがあることを早期に
知るための長距離レーダーレンジによる走査、探知した物件のレーダープロッティングその
他の系統的な観察等を行うことにより、当該レーダーを適切に用いなければならない。
  
 3   船舶は、不十分なレーダー情報その他の不十分な情報に基づいて他の船舶と衝突
するおそれがあるかどうかを判断してはならない。
  
 4   船舶は、接近してくる他の船舶のコンパス方位に明確な変化が認められない場合
は、これと衝突するおそれがあると判断しなければならず、また、接近してくる他の船舶
のコンパス方位に明確な変化が認められる場合においても、大型船舶若しくはえい航作業
に従事している船舶に接近し、又は近距離で他の船舶に接近するときは、これと衝突する
おそれがあり得ることを考慮しなければならない。
  
 5   船舶は、他の船舶と範突するおそれがあるかどうかを確かめることができない場
合は、これと衝突するおそれがあると判断しなければならない。
  
(衝突を避けるための動作) 
第8条  船舶は、他の船舶との衝突を避けるための動作をとる場合は、できる限り、十分
に余裕のある時期に、船舶の運用上の適切な慣行に従つてためらわずにその動作をとらな
ければならない。
  
 2   船舶は、他の船舶との衝突を避けるための針路又は速力の変更を行う場合は、で
きる限り、その変更を他の船舶が容易に認めることができるように大幅に行わなければな
らない。
  
 3   船舶は、広い水域において針路の変更を行う場合においては、それにより新たに
他の船舶に著しく接近することとならず、かつ、それが適切な時期に大幅に行われる限り、
針路のみの変更が他の船舶に著しく接近することを避けるための最も有効な動作となる場
合かあることを考慮しなければならない。
  
 4   船舶は、他の船舶との衝突を避けるための動作をとる場合は、他の船舶との間に
安全な距離を保つて通過することができるようにその動作をとらなければならない。この
場合において、船舶は、その動作の効果を当該他の船舶が通過して十分に遠ざかるまで慎
重に確かめなければならない。
  
 5   船舶は、周囲の状況を判断するため、又は他の船舶との衝突を避けるために必要
な場合は、速力を減じ、又は機関の運転を止め、若しくは機関を後進にかけることにより
停止しなければならない。
  
(狭い水道等) 
第9条  狭い水道又は航路筋(以下「狭い水道等」という。)をこれに沿つて航行する船
舶は、安全であり、かつ、実行に適する限り、狭い水道等の右側端に寄つて航行しなけれ
ばならない。ただし、次条第2項の規定の適用がある場合は、この限りでない。
  
 2   航行中の動力船(漁ろうに従事している船舶を除く。次条第6項及び第18条第1
項において同じ。)は、狭い水道等において帆船の進路を避けなければならない。ただし、
この規定は、帆船が狭い水道等の内側でなければ安全に航行することができない動力船の
通航を妨げることができることとするものではない。
  
 3   航行中の船舶(漁ろうに従事している船舶を除く。次条第7項において同じ。)
は、狭い水道等において漁ろうに従事している船舶の進路を避けなければならない。ただ
し、この規定は、漁ろうに従事している船舶が狭い水道等の内側を航行している他の船舶
の通航を妨げることができることとするものではない。
  
 4   第13条第2項又は第3項の規定による追越し船は、狭い水道等において、追い越
される船舶が自船を安全に通過させるための動作をとらなければこれを追い越すことがで
きない場合は、汽笛信号を行うことにより追越しの意図を示さなければならない。この場
合において、当該追い越される船舶は、その意図に同意したときは、汽笛信号を行うこと
によりそれを示し、かつ、当該追越し船を安全に通過させるための動作をとらなければな
らない。
  
 5   船舶は、狭い水道等の内側でなければ安全に航行することができない他の船舶の
通航を妨げることとなる場合は、当該狭い水道等を横切つてはならない。
  
 6   長さ20メートル未満の動力船は、狭い水道等の内側でなければ安全に航行するこ
とができない他の動力船の通航を妨げてはならない。
  
 7   第2項から前項までの規定は、第4条の規定にかかわらず、互いに他の船舶の視
野の内にある船舶について適用する。
  
 8   船舶は、障害物があるため他の船舶を見ることができない狭い水道等のわん曲部
その他の水域に接近する場合は、十分に注意して航行しなければならない。
  
 9   船舶は、狭い水道においては、やむを得ない場合を除き、びよう泊をしてはなら
ない。
  
(分離通航方式) 
第10条  この条の規定は、1972年の海上における衝突の予防のための国際規則に関する条
約(以下「条約」という」に添付されている1972年の海上における衝突の予防のための国際
規則(以下「国際規則」という。)第1条(d)の規定により国際海事機関が採択した分離通
航方式について適用する。
  
 2   船舶は、分離通航帯を航行する場合は、この法律の他の規定に定めるもののほか
次の各号に定めるところにより、航行しなければならない。
 
通航路をこれについて定められた船舶の進行方向に航行すること。
 
分離線又は分離帯からできる限り離れて航行すること。
 
できる限り通航路の出入口から出入すること。ただし、通航路の側方から出入する場合は、
その通航路について定められた船舶の進行方向に対しできる限り小さい角度で出入しなけれ
ばならない。
 
 3   船舶は、通航路を横断してはならない。ただし、やむを得ない場合において、そ
の通航路について定められた船舶の進行方向に対しできる限り直角に近い角度で横断すると
きは、この限りでない。
  
 4   船舶(動力船であつて長さ20メートル未満のもの及び帆船を除く。)は、沿岸通
航帯に隣接した分離通航帯の通航路を安全に通過することができる場合は、やむを得ない場
合を除き、沿岸通航帯を航行してはならない。
  
 5   通航路を横断し、又は通航路に出入する船舶以外の船舶は、次に掲げる場合その
他やむを得ない場合を除き、分離帯に入り、又は分離線を横切つてはならない。
 
切追した危険を避ける場合
 
分離帯において漁ろうに従事する場合
 
 6   航行中の動力船は、通航路において帆船の進路を避けなければならない。ただし、
この規定は、帆船が通航路をこれに沿つて航行している動力船の安全な通航を妨げることが
できることとするものではない。
  
 7   航行中の船舶は、通航路において漁ろうに従事している船舶の進路を避けなけれ
ばならない。ただし、この規定は、漁ろうに従事している船舶が通航路をこれに沿つて航
行している他の船舶の通航を妨げることができることとするものではない。
  
