・・・人間・・・


     村井剛弁護士が、お好み焼き屋で未来ちゃんと雑談しているころ、懲内男仁は、ILC記念病院産婦人科病棟にいた。
     妻の出産に立ち会うためである。

看護婦/

 ああ、懲内さんのご主人さんですね。
 もうすぐ、生まれますよ、早く行って、奥さんの手を握りしめてあげて!!

懲内男仁/

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  (・・・・懲内男仁の形相は
            人間のものではなかった。
  この世に鬼畜生がいるとしたら、
         まさに、このような顔をしているのではないか・・・!!)

看護婦/
  奥さん、もう少しよ。頑張って!!
  ほら、 もう直ぐ、生まれるわ!!
  ほら・・・・・・頭が、出てきたわ・・・・!!

ブス−−−!!

ぎゃあ−−−−−−−−!!

何をするのよ!! 何をするんですか!!
懲内男仁さん!!
先生−−−!!!


     前途を悲観した懲内男仁は、まさに生まれようとし、妻の産道から親指ひとつ出てきた我が子の頭に、なんとミシン針を突き刺したのであった。
                        (五右衛門・作)



胎児の絶叫/
 いてーじゃねぇ〜かぁ〜。ダメヲヤジ・・ょぉ〜
 まだ、一人目なんだから、ミシンはねぇ〜だろぉ〜
 (ブラザーミシン・・・???)
                       (愛・作)



    刑法204条傷害の罪
      10年以下の懲役刑又は30万円以下の罰金若しくは科料
    刑法205条傷害致死の罪
      2年以上の有期懲役刑
    刑法215条不同意堕胎の罪
      6月以上7年以下の懲役刑
    刑法199条殺人の罪
      死刑、無期若しくは3年以上の懲役刑



 どの罪になるんだろう・・・・・・??
 また、法律関係はどうなるんだろう・・・・??


     刑事では一部露出で人間として認められ、殺人罪の客体足りうるから、殺人罪(刑法199条)となる。
     民事では全部露出で人間として認められるから、殺された嬰児(刑法上の人で民事上の胎児)自身の損害賠償請求権はなく(民法1条の3・私権の享有は出生に始まる)、妻である母親の夫懲内男仁に対する損害賠償請求権(民法710条・財産以外の損害に対する損害賠償請求権規定?)のみが認められることとなる。
     おそらく、離婚原因を定める770条の1項5号に定める「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にも該当することとなるだろう。
                             (回答者・愛)

正解/
       愛さんの解答で正解と思われます。
     「人間は、いつから、人間となるのか」という点については、民法と刑法では、その法律が守ろうとする保護法益が異なる等の理由から、異なった取り扱いがされています。
     民法の場合には、胎児が母胎から全部露出した時とされ、刑法の場合には、本件事例のように外部からの直接の侵害を受け得る可能性がある時、即ち一部露出した時とされています。
     なお、民法上は、一般的には、胎児に権利を取得する能力は認めていませんが、不法行為の関しては「胎児は損害賠償請求権については既に生まれたものとみなす」(民法721条)と定められており、本件事例のような場合、どうなるかは、胎児が出産したか、死産か等により、考え方が分かれています。

     なお、現代医学の進歩により「脳死」ということ概念が生まれており、このような医学の進歩は「いつから、人間は人間でなくなるのか」という「人間の死」についての法解釈にも、影響を与えてきています。
                               (五右衛門)



余談/
     懲内男仁は、我が子を、殺そうとしたのである。
     が・・??・・母は何を原因、理由として母となり、父は何を理由として、父と言われるのでしょう。
     親子関係は、どのようにして定められるのだろうか・・・・??