児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
(平成十一年五月二十六日法律第五十二号)
 
最終改正:平成二三年六月二四日法律第七四号
 
(目的)
第一条  この法律は、
 児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、あわせて
 児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、
 児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、
 これらの行為等により心身に有害な影響を受けた
 児童の保護のための措置等を定めることにより、
 児童の権利を擁護することを目的とする。
 
(定義)
第二条  この法律において
 「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
2  この法律において
 
「児童買春」とは、
 次の各号に掲げる者に対し、
 対償を供与し、又はその供与の約束をして、
 当該児童に対し、
 性交等(
  性交若しくは性交類似行為をし、
 又は
  自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の
 性器等性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の
 性器等を触らせることをいう。以下同じ。)
 をすることをいう。
性器等のなかには、
   「乳房」は含まれない
              こととなる。
一  児童 
二  児童に対する性交等の周旋をした者
三  児童の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者
 
1 号にある「性交類似行為」とは、
 「実質的にみて、
 性交と同視し得る態様における性的な行為をいいます。例えば、
 異性間の性交とその態様を同じくする状況下におけるあるいは性交を模して行われる
 手淫・口淫行為、同性愛行為等です
                」2と解されている。
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/pdf/0681.pdf#search='%E5%85%90%E7%AB%A5%E8%B2%B7%E6%98%A5%E3%80%81%E5%85%90%E7%AB%A5%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%81%AB%E4%BF%82%E3%82%8B%E8%A1%8C%E7%82%BA%E7%AD%89%E3%81%AE%E5%87%A6%E7%BD%B0%E5%8F%8A%E3%81%B3%E5%85%90%E7%AB%A5%E3%81%AE%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E7%AD%89%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%B3%95%E5%BE%8B%EF%BC%92%E6%9D%A1%E3%81%AE%E6%80%A7%E5%99%A8%E7%AD%89%E3%81%AE%E5%AE%9A%E7%BE%A9++%E7%AB%8B%E6%B3%95%E7%90%86%E7%94%B1'
 
3  この法律において
 
「児童ポルノ」とは
 写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、
 次の各号のいずれかに掲げる
 児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一  児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二  他人が児童の性器等を触る行為
 又は
  児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態
であって
  性欲を興奮させ又は刺激するもの
 
三  衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態
であって
   性欲を興奮させ又は刺激するもの
ここにいう児童とは、「実在することが要件」とされているようである。
(適用上の注意)
第三条  この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。
 
(児童買春)
第四条  児童買春をした者は、五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
 
(児童買春周旋)
第五条  児童買春の周旋をした者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2  児童買春の周旋をすることを業とした者は、七年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。
 
(児童買春勧誘)
第六条  児童買春の周旋をする目的で、人に児童買春をするように勧誘した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2  前項の目的で、人に児童買春をするように勧誘することを業とした者は、七年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。
 
(児童ポルノ提供等)
第七条  児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
2  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
3  前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。
4  児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
 
 改正児童ポルノ禁止法7条5項
 第七条第四項の次に次の一項を加える。
5 前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
 
解説・By大阪、奥村弁護士
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「ひそかに製造罪」
 迷惑防止条例では、カメラを構えただけでも『卑わい行為』として処罰される可能性がありますが、児童ポルノ禁止法の『ひそかに製造罪』は、あくまでカメラに撮影された段階で犯罪が成立することになります。また、『未遂』の処罰はありません。ですから、カメラを向けただけの場合や、撮影に失敗した場合は『ひそかに製造罪』とならないのです」
 「盗撮の場合の児童ポルノの要件は、次のようなものです。
 『衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの』(2条3項3号)
 銭湯の男湯脱衣所にいる女児の裸を撮影した場合に、その写真が「殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」といえるのかどうか。
 児童の裸の写真のすべてが「児童ポルノ」にあたるわけではないので、今回も、この点は争点になりうるのだという。奥村弁護士は「盗撮に成功したとしても、必ずしも『ひそかに製造罪』が成立するとは限りません」と指摘している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140816-00001926-bengocom-soci
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5  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
 
6  第四項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。
 
(児童買春等目的人身売買等)
第八条  児童を児童買春における性交等の相手方とさせ又は第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を描写して児童ポルノを製造する目的で、当該児童を売買した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
2  前項の目的で、外国に居住する児童で略取され、誘拐され、又は売買されたものをその居住国外に移送した日本国民は、二年以上の有期懲役に処する。
3  前二項の罪の未遂は、罰する。
 
(児童の年齢の知情)
第九条  児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、第五条から前条までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。
 