 8   長さ20メートル未満の動力船は、通航路をこれに沿つて航行している他の動力船
の安全な通航を妨げてはならない。
  
 9   前3項の規定は、第4条の規定にかかわらず、互いに他の船舶の視野の内にある
船舶について適用する。
  
 10   船舶は、分離通航帯の出入口付近においては、十分に注意して航行しなければな
らない。
  
 11   船舶は、分離通航帯及びその出入口付近においては、やむを得ない場合を除き、
びよう泊をしてはならない。
  
 12   分離通航帯を航行しない船舶は、できる限り分離通航帯から離れて航行しなけれ
ばならない。
  
 13   第2項、第3項、第5項及び第11項の規定は、操縦性能制限船であつて、分離通
航帯において船舶の航行の安全を確保するための作業又は海底電線の敷設、保守若しくは引
掲げのための作業に従事しているものについては、当該作業を行うために必要な限度におい
て適用しない。
  
 14   海上保安庁長官は、第1項に規定する分離通航方式の名称、その分離通航方式に
ついて定められた分離通航帯、通航路、分離線、分離帯及び沿岸通航帯の位置その他分離
通航方式に関し必要な事項を告示しなければならない。
  
 
第2章 航  法
 第2節 互いに他の船舶の視野の内にある船舶の航法 
 
(適用船舶) 
第11条  この節の規定は、互いに他の船舶の視野の内にある船舶について適用する。
  
(帆船) 
第12条  2隻の帆船が互いに接近し、衝突するおそれがある場合における帆船の航法は、
次の各号に定めるところによる。ただし、第9条第3項、第10条第7項又は第18条第2項若
しくは第3項の規定の適用がある場合は、この限りでない。
 
2隻の帆船の風を受けるげんが異なる場合は、左げんに風を受ける帆船は、右げんに風を受
ける帆船の進路を避けなければならない。
 
2隻の帆船の風を受けるげんが同じである場合は、風上の帆船は、風下の帆船の進路を避け
なければならない。
 
左げんに風を受ける帆船は、風上に他の帆船を見る場合において、当該他の帆船の風を受け
るげんが左げんであるか右げんであるかを確かめることができないときは、当該他の帆船の
進路を避けなければならない。
 
 2   前項第2号及び第3号の規定の適用については、風上は、メインスル(横帆船に
あつては、最大の縦帆)の張つている側の反対側とする。
  
(追越し船) 
第13条  追越し船は、この法律の他の規定にかかわらず、追い越される船舶を確実に追い
越し、かつ、その船舶から十分に遠ざかるまでその船舶の進路を避けなければならない。
  
 2   船舶の正横後22度30分を超える後方の位置(夜間にあつては、その船舶の第21条
第2項に規定するげん灯のいずれをも見ることかできない位置)からその船舶を追い越す船
舶は、追越し船とする。
  
 3   船舶は、自船が追越し船であるかどうかを確かめることができない場合は、追越
し船であると判断しなければならない。
  
(行会い船) 
第14条  2隻の動力船が真向かい又はほとんど真向かいに行き会う場合において衝突する
おそれがあるときは、各動力船は、互いに他の動力船の左げん側を通過することができるよ
うにそれぞれ針路を右に転じなければならない。ただし、第9条第3項、第10条第7項又は
第18条第1項若しくは第3項の規定の適用がある場合は、この限りでない。
  
 2   動力船は、他の動力船を船首方向又はほとんど船首方向に見る場合において、夜
間にあつては当該他の動力船の第23条第1項第1号の規定によるマスト灯2個を垂直線上若
しくはほとんど垂直線上に見るとき、又は両側の同項第2号の規定によるげん灯を見るとき
、昼間にあつては当該他の動力船をこれに相当する状態に見るときは、自船が前項に規定す
る状況にあると判断しなければならない。
  
 3   動力船は、自船が第1項に規定する状況にあるかどうかを確かめることができない
場合は、その状況にあると判断しなければならない。
  
(横切り船) 
第15条  2隻の動力船が互いに進路を横切る場合において衝突するおそれがあるときは、他の動力船を右げん側に見る動力船は、当該他の動力船の進路を避けなければならない。この場合において、他の動力船の進路を避けなければならない動力船は、やむを得ない場合を除き、当該他の動力船の船首方向を横切つてはならない。
2   前条第1項ただし書の規定は、前項に規定する2隻の動力船が互いに進路を横切る
場合について準用する。
 
 この規定は海における衝突回避の原則的な定めです。
 要するに、相手船の右げん側に位置する船舶に衝突回避義務を負わせているのです。
 2008年2月19日に千葉県・野島崎で自衛隊のイージス護衛艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故。
 この場合、イージス護衛艦に衝突回避義務があったことは明らかであり、衝突現場のような場所においては手動操舵をするのが海の常識であるにもかかわらず、自動操舵をしていたというのですから、イージス護衛艦の操船に基本的な問題があったことは明らかです。
 イージス護衛艦に、「そこのけ、そこのけ、お馬がとおる」といった大型船舶特有の海の航法無視の態度があったことは明らかでしょう。
 「船舶が多い海域に入れば、自動操舵は適切ではない。十分に安全航行できる海域以外では手動にすべきだ」(岡崎総合研究所理事の金田秀昭氏)と言われており、また、「シーマンの常識からは、手動にするのが普通」(海上幕僚監部の河野克俊防衛部長)というより、常識なのです。
 
 
  
(避航船) 
第16条  この法律の規定により他の船舶の進路を避けなければならない船舶(次条において
「避航船」という。)は、当該他の船舶から十分に遠ざかるため、できる限り早期に、かつ、
大幅に動作をとらなければならない。
  
(保持船) 
第17条  この法律の規定により2隻の船舶のうち1隻の船舶が他の船舶の進路を避けなけれ
ばならない場合は、当該他の船舶は、その針路及び速力を保たなければならない。
  
 2   前項の規定により針路及び速力を保たなければならない船舶(以下この条において
「保持船」という。)は、避航船がこの法律の規定に基づく適切な動作をとつていないことが
明らかになつた場合は、同項の規定にかかわらず、直ちに避航船との衝突を避けるための動作
をとることかできる。この場合において、これらの船舶について第15条第1項の規定の適用が
あるときは、保持船は、やむを得ない場合を除き、針路を左に転じてはならない。
  
 3   保持船は、避航船と間近に接近したため、当該避航船の動作のみでは避航船との衝突
を避けることができないと認める場合は、第1項の規定にかかわらず、衝突を避けるための最
善の協力動作をとらなければならない。
  
(各種船舶間の航法) 
第18条  第9条第2項及び第3項並びに第10条第6項及び第7項に定めるもののほか、航行中
の動力船は、次に掲げる船舶の進路を避けなければならない。
 
運転不自由船
 
操縦性能制限船
 
漁ろうに従事している船舶
 
帆船
 
 2   第9条第3項及び第10条第7項に定めるもののほか、航行中の帆船(漁ろうに従事し
ている船舶を除く。)は、次に掲げる船舶の進路を避けなければならない。
 
運転不自由船
 
操縦性能制限船
 
漁ろうに従事している船舶
 
 3   航行中の漁ろうに従事している船舶は、できる限り、次に掲げる船舶の進路を避けな
ければならない。
 
運転不自由船
 
操縦性能制限船
 
 4   船舶(運転不自由船及び操縦性能制限船を除く。)は、やむを得ない場合を除き、第28
条の規定による灯火又は形象物を表示している喫水制限船の安全な通航を妨げてはならない。
  
 5   喫水制限船は、十分にその特殊な状態を考慮し、かつ、十分に注意して航行しなければ
ならない。
  
 6   水上航空機は、できる限り、すべての船舶から十分に遠ざかり、かつ、これらの船舶の
通航を妨げないようにしなければならない。
  
 
第2章 航  法
 第3節 視界制限状態における船舶の航法 
 
第19条  この条の規定は、視界制限状態にある水域又はその付近を航行している船舶(互いに他
の船舶の視野の内にあるものを除く。)について適用する。
  
 2   動力船は、視界制限状態においては、機関を直ちに操作することかできるようにしてお
かなければならない。
  
 3   船舶は、第1節の規定による措置を講ずる場合は、その時の状況及び視界制限状態を十
分に考慮しなければならない。
  
 4   他の船舶の存在をレーダーのみにより探知した船舶は、当該他の船舶に著しく接近する
こととなるかどうか又は当該他の船舶と衝突するおそれがあるかどうかを判断しなければならず、
また、他の船舶に著しく接近することとなり、又は他の船舶と衝突するおそれがあると判断した場
合は、十分に余裕のある時期にこれらの事態を避けるための動作をとらなければならない。
  
 5   前項の規定による動作をとる船舶は、やむを得ない場合を除き、次に掲げる針路の変更
を行つてはならない。
 
他の船舶が自船の正横より前方にある場合(当該他の船舶が自船に追い越される船舶である場合を
除く。)において、針路を左に転じること。
 
自船の正横又は正横より後方にある他の船舶の方向に針路を転じること。
 
 6   船舶は、他の船舶と衝突するおそれがないと判断した場合を除き、他の船舶が行う第35
条の規定による音響による信号を自船の正横より前方に聞いた場合又は自船の正解より前方にある
他の船舶と著しく接近することを避けることができない場合は、その速力を針路を保つことができ
る最小限度の速力に減じなければならず、また、必要に応じて停止しなければならない。この場合
において、船舶は、衝突の危険がなくなるまでは、十分に注意して航行しなければならない。
  
 
第3章 灯火及び形象物 前・最初・次
 
(通則) 
第20条  船舶(船舶に引かれている船舶以外の物件を含む。以下この条において同じ。)は、この
法律に定める灯火(以下この項及び次項において「法定灯火」という。)を日没から日出までの間
表示しなければならず、また、この間は、次の各号のいずれにも該当する灯火を除き、法定灯火以
外の灯火を表示してはならない。
 
法定灯火と誤認されることのない灯火であること。
 
法定灯火の視認又はその特性の識別を妨げることとならない灯火であること。
 
見張りを妨げることとならない灯火であること。
 
 2   法定灯火を備えている船舶は、視界制限状態においては、日出から日没までの間にあつて
もこれを表示しなければならず、また、その他必要と認められる場合は、これを表示することがで
きる。
  
 3   船舶は、昼間においてこの法律に定める形象物を表示しなければならない。
  
 4   この法律に定めるもののほか、灯火及び形象物の技術上の基準並びにこれらを表示すべき
位置については、運輸省令で定める。
  
(定義) 
第21条  この法律において「マスト灯」とは、225度にわたる水平の弧を照らす白灯であつて、その
射光が正船首方向から各げん正横後22度30分までの間を照らすように船舶の中心線上に装置されるも
のをいう。
  
 2   この法律において「げん灯」とは、それぞれ112度30分にわたる水平の弧を照らす紅灯及び
緑灯の一対であつて、紅灯にあつてはその射光が正船首方向から左げん正横後22度30分までの間を照
らすように左げん側に装置される灯火をいい、緑灯にあつてはその射光が正船首方向から右げん正横
後22度30分までの間を照らすように右げん側に装置される灯火をいう。
  
 3   この法律において「両色灯」とは、紅色及び緑色の部分からなる灯火であつて、その紅色及
び緑色の部分がそれぞれげん灯の紅灯及び緑灯と同一の特性を有することとなるように船舶の中心線
上に装置されるものをいう。
  
 4   この法律において「船尾灯」とは、135度にわたる水平の弧を照らす白灯であつて、その射
光が正船尾方向から各げん67度30分までの間を照らすように装置されるものをいう。
  
 5   この法律において「引き船灯」とは、船尾灯と同一の特性を有する黄灯をいう。
  
 6   この法律において「全周灯」とは、360度にわたる水平の弧を照らす灯火をいう。
  
 7   この法律において「せん光灯」とは、一定の間隔で毎分120回以上のせん光を発する全周灯
をいう。
  
(灯火の視認距離) 
第22条  次の表の上欄に掲げる船舶その他の物件が表示する灯火は、同表中欄に掲げる灯火の種類
ごとに、同表下欄に掲げる距離以上の視認距離を得るのに必要な運輸省令で定める光度を有するもの
でなければならない。
長さ50メートル以上の船舶(他の動力船に引かれている航行中の船舶であつて、その相当部分が水没
しているため視認が困難であるものを除く。) マスト灯 6海里
げん灯 3海里
船尾灯 3海里
引き船灯 3海里
全周灯 3海里
長さ12メートル以上50メートル未満の船舶(他の動力船に引かれている航行中の船舶であつて、その
相当部分が水没しているため視認が困難であるものを除く。) マスト灯 5海里(長さ20メートル
未満の船舶にあつては、3海里)
げん灯 2海里
船尾灯 2海里
引き船灯 2海里
全周灯 2海里
長さ12メートル未満の船舶(他の動力船に引かれている航行中の船舶であつて、その相当部分が水没
しているため視認が困難であるものを除く。) マスト灯 2海里
げん灯 1海里
船尾灯 2海里
引き船灯 2海里
全周灯 2海里
他の動力船に引かれている航行中の船舶その他の物件であつて、その相当部分が水没しているため視
認が困難であるもの 全周灯 3海里
 