 
児童と淫行した人が「対償供与はあったが、18歳未満とは知らなかった」と弁解した場合(2)・・奥村 徹 | 弁護士・大阪弁護士会
この点については,児童買春等処罰法の解釈として,次の2とおりの考え方があり得るであろう。
 第1 の考え方本法を制定した際,対償の供与又はその約束を伴う性交等を児童買春と定義し, これを伴わない性交等を同法の枠外としたのであるから,対償の供与又はその約束を伴うものについては,買春行為者に被害児童の年齢についての認識が認められるか否かにかかわらず,法律が制定すべき事項であって,その範囲においては条例の制定権は及ばないことになり,買春行為者に被害児童の年齢についての認識が認められない場合において,条例の淫行処罰規定,年齢の知情性推定規定を適用して処罰することはできない。 第2 の考え方本法は,対償の供与又はその約束が認められかつ,買春行為者に被害児童の年齢についての認識が認められる場合の部分) にのみ効力が及ぶのであって,本法が処罰の対象としていない行為については,対価性の有無にかかわらず,すべて条例の効力が及ぶ。すなわち,被害児童の年齢についての認識がない場合は,本法の規制が及ばない結果,対償の供与又はその約束を伴う場合であっても,条例による処罰の対象となる。
 
 (第1)の考え方に立つと、検察官が対償の供与又はその約束、及び買春行為者の被害児童の年齢に関する認識についての証拠が不十分であると思料して条例違反で起訴したところ、公判段階において対償の供与又はその約束が明らかとなった場合には、条例の効力は失われており、かつ知情性の立証もできないことから、本法、本条例のいずれによっても処罰されず、無罪となるという結果になりかねないことになり、これを利用した被告人が対償の供与又はその約束があったとして条例が適用されるべきでないと主張する事態も考えられる。
 そして、対償の供与又はその約束がなかったと立証するのが極めて困難であることからすると、ひいては、買春行為者の被害児童の年齢に関する認識について証拠が不十分な場合は、本法、本条例のいずれによっても起訴することができないという結果も生じかねない。
出典:島戸純「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」 研修652号(H14.11)
 
 第1の考え方はさすがに非常識だということで、実は児童買春であっても年齢の知情が怪しい場合には、「対償供与(約束)」がなかったことにして、青少年条例違反で有罪にするという実務(第2の考え方)が行われていた。筆者も弁護人として経験した。
 
 しかし、最近になって、「青少年に対するみだらな性行為等を禁止し、これに違反した者を処罰することとした条例のいわゆる淫行処罰規定は、児童買春・児童ポルノ等処罰法の施行によって、児童買春に該当する行為に係る部分についてのみ効力を失った」と明言する判例が現れた。
 
東京高裁平成24年7月17日
理由
 本件控訴の趣意は、弁護人奥村徹作成の控訴趣意書(添付資料を除く。)及び控訴趣意補充書各記載のとおりであるから、これらを引用する。
第1法令適用の誤りの論旨(控訴理由第1ないし第7)について
1 論旨は、要するに、
(1)児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童買春・児童ポルノ等処罰法」という。)の施行により、県青少年健全育成条例(以下、単に「条例」という。)の淫行処罰規定は当然に失効したにもかかわらず、原判示第1、第5、第7及び第11の各所為に対して条例を適用した点
(2)原判示第5の児童と被告人との間には対償供与の約束があったのであるから、条例を適用する余地がないにもかかわらず、同第5の所為に対して条例を適用した点
(3)原判示第5の所為は「みだらな性行為」に当たらないにもかかわらず、それに当たるとした点、・・・で、原判決には法令適用の誤りがある、というのである。
 
そこで検討すると原判決に所論のような法令適用の誤りは認められない。
以下、順次説明する。
(1)原判示第1、第5、第7及び第11の各所為に対して条例を適用した点について
 所論は、18歳未満の者との性行為については、国法である児童買春・児童ポルノ等処罰法のみで全国一律に有償の場合のみを規制する趣旨であるとして、同法の施行により条例の淫行処罰規定は当然に失効しかと主張する。
 
 そこで検討すると、
 児童買春・児童ポルノ等処罰法が、対償を伴う児童との性交等のみを児童買春として処罰することとし、
 対償を伴わない児童との性交等を規律する明文の規定を置いていないのは、
 後者につき、いかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であるとは解されず、
 それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解される。
 そうすると、
 青少年に対するみだらな性行為等を禁止し、これに違反した者を処罰することとした条例35条1項、53条のいわゆる
 淫行処罰規定は、児童買春・児童ポルノ等処罰法の施行によって、児童買春に該当する行為に係る部分についてのみ効力を失ったが、それ以外の部分については、なお効力を有するものと解される(平成11年法律第52号附則2条1項参照)。
 したがって、児童買春に該当しない原判示第1、第5、第7及び第11の各所為に対して原判決が上記条例の規定を適用したことに誤りはない。
所論は採用できない。
 この判例によれば「青少年に対するみだらな性行為等を禁止し、これに違反した者を処罰することとした条例のいわゆる
 淫行処罰規定は、児童買春・児童ポルノ等処罰法の施行によって、児童買春に該当する行為に係る部分についてのみ効力を失った」というのだから、
 児童買春行為があれば、年齢を知らなかった場合にも児童買春罪のみが適用され(年齢知情条項を含めて)青少年条例は適用されないことになる。
 ここで、判例も「被害児童の年齢についての認識がない場合は,本法の規制が及ばない結果,対償の供与又はその約束を伴う場合であっても,条例による処罰の対象となる。」という見解をとらずに、
 児童・青少年と淫行したときに、
 「対償供与(の約束)はありましたが、
 18歳未満とは知りませんでした」
という場合には、
 青少年条例違反罪にも児童買春罪にもならないという結論に達したのである。
 