(航行中の動力船) 
第23条  航行中の動力船(次条第1項、第2項、第4項若しくは第7項、第26条第1項若しくは第2
項、第27条第1項から第4項まで若しくは第6項又は第29条の規定の適用があるものを除く。以下こ
の条において同じ。)は、次に定めるところにより、灯火を表示しなければならない。
 
前部にマスト灯一個を掲げ、かつ、そのマスト灯よりも後方の高い位置にマスト灯1個を掲げること。
ただし、長さ50メートル未満の動力船は、後方のマスト灯を掲げることを要しない。
 
げん灯一対(長さ20メートル未満の動力船にあつては、げん灯一対又は両色灯一個。第3項及び第4
項並びに次条第1項第2号及び第2項第2号において同じ。)を掲げること。
 
できる限り船尾近くに船尾灯1個を掲げること。
 
 2   水面から浮揚した状態で航行中のエアクッション船(船体の下方へ噴出する空気の圧力の
反作用により水面から浮揚した状態で移動することができる動力船をいう。)は、前項の規定による
灯火のほか、黄色のせん光灯1個を表示しなければならない。
  
 3   航行中の長さ12メートル未満の動力船は、第1項の規定による灯火の表示に代えて、白色
の全周灯1個及びげん灯一対を表示することができる。
  
 4   航行中の長さ7メートル未満の動力船であつて、その最大速力が7ノットを超えないもの
は、第1項又は前項の規定による灯火の表示に代えて、白色の全周灯一個を表示することができる。
この場合において、その動力船は、できる限りげん灯一対を表示しなければならない。
  
 5   航行中の長さ12メートル未満の動力船は、マスト灯を表示しようとする場合において、そ
のマスト灯を船舶の中心線上に装置することができないときは、マスト灯と同一の特性を有する灯
火一個を船舶の中心線上の位置以外の位置に表示することをもつて足りる。
  
 6   航行中の長さ12メートル未満の動力船は、両色灯を表示しようとする場合において、マス
ト灯又は第3項若しくは第4項の規定による白色の全周灯を船舶の中心線上に装置することができ
ないときは、その両色灯の表示に代えて、これと同一の特性を有する灯火一個を船舶の中心線上の
位置以外の位置に表示することができる。この場合において、その灯火は、前項の規定によるマス
ト灯と同一の特性を有する灯火又は第3項若しくは第4項の規定による白色の全周灯が装置されて
いる位置から船舶の中心線に平行に引いた直線上又はできる限りその直線の近くに掲げるものとする。
  
(航行中のえい航船等) 
第24条  船舶その他の物件を引いている航行中の動力船(次項、第26条第1項若しくは第2項又は
第27条第1項から第4項まで若しくは第6項の規定の適用があるものを除く。以下この項において
同じ。)は、次に定めるところにより、灯火又は形象物を表示しなければならない。
 
次のイ又はロに定めるマスト灯を掲げること。ただし、長さ50メートル未満の動力船は、イに定め
る後方のマスト灯を掲げることを要しない。
 
前部に垂直線上にマスト灯2個(引いている船舶の船尾から引かれている船舶その他の物件の後端
までの距離(以下この条において「えい航物件の後端までの距離」という。)が200メートルを超え
る場合にあつては、マスト灯3個)及びこれらのマスト灯よりも後方の高い位置にマスト灯1個
 
前部にマスト灯1個及びこのマスト灯よりも後方の高い位置に垂直線上にマスト灯2個(えい航物
件の後端までの距離が200メートルを超える場合にあつては、マスト灯3個)
 
げん灯一対を掲げること。
 
できる限り船尾近くに船尾灯1個を掲げること。
 
前号の船尾灯の垂直線上の上方に引き船灯1個を掲げること。
 
えい航物件の後端までの距離が200メートルを超える場合は、最も見えやすい場所にひし形の形象物
1個を掲げること。
 
 2   船舶その他の物件を押し、又は接げんして引いている航行中の動力船(第26条第1項若し
くは第2項又は第27条第1項、第2項若しくは第4項の規定の適用があるものを除く。以下この項
において同じ。)は、次に定めるところにより、灯火を表示しなければならない。
 
次のイ又はロに定めるマスト灯を掲げること。ただし、長さ50メートル未満の動力船は、イに定め
る後方のマスト灯を掲げることを要しない。
 
前部に垂直線上にマスト灯2個及びこれらのマスト灯よりも後方の高い位置にマスト灯1個
 
前部にマスト灯1個及びこのマスト灯よりも後方の高い位置に垂直線上にマスト灯2個
 
げん灯一対を掲げること。
 
できる限り船尾近くに船尾灯1個を掲げること。
 
 3   遭難その他の事由により救助を必要としている船舶を引いている航行中の動力船であつて
、通常はえい航作業に従事していないものは、やむを得ない事由により前2項の規定による灯火を
表示することができない場合は、これらの灯火の表示に代えて、前条の規定による灯火を表示し、
かつ、当該動力船が船舶を引いていることを示すため、えい航索の照明その他の第36条第1項の規
定による他の船舶の注意を喚起するための信号を行うことをもつて足りる。
  
 4   他の動力船に引かれている航行中の船舶その他の物件(第1項、第7項(第2号に係る部
分に限る。)、第26条第1項若しくは第2項又は第27条第2項から第4項までの規定の適用がある
船舶及び次項の規定の適用がある船舶その他の物件を除く。以下この項において同じ。)は、次に
定めるところにより、灯火又は形象物を表示しなければならない。
 
げん灯一対(長さ20メートル未満の船舶その他の物件にあつては、げん灯一対又は両色灯1個)を
掲げること。
 
できる限り船尾近くに船尾灯1個を掲げること。
 
えい航物件の後端までの距離が200メートルを超える場合は、最も見えやすい場所にひし形の形象物
1個を掲げること。
 
 5   他の動力船に引かれている航行中の船舶その他の物件であつて、その相当部分が水没して
いるため視認が困難であるものは、次に定めるところにより、灯火又は形象物を表示しなければな
らない。この場合において、2以上の船舶その他の物件が連結して引かれているときは、これらの
物件は、1個の物件とみなす。
 
前端又はその付近及び後端又はその付近に、それぞれ白色の全周灯1個を掲げること。ただし、石
油その他の貨物を充てんして水上輸送の用に供するゴム製の容器は、前端又はその付近に白色の全
周灯を掲げることを要しない。
 
引かれている船舶その他の物件の最大の幅が25メートル以上である場合は、両側端又はその付近に
それぞれ白色の全周灯1個を掲げること。
 
引かれている船舶その他の物件の長さが100メートルを超える場合は、前2号の規定による白色の全
周灯の間に、100メートルを超えない間隔で白色の全周灯を掲げること。
 
後端又はその付近にひし形の形象物1個を掲げること。
 
えい航物件の後端までの距離が200メートルを超える場合は、できる限り前方の最も見えやすい場所
にひし形の形象物1個を掲げること。
 
 6   前2項に規定する他の動力船に引かれている航行中の船舶その他の物件は、やむを得ない
事由により前2項の規定による灯火又は形象物を表示することができない場合は、照明その他その
存在を示すために必要な措置を講ずることをもつて足りる。
  
 7   次の各号に掲げる船舶(第26条第1項若しくは第2項又は第27条第2項から第4項までの
規定の適用があるものを除く。)は、それぞれ当該各号に定めるところにより、灯火を表示しなけ
ればならない。この場合において、2隻以上の船舶が一団となつて、押され、又は接げんして引か
れているときは、これらの船舶は、1隻の船舶とみなす。
 
他の動力船に押されている航行中の船舶
前端にげん灯一対(長さ20メートル未満の船舶にあつては、げん灯一対又は両色灯1個。次号にお
いて同じ。)を掲げること。
 
他の動力船に接げんして引かれている航行中の船舶
前掲にげん灯一対を掲げ、かつ、できる限り船尾近くに船尾灯1個を掲げること。
 
 8   押している動力船と押されている船舶とが結合して一体となつている場合は、これらの船
舶を1隻の動力船とみなしてこの章の規定を適用する。
  
(航行中の帆船等) 
第25条  航行中の帆船(前条第4項若しくは第7項、次条第1項若しくは第2項又は第27条第1項
、第2項若しくは第4項の規定の適用があるものを除く。以下この条において同じ。)であつて、長さ7メートル以上のものは、げん灯一対(長さ20メートル未満の帆船にあつては、げん灯一対又は両色灯1個。以下この条において同じ。)を表示し、かつ、できる限り船尾近くに船尾灯1個を表示しなければならない。
  
 2   航行中の長さ7メートル未満の帆船は、できる限り、げん灯一対を表示し、かつ、できる限り船尾近くに船尾灯1個を表示しなければならない。ただし、これらの灯火又は次項に規定する3色灯を表示しない場合は、白色の携帯電灯又は点火した白灯を直ちに使用することができるように備えておき、他の船舶との衝突を防ぐために十分な時間これを表示しなければならない。
  
 3   航行中の長さ20メートル未満の帆船は、げん灯一対及び船尾灯1個の表示に代えて、3色灯(紅色、緑色及び白色の部分からなる灯火であつて、紅色及び緑色の部分にあつてはそれぞれげん灯の紅灯及び緑灯と、白色の部分にあつては船尾灯と同一の特性を有することとなるように船舶の中心線上に装置されるものをいう。)1個をマストの最上部又はその付近の最も見えやすい場所に表示することができる。
  
 4   航行中の帆船は、げん灯一対及び船尾灯1個のほか、マストの最上部又はその付近の最も見えやすい場所に、紅色の全周灯1個を表示し、かつ、その垂直線上の下方に緑色の全周灯1個を表示することができる。ただし、これらの灯火を前項の規定による3色灯と同時に表示してはならない。
  
 5   ろかいを用いている航行中の船舶は、前各項の規定による帆船の灯火を表示することができる。ただし、これらの灯火を表示しない場合は、白色の携帯電灯又は点火した白灯を直ちに使用することができるように備えておき、他の船舶との衝突を防ぐために十分な時間これを表示しなければならない。
  
 6   機関及び帆を同時に用いて推進している動力船(次条第1項若しくは第2項又は第27条第1項から第4項までの規定の適用があるものを除く。)は、前部の最も見えやすい場所に円すい形の形象物1個を頂点を下にして表示しなければならない。
  
(漁ろうに従事している船舶) 
第26条  航行中又はびよう泊中の漁ろうに従事している船舶(次条第1項の規定の適用があるものを除く。以下この条において同じ。)であつて、トロール(けた網その他の漁具を水中で引くことにより行う漁法をいう。第4項において同じ。)により漁ろうをしているもの(以下この条において「トロール従事船」という。)は、次に定めるところにより、灯火又は形象物を表示しなければならない。
 
緑色の全周灯1個を掲げ、かつ、その垂直線上の下方に白色の全周灯1個を掲げること。
 
前号の緑色の全周灯よりも後方の高い位置にマスト灯1個を掲げること。ただし、長さ50メートル未満の漁ろうに従事している船舶は、これを掲げることを要しない。
 
対水速力を有する場合は、げん灯1対(長さ20メートル未満の漁ろうに従事している船舶にあつては、げん灯一対又は両色灯1個。次項第2号において同じ。)を掲げ、かつ、できる限り船尾近くに船尾灯1個を掲げること。
 
2個の同形の円すいをこれらの頂点で垂直線上の上下に結合した形の形象物一個を掲げること。
 
 2   トロール従事船以外の航行中又はびよう泊中の漁ろうに従事している船舶は、次に定めるところにより、灯火又は形象物を表示しなければならない。
 
紅色の全周灯1個を掲げ、かつ、その垂直線上の下方に白色の全周灯1個を掲げること。
 
対水速力を有する場合は、げん灯一対を掲げ、かつ、できる限り船尾近くに船尾灯1個を掲げること。
 
漁具を水平距離150メートルを超えて船外に出している場合は、その漁具を出している方向に白色の全周灯1個又は頂点を上にした円すい形の形象物1個を掲げること。
 
2個の同形の円すいをこれらの頂点で垂直線上の上下に結合した形の形象物1個を掲げること。
 
 3   長さ20メートル以上のトロール従事船は、他の漁ろうに従事している船舶と著しく接近している場合は、第1項の規定による灯火のほか、次に定めるところにより、同項第1号の白色の全周灯よりも低い位置の最も見えやすい場所に灯火を表示しなければならない。この場合において、その灯火は、第22条の規定にかかわらず、1海里以上3海里未満(長さ50メートル未満のトロール従事船にあつては、1海里以上2海里未満)の視認距離を得るのに必要な運輸省令で定める光度を有するものでなければならない。
 
投網を行つている場合は、白色の全周灯2個を垂直線上に掲げること。
 
揚網を行つている場合は、白色の全周灯1個を掲げ、かつ、その垂直線上の下方に紅色の全周灯1個を掲げること。
 
網が障害物に絡み付いている場合は、紅色の全周灯2個を垂直線上に掲げること。
 
 4   長さ20メートル以上のトロール従事船であつて、2そうびきのトロールにより漁ろうをしているものは、他の漁ろうに従事している船舶と著しく接近している場合は、それぞれ、第1項及び前項の規定による灯火のほか、第20条第1項及び第2項の規定にかかわらず、夜間において対をなしている他方の船舶の進行方向を示すように探照灯を照射しなければならない。
  