 児童ポルノ・児童買春法以前には処罰されていた行為(過失の買春行為)が処罰されなくなるのかは理解不能である。
 制定当時の国会での議論で、年齢知情条項に関するものは、この程度である。
 
第145国会衆議院法務委員会平成11年05月14日
○木島委員 
では、一点だけ聞きましょうか。この条例と本法との整合性の問題について御答弁願いたい。
○吉川(春)参議院議員 神奈川県条例の三十七条七項は、確かに本法の四条についても年齢の不知は許さない、こういう立場をとったと思います。今度この法案ができましても、確かにこの部分はまだ処罰として条例としては残るわけです。それは県の条例ですので、県の御判断によって、この法律との整合性のために条例の改正という手続をおとりになるのかあるいはそのまま残されるのかは県の判断だと思いますけれども、私は、立法政策として一つの方法であるということは認めたいと思います。
○木島委員 では、もう一点だけちょっと聞かせてください。
本法の附則二条、先ほど同僚委員も指摘しておりましたが、「地方公共団体の条例の規定で、この法律で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うものとする。」と。そこで一点聞きます。この法律が成立して発効すると、せっかくのすばらしい神奈川県条例の三十七条七項、年齢の不知は許さないというこの規定の効力はどうなってしまうのでしょうか。これはつぶされてしまうのでしょうか、生き残るのでしょうか。それだけはちょっと発議者、答弁してください。
○吉川(春)参議院議員 ですから、この法律と重なる部分は効力を失うけれども、それからはみ出す部分については当然残るのであって、それをどうするかについては各地方公共団体の御判断である、この立場でございます。
 提案者の1人である吉川(春)参議院議員は「はみ出す部分については当然残るのであって、それをどうするかについては各地方公共団体の御判断である」と言って、あたかも過失の児童買春行為については自治体の判断として青少年条例の淫行処罰規定と年齢知情条項が適用可能であるかのように答弁したのだが、
附 則
(条例との関係)
 
第二条  
1 地方公共団体の条例の規定で、この法律で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うものとする。
 
という規定がある以上、
 法律の解釈論として、
 児童買春行為については、条例は無効になり、年齢知情条項も適用されないことになったのである。
 
 立法者の無知は当然として、裁判所も取り繕いような無いほどの瑕疵であったということで、至急法改正して穴を埋める必要がある。
 
児童ポルノ・児童買春法に関しては、とかく、このような立法ミスが多いのである。
 
 
児童福祉法六O条三項の規定の法的性格
1 六O条三項の規定の法的性格については実体法的性格及び訴訟法的性格の両面において、解釈の分かれるところである。
大別すると、次の三説がある。
 
@ 年齢認識の点についても故意の内容となり、ただ、年齢認識についての立証責任を転換した規定であるとする説〔故意犯・立証責任転換説〕(注
その趣旨は、推測するに、次のようなものではないかと思われる。すなわち、「人の年齢は、戸籍等を調査確認しなくとも外見等からだけでも、ある程度の推測はできる。しかし、個々人によって精神的身体的発達の程度は異なるから、実際は一八歳未満であるのに、外見等からはとても一八歳未満には見えないということも、十分にあり得る。そうすると、逆に、戸籍等を調査確認しなかった以上は未必の故意を認定できるということにもなってきかねない。しかし、これでは未必の故意を広くとらえすぎることになって不当である。そこで、過失との分岐点を「一八(一五)歳以上であると誤認するのも無理もない事情」(注二)の有無に置き、」のような事情がない場合に未必の故意を認定できるとするのが相当である。しかるに、このような事情の不存在を検察官に立証させるのではなく、その存在の立証責任を被告人に負担させたのが、この規定である。」と。
 
A
故意犯と過失犯の複合的構成要件を規定するものであり、過失の立証責任を転換した規定でもあるとする説〔過失犯・立証責任転換説〕(注三)
 