 5   長さ20メートル以上のトロール従事船以外の運輸省令で定める漁ろうに従事している船舶は、他の漁ろうに従事している船舶と著しく接近している場合は、第1項又は第2項の規定による灯火のほか、運輸省令で定める灯火を運輸省令で定めるところにより表示することができる。
  
(運転不自由船及び操縦性能制限船) 
第27条  航行中の運転不自由船(第24条第4項又は第7項の規定の適用があるものを除く。以下この項において同じ。)は、次に定めるところにより、灯火又は形象物を表示しなければならない。ただし、航行中の長さ12メートル未満の運転不自由船は、その灯火又は形象物を表示することを要しない。
 
最も見えやすい場所に紅色の全周灯2個を垂直線上に掲げること。
 
対水速力を有する場合は、げん灯一対(長さ20メートル未満の運転不自由船にあつては、げん灯一対又は両色灯1個)を掲げ、かつ、できる限り船尾近くに船尾灯1個を掲げること。
 
最も見えやすい場所に球形の形象物2個又はこれに類似した形象物2個を垂直線上に掲げること。
 
 2   航行中又はびよう泊中の操縦性能制限船(前項、次項、第4項又は第6項の規定の適用があるものを除く。以下この項において同じ。)は、次に定めるところにより、灯火又は形象物を表示しなければならない。
 
最も見えやすい場所に白色の全周灯1個を掲げ、かつ、その垂直線上の上方及び下方にそれぞれ紅色の全周灯1個を掲げること。
 
対水速力を有する場合は、マスト灯2個(長さ50メートル未満の操縦性能制限船にあつては、マスト灯1個。第4項第2号において同じ。)及びけん灯一対(長さ20メートル未満の操縦性能制限船にあつては、げん灯一対又は両色灯2個。同号において同じ。)を掲げ、かつ、できる限り船尾近くに船尾灯1個を掲げること。
 
最も見えやすい場所にひし形の形象物1個を掲げ、かつ、その垂直線上の上方及び下方にそれぞれ球形の形象物1個を掲げること。
 
びよう泊中においては、最も見えやすい場所に第30条第1項各号の規定による灯火又は形象物を掲げること。
 
 3   航行中の操縦性能制限船であつて、第3条第7項第6号に規定するえい航作業に従事しているもの(第1項の規定の適用があるものを除く。)は、第24条第1項各号並びに前項第1号及び第3号の規定による灯火又は形象物を表示しなければならない。
  
 4   航行中又はびよう泊中の操縦性能制限船であつて、しゆんせつその他の水中作業(掃海作業を除く。)に従事しているもの(第1項の規定の適用があるものを除く。)は、その作業が他の船舶の通航の妨害となるおそれがある場合は、次の各号に定めるところにより、灯火又は形象物を表示しなければならない。
 
最も見えやすい場所に白色の全周灯1個を掲げ、かつ、その垂直線上の上方及び下方にそれぞれ紅色の全周灯1個を掲げること。
 
対水速力を有する場合は、マスト灯2個及びげん灯一対を掲げ、かつ、できる限り船尾近くに船尾灯1個を掲げること。
 
その作業が他の船舶の通航の妨害となるおそれがある側のげんを示す紅色の全周灯2個又は球形の形象物2個をそのげんの側に垂直線上に掲げること。
 
他の船舶が通航することができる側のげんを示す緑色の全周灯2個又はひし形の形象物2個をそのげんの側に垂直線上に掲げること。
 
最も見えやすい場所にひし形の形象物1個を掲げ、かつ、その垂直線上の上方及び下方にそれぞれ球形の形象物1個を掲げること。
 
 5   前項に規定する操縦性能制限船であつて、潜水夫による作業に従事しているものは、その船体の大きさのために同項第2号から第5号までの規定による灯火又は形象物を表示することができない場合は、次に定めるところにより、灯火又は信号板を表示することをもつて足りる。
 
最も見えやすい場所に白色の全周灯1個を掲げ、かつ、その垂直線上の上方及び下方にそれぞれ紅色の全周灯1個を掲げること。
 
国際海事機関が採択した国際信号書に定めるA旗を表す信号板を、げん縁上1メートル以上の高さの位置に周囲から見えるように掲げること。
 
 6   航行中又はびよう泊中の操縦性能制限船であつて、掃海作業に従事しているものは、次に定めるところにより、灯火又は形象物を表示しなければならない。
 
当該船舶から千メートル以内の水域が危険であることを示す緑色の全周灯3個又は球形の形象物3個を掲げること。この場合において、これらの全周灯3個又は球形の形象物3個のうち、1個は前部マストの最上部付近に掲げ、かつ、他の2個はその前部マストのヤードの両端に掲げること。
 
航行中においては、第23条第1項各号の規定による灯火を掲げること。
 
びよう泊中においては、最も見えやすい場所に第30条第1項各号の規定による灯火又は形象物を掲げること。
 
 7   航行中又はびよう泊中の長さ12メートル未満の操縦性能制限船(潜水夫による作業に従事しているものを除く。)は、第2項から第4項まで及び前項の規定による灯火又は形象物を表示することを要しない。
  
(喫水制限船) 
第28条  航行中の喫水制限船(第23条第1項の規定の適用があるものに限る。)は、同項各号の規定による灯火のほか、最も見えやすい場所に紅色の全周灯3個又は円筒形の形象物1個を垂置線上に表示することができる。
  
(水先船) 
第29条  航行中又はびよう泊中の水先船であつて、水先業務に従事しているものは、次に定めるところにより、灯火又は形象物を表示しなければならない。
 
マストの最上部又はその付近に白色の全周灯1個を掲げ、かつ、その垂直線上の下方に紅色の全周灯1個を掲げること。
 
航行中においては、げん灯一対(長さ20メートル未満の水先船にあつては、げん灯一対又は両色灯1個)を掲げ、かつ、できる限り船尾近くに船尾灯1個を掲げること。
 
びよう泊中においては、最も見えやすい場所に次条第1項各号の規定による灯火又は形象物を掲げること。
 
(びよう泊中の船舶及び乗り掲げている船舶) 
第30条  びよう泊中の船舶(第26条第1項若しくは第2項、第27条第2項、第4項若しくは第6項又は前条の規定の適用があるものを除く。次項及び第4項において同じ。)は、次に定めるところにより、最も見えやすい場所に灯火又は形象物を表示しなければならない。
 