B
年齢認識を主観的構成要件としないことを明らかにするとともに、年齢誤認に過失のないことを犯罪成立阻却事由としたものとする説(解釈補充規定説〕(注四)
この説は、犯罪成立阻却事由の立証については、事実上の立証責任は格別、最終的には、他の犯罪成立阻却事由の場合と同様、その不存在について検察官が立証責任を負うとする。
2
右の各説の相違は、単に法的な説明の仕方にあるにすぎず、実際の適用に当たっては差異は生じないといえるかも知れないが、ここから遡って合目的的にどのような者を「児童を使用する者」としてとらえるのが相当かを考える場合、どの説に立っかによってニュアンスが異なってくるようにも思われる。すなわち、@説からは、年齢を容易に知り得る立場にある者が、A説からは、年齢を調査確認することが社会的に要請され、その反面で、調査確認しなかったことによって年齢を誤認した場合に、故意がある場合と同様の非難を受けてもやむを得ない者が、
B説からは、その者がした禁止行為は年齢の不知(誤認)にもかかわらず原則として処罰相当なものとして構成要件該当性が肯定されるだけの違法性の実質をもつこと、が想定される。
 
.奥村 徹
 理屈はともかく、使用する者は過失でも処罰されるというので、「使用する」が大問題なんですが、青少年条例では、使用もしないのに、過失でも処罰されるんですよ。そっちを説明して欲しいんですが
 
 
奥村 徹
弁護士・大阪弁護士会
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(国民の国外犯)
第十条  第四条から第六条まで、第七条第一項から第五項まで並びに第八条第一項及び第三項(同条第一項に係る部分に限る。)の罪は、刑法 (明治四十年法律第四十五号)第三条 の例に従う。
 
(両罰規定)
第十一条  法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第五条から第七条までの罪を犯したときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
 
(捜査及び公判における配慮等)
第十二条  第四条から第八条までの罪に係る事件の捜査及び公判に職務上関係のある者(次項において「職務関係者」という。)は、その職務を行うに当たり、児童の人権及び特性に配慮するとともに、その名誉及び尊厳を害しないよう注意しなければならない。
2  国及び地方公共団体は、職務関係者に対し、児童の人権、特性等に関する理解を深めるための訓練及び啓発を行うよう努めるものとする。
 
(記事等の掲載等の禁止)
第十三条  第四条から第八条までの罪に係る事件に係る児童については、その氏名、年齢、職業、就学する学校の名称、住居、容貌等により当該児童が当該事件に係る者であることを推知することができるような記事若しくは写真又は放送番組を、新聞紙その他の出版物に掲載し、又は放送してはならない。
 
(教育、啓発及び調査研究)
第十四条  国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの提供等の行為が児童の心身の成長に重大な影響を与えるものであることにかんがみ、これらの行為を未然に防止することができるよう、児童の権利に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。
2  国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの提供等の行為の防止に資する調査研究の推進に努めるものとする。
 
(心身に有害な影響を受けた児童の保護)
第十五条  関係行政機関は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。
2  関係行政機関は、前項の措置を講ずる場合において、同項の児童の保護のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。
 
(心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制の整備)
第十六条  国及び地方公共団体は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童について専門的知識に基づく保護を適切に行うことができるよう、これらの児童の保護に関する調査研究の推進、これらの児童の保護を行う者の資質の向上、これらの児童が緊急に保護を必要とする場合における関係機関の連携協力体制の強化、これらの児童の保護を行う民間の団体との連携協力体制の整備等必要な体制の整備に努めるものとする。
 
(国際協力の推進)
第十七条  国は、第四条から第八条までの罪に係る行為の防止及び事件の適正かつ迅速な捜査のため、国際的な緊密な連携の確保、国際的な調査研究の推進その他の国際協力の推進に努めるものとする。
 
   附 則 抄
 
 
(施行期日)
第一条  この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
 
(条例との関係)
第二条  地方公共団体の条例の規定で、この法律で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うものとする。
2  前項の規定により条例の規定がその効力を失う場合において、当該地方公共団体が条例で別段の定めをしないときは、その失効前にした違反行為の処罰については、その失効後も、なお従前の例による。
 
(検討)
第六条  児童買春及び児童ポルノの規制その他の児童を性的搾取及び性的虐待から守るための制度については、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行状況、児童の権利の擁護に関する国際的動向等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。
 
   附 則 (平成一六年六月一八日法律第一〇六号) 抄
 
 
(施行期日)
第一条  この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。
 
(検討)
第二条  児童買春及び児童ポルノの規制その他の児童を性的搾取及び性的虐待から守るための制度については、この法律の施行後三年を目途として、この法律による改正後の児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の施行状況、児童の権利の擁護に関する国際的動向等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。
 
   附 則 (平成二三年六月二四日法律第七四号) 抄
 
 
(施行期日)
第一条  この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。