前部に白色の全周灯1個を掲げ、かつ、できる限り船尾近くにその全周灯よりも低い位置に白色の全周灯1個を掲げること。ただし、長さ50メートル未満の船舶は、これらの灯火に代えて、白色の全周灯1個を掲げることができる。
 
前部に球形の形象物1個を掲げること。
 
 2   びよう泊中の船舶は、作業灯又はこれに類似した灯火を使用してその甲板を照明しなければならない。ただし、長さ100メートル未満の船舶は、その甲板を照明することを要しない。
  
 3   乗り場げている船舶は、次に定めるところにより、最も見えやすい場所に灯火又は形象物を表示しなければならない。
 
前部に白色の全周灯1個を掲げ、かつ、できる限り船尾近くにその全周灯よりも低い位置に白色の全周灯1個を掲げること。ただし、長さ50メートル未満の船舶は、これらの灯火に代えて、白色の全周灯1個を掲げることができる。
 
紅色の全周灯2個を垂直線上に掲げること。
 
球形の形象物3個を垂直線上に掲げること。
 
 4   長さ7メートル未満のびよう泊中の船舶は、そのびよう泊をしている水域が、狭い水道等、びよう地若しくはこれらの付近又は他の船舶が通常航行する水域である場合を除き、第1項の規定による灯火又は形象物を表示することを要しない。
  
 5   長さ12メートル未満の乗り掲げている船舶は、第3項第2号又は第3号の規定による灯火又は形象物を表示することを要しない。
  
(水上航空機) 
第31条  水上航空機は、この法律の規定による灯火又は形象物を表示することができない場合は、その特性又は位置についてできる限りこの法律の規定に準じてこれを表示しなければならない。
  
4章 音響信号及び発光信号  
 
(定義) 
第32条  この法律において「汽笛」とは、この法律に規定する短音及び長音を発することができる装置をいう。
  
 2   この法律において「短音」とは、約1秒間継続する吹鳴をいう。
  
 3   この法律において「長音」とは、4秒以上6秒以下の時間継続する吹鳴をいう。
  
(音響信号設備) 
第33条  船舶は、汽笛及び号鐘(長さ100メートル以上の船舶にあつては、汽笛並びに号鐘及びこれと混同しない音調を有するどら)を備えなければならない。ただし、号鐘又はどらは、それぞれこれと同一の音響特性を有し、かつ、この法律の規定による信号を手動により行うことができる他の設備をもつて代えることができる。
  
 2   長さ12メートル未満の船舶は、前項の汽笛及び号鐘を備えることを要しない。ただし、これらを備えない場合は、有効な音響による信号を行うことができる他の手段を講じておかなければならない。
  
 3   この法律に定めるもののほか、汽笛、号鐘及びどらの技術上の基準並びに汽笛の位置については、運輸省令で定める。
  
(操船信号及び警告信号) 
第34条  航行中の動力船は、互いに他の船舶の視野の内にある場合において、この法律の規定によりその針路を転じ、又はその機関を後進にかけているときは、次の各号に定めるところにより、汽笛信号を行わなければならない。
 
針路を右に転じている場合は、短音を一回鳴らすこと。
 
針路を左に転じている場合は、短音を2回鳴らすこと。
 
機関を後進にかけている場合は、短音を3回鳴らすこと。
 
 2   航行中の動力船は、前項の規定による汽笛信号を行わなければならない場合は、次の各号に定めるところにより、発光信号を行うことができる。この場合において、その動力船は、その発光信号を10秒以上の間隔で反復して行うことができる。
 
針路を右に転じている場合は、せん光を1回発すること。
 
針路を左に転じている場合は、せん光を2回発すること。
 
機関を後進にかけている場合は、せん光を3回発すること。
 
 3   前項のせん光の継続時間及びせん光とせん光との間隔は、約1秒とする。
  
 4   船舶は、互いに他の船舶の視野の内にある場合において、第9条第4項の規定による汽笛信号を行うときは、次の各号に定めるところにより、これを行わなければならない。
 
他の船舶の右げん側を追い越そうとする場合は、長音2回に引き続く短音1回を鳴らすこと。
 
他の船舶の左げん側を追い越そうとする場合は、長音2回に引き続く短音2回を鳴らすこと。
 
他の船舶に追い越されることに同意した場合は、順次に長音1回、短音1回、長音1回及び短音1回を鳴らすこと。
 
 5   互いに他の船舶の視野の内にある船舶が互いに接近する場合において、船舶は、他の船舶の意図若しくは動作を理解することができないとき、又は他の船舶が衝突を避けるために十分な動作をとつていることについて疑いがあるときは、直ちに急速に短音を5回以上鳴らすことにより汽笛信号を行わなければならない。この場合において、その汽笛信号を行う船舶は、急速にせん光を5回以上発することにより発光信号を行うことができる。
  
 6   船舶は、障害物があるため他の船舶を見ることができない狭い水道等のわん曲部その他の水域に接近する場合は、長音3回の汽笛信号を行わなければならない。この場合において、その船舶に接近する他の船舶は、そのわん曲部の付近又は障害物の背後においてその汽笛信号を聞いたときは、長音1回の汽笛信号を行うことによりこれに応答しなければならない。
  
 7   船舶は、2以上の汽笛をそれぞれ100メートルを超える間隔を置いて設置している場合においく第1項又は前3項の規定による汽笛信号を行うときは、これらの汽笛を同時に鳴らしてはならない。
  
 8   第2項及び第5項後段の規定による発光信号に使用する灯火は、5海里以上の視認距離を有する白色の全周灯とし、その技術上の基準及び位置については、運輸省令で定める。
  
(視界制限状態における音響信号) 
第35条  視界制限状態にある水域又はその付近における船舶の信号については、次項から第12項までに定めるところによる。
  
 2   航行中の動力船(第4項又は第5項の規定の適用があるものを除く。次項において同じ。)は、対水速力を有する場合は、2分を超えない間隔で長音を1回鳴らすことにより汽笛信号を行わなければならない。
  
 3   航行中の動力船は、対水速力を有しない場合は、約2秒の間隔の2回の長音を2分を超えない間隔で鳴らすことにより汽笛信号を行わなければならない。
  
 4   航行中の船舶(帆船、漁ろうに従事している船舶、運転不自由船、操縦性能制限船及び喫水制限船(他の動力船に引かれているものを除く。)並びに他の船舶を引き、及び押している動力船に限る。)は、2分を超えない間隔で、長音1回に引き続く短音2回を鳴らすことにより汽笛信号を行わなければならない。
  
 5   他の動力船に引かれている航行中の船舶(2隻以上ある場合は、最後部のもの)は、乗組員がいる場合は、2分を超えない間隔で、長音1回に引き続く短音3回を鳴らすことにより汽笛信号を行わなければならない。この場合において、その汽笛信号は、できる限り、引いている動力船が行う前項の規定による汽笛信号の直後に行わなければならない。
  
 6   びよう泊中の長さ100メートル以上の船舶(第8項の規定の適用があるものを除く。)は、その前部において、1分を超えない間隔で急速に号鐘を約5秒間鳴らし、かつ、その後部において、その直後に急速にどらを約5秒間鳴らさなければならない。この場合において、その船舶は、接近してくる他の船舶に対し自船の位置及び自船との衝突の可能性を警告する必要があるときは、順次に短音1回、長音1回及び短音1回を鳴らすことにより汽笛信号を行うことができる。
  
 7   びよう泊中の長さ100メートル未満の船舶(次項の規定の適用があるものを除く。)は、1分を超えない間隔で急速に号鐘を約5秒間鳴らさなければならない。この場合において、前項後段の規定を準用する。
  
 8   びよう泊中の漁ろうに従事している船舶及び操縦性能制限船は、2分を超えない間隔で、長音1回に引き続く短音2回を鳴らすことにより汽笛信号を行わなければならない。
  
 9   乗り揚げている長さ100メートル以上の船舶は、その前部において、1分を超えない間隔で急速に号鐘を約5秒間鳴らすとともにその直前及び直後に号鐘をそれぞれ3回明確に点灯し、かつ、その後部において、その号鐘の最後の点灯の直後に急速にどらを約5秒間鳴らさなければならない。この場合において、その船舶は、適切な汽笛信号を行うことができる。
  
 10   乗り揚げている長さ100メートル未満の船舶は、1分を超えない間隔で急速に号鐘を約5秒間鳴らすとともにその直前及び直後に号鐘をそれぞれ3回明確に点灯しなければならない。この場合において、前項後段の規定を準用する。
  
 11   長さ12メートル未満の船舶は、第2項から前項までの規定による信号を行うことを要しない。ただし、その信号を行わない場合は、2分を超えない間隔で他の有効な音響による信号を行わなければならない。
  
 12   第29条に規定する水先船は、第2項、第3項又は第7項の規定による信号を行う場合は、これらの信号のほか短音4回の汽笛信号を行うことができる。
  
 13   押している動力船と押されている船舶とが結合して一体となつている場合は、これらの船舶を1隻の動力船とみなしてこの章の規定を適用する。
  
(注意喚起信号) 
第36条  船舶は、他の船舶の注意を喚起するために必要があると認める場合は、この法律に規定する信号と誤認されることのない発光信号又は音響による信号を行い、又は他の船舶を眩惑させない方法により危険が存する方向に探照灯を照射することができる。
  
 2   前項の規定による発光信号又は探照灯による照射は、船舶の航行を援助するための施設の灯火と誤認されるものであつてはならず、また、ストロボ等による点滅し、又は回転する強力な灯火を使用して行つてはならない。
  
(遭難信号) 
第37条  船舶は、遭難して救助を求める場合は、運輸省令で定める信号を行わなければならない。
  
 2   船舶は、遭難して救助を求めていることを示す目的以外の目的で前項の規定による信号を行つてはならず、また、これと誤認されるおそれのある信号を行つてはならない。
  
第5章 補  則  
 
(切迫した危険のある特殊な状況) 
第38条  船舶は、この法律の規定を履行するに当たつては、運航上の危険及び他の船舶との衝突の危険に十分に注意し、かつ、切迫した危険のある特殊な状況(船舶の性能に基づくものを含む。)に十分に注意しなければならない。
  
 2   船舶は、前項の切迫した危険のある特殊な状況にある場合においては、切迫した危険を避けるためにこの法律の規定によらないことができる。
  
(注意等を怠ることについての責任) 
第39条  この法律の規定は、適切な航法で運航し、灯火若しくは形象物を表示し、若しくは信号を行うこと又は船員の常務として若しくはその時の特殊な状況により必要とされる注意をすることを怠ることによつて生じた結果について、船舶、船舶所有者、船長又は海員の責任を免除するものではない。
  
(他の法令による航法等についてのこの法律の規定の適用等) 
第40条  第16条、第17条、第20条(第4項を除く。)、第34条(第4項から第6項までを除く。)、第36条、第38条及び前条の規定は、他の法令において定められた航法、灯火又は形象物の表示、信号その他運航に関する事項についても適用があるものとし、第11条の規定は、他の法令において定められた避航に関する事項について準用するものとする。
  
(この法律の規定の特例) 
第41条  船舶の衝突予防に関し遵守すべき航法、灯火又は形象物の表示、信号その他運航に関する事項であつて、港則法(昭和23年法律第174号)又は海上交通安全法(昭和47年法律第115号)の定めるものについては、これらの法律の定めるところによる。
  
 2   政令で定める水域における水上航空機の衝突予防に関し遵守すべき航法、灯火又は形象物の表示、信号その他運航に関する事項については、政令で特例を定めることができる。
  
 3   国際規則第1条(c)に規定する位置灯、信号灯、形象物若しくは汽笛信号又は同条(e)に規定する灯火若しくは形象物の数、位置、視認距離若しくは視認圏若しくは音響信号装置の配置若しくは特性(次項において「特別事項」という。)については、運輸省令で特例を定めることができる。
  
 4   条約の締結国である外国が特別事項について特別の規則を定めた場合において、国際規則第1条(c)又は(e)に規定する船舶であつて当該外国の国籍を有するものが当該特別の規則に従うときは、当該特別の規則に相当するこの法律又はこの法律に基づく命令の規定は、当該船舶について適用しない。
  
(経過措置) 
第42条  この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置を定めることができる。
 
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2005/10/2
救助要請の遅れが原因
瀬渡し船事故で審判裁決
 鹿児島県・トカラ列島で昨年12月、瀬渡し船の第2可能丸が転覆し乗客5人が行方不明になった事故の海難審判で、門司地方海難審判庁は30日、同船の整備不良救助要請の遅れが事故原因として刑事裁判の被告に当たる肥後茂久船長(54)に業務停止6カ月を言い渡した。
 千手末年審判長は「燃料油供給系統の整備不良でエンジンが停止し、漂流中、天候が悪化しても速やかに救助を要請しなかったことが事故の原因」と認定。肥後船長が救命胴衣着用を指示しなかったため乗客が行方不明になったと述べた。
 裁決によると、同船は昨年12月4日、鹿児島県・口之島から南側の中之島に向かう途中でエンジンが故障し、漂流中に横波を受け転覆。肥後船長は自力で島に泳ぎ着いたが、乗客5人は行方不明になったまま見つかっていない。(共同通信)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2005093000078&genre=D1&area=Z10