論点解説
 
「公衆に著しく迷惑をかける
    暴力的不良行為等の防止に関する条例」
 
               大阪弁護士会 所属
弁護士 服 部 廣 志
(執筆中)
 
 この迷惑防止条例に関する検察及び裁判所の一部の処理は、杜撰です。
 
執筆途中ですので、勘違いや、錯覚による誤りもあります!!   執筆を継続しながら、誤りは正していきます!!
訂正加筆など,,,28/11・23/8
 
前注意書
 
 都道府県のこの種類の条例は、都道府県ごとに若干異なっていることから、注意をして、各都道府県の条例の文言を検討する必要がある。
 大阪の条例と他府県の条例では、同じ文言を使用していたとしても、例示文言の差異等により、解釈も異なることがあり得る。
 本レポートは、迷惑防止条例の解釈、運用において、問題となりうる点の論点解説書である。従って、解釈、運用上、さほど問題とならない部分についての解説は割愛している。
 
都道府県の迷惑防止条例
http://www.zunou.gr.jp/meiwaku/zenkokumeiwaku.htm
 
 以下は、原則として大阪府の条例に関する記載ですが、他府県関連の記載の場合には、その旨の特記をします。
 また、引用裁判例は、迷惑防止条例に関するものではないものもありますので、注意して下さい。
 
凡例
○○○○・・・・・・軽解説
○○○○・・・・・・101問
 
目次
・論点0−−−−公衆
・論点1−−−−公共の場所
・論点2−−−−盗撮行為
・論点2の2−−盗撮 正面からの規制条例??
・論点2の3−−盗撮と強制わいせつ罪
・論点2の4−−盗撮と週刊誌
・論点3−−−−自動盗撮機器設置行為
・論点3の2−−盗撮と罰金額
・論点4−−−−盗撮防止についての改正法令案
・論点5−−−−構成要件の限定的解釈−チケット販売、金券ショップ
 
・番外1−−−−撮影されない自由
 
・論点6−−−−「卑わいな言動」
・論点6−3−−−「のぞき見る」行為
 
 
 
大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
              昭和37年12月24日大阪府条例第44号
                       (平13条例85・改称)
 
(目的)
第一条 この条例は、
    公衆に 著しく迷惑をかける  暴力的不良行為等を
    防止し、
もって
    府民及び滞在者の
    平穏な生活を保持することを
    目的とする。
(平一三条例八五・一部改正)
 
一 本条例の目的は
  「平穏な生活の保持」にある。
 
二 その目的達成のために 
1 公衆(社会一般の人々、不特定多数の人々)に
2 著しく 迷惑をかける
3 暴力的不良行為等を 防止する。
 
論点0−「公衆」の意味
 
・ 迷惑条例の構成要件には「公衆」という用語が使用されていることから、その意味を確定しておく必要がある。
 
・ この「公衆」という用法は、迷惑防止条例以外に、軽犯罪法においても使用されており、同法の解釈としては、概ね、「不特定又は多数人」という考え方(A説)と「特定、不特定を問わず、多数人」という考え方(B説)がある(軽解説79−80頁)
 
・ 迷惑防止条例の場合、公衆概念をどのように理解するのかということによって、構成要件に該当する行為の範囲が異なってくる。そして、この「公衆」概念については、迷惑防止条例2条等に記載されている、犯罪行為場所としての、「公共の場所」をどのように理解するのかということと密接に関連している。
 
・ 広辞苑によれば、公衆とは「社会一般の人々」、「社会学で、広い地域に散在する人々の間接的接触によって成立する非組織的な集団」と定義づけされている。
  そして、後記「公共の場所」の概念の検討内容をも総合すれば、公衆とは「不特定の人々」という意味(五右衛門説)と解釈するのが正当である。
 
・ 「公衆」と異なる「公然」概念
  大阪高等裁判所判決昭和30年6月10日
   刑法174条所定の「公然」概念
  公然とは不特定又は多数人の認識し得べき状態を云うのであつて、必ずしも現に不特定又は多数人に認識せられることを要しないのである。従つて、特定の少数人のみの認識し得る状態においては原則として公然とは云い得ないのであるが、もしそれが現に特定の少数人が認識し得るにすぎない状態にあるにせよ、偶発的に行われたものではなく一定の計画の下に反覆する意図をもつて不特定人を引入れこれを観客として反覆せられる可能性のあるときは上記の趣意から見て、不特定又は多数人の認識し得べき状態であると解すべきであり、従つてこの場合には公然性を具有するに至るものとしなければならないのである。
 
 「行為対象」を表しているのか、「行為状態、行為状況」を表しているのかという差異なのか。
 
 
三 
1 刑法と異なり、公衆(社会一般の人々、不特定多数の人々)という、漠然とした、個人の集合体に向けられた
  暴力的不良行為等を防止する
とともに
  刑法、軽犯罪法と異なった態様の個人に向けられた暴力的不良行為等をも禁止する。
 
 
2 刑事法の通説といわれる法益三分説(国家的法益、社会的法益、個人的法益に三分類する考え方)に従って、考えれば、「社会的法益及び個人的法益に関する犯罪」ということになる。
 
 
(乗車券等の不当な売買行為(ダフヤ行為)の禁止)
第二条 何人も、
    乗車券、急行券、指定券、寝台券その他
    公共の運送機関を利用し得る権利を証する物
    又は
    入場券、観覧券その他公共の娯楽施設を利用し得る権利を証する物
 
(以下「乗車券等」という。)を
    不特定の者に転売し、
    又は
    不特定の者に転売する目的を有する者に交付する
   ため、
 
一 乗車券等を、「不特定の者に転売し、又は 不特定の者に転売する目的を有する者に交付する ため」という目的が要求されており、一種の目的犯とされている。
 
  上記のような目的をもって、下記に記載するような行為がなされることが必要とされており、刑事法の多数説に従えば、このような目的は主観的構成要件要素とされていることから、この目的がない場合には、行為は違法ではなく、ダフヤ行為の構成要件にも該当しないこととなる。
 
次に掲げる行為をしてはならない。
 
一 乗車券等を、
  公衆に発売する場所において、
   買い、
   又は
   公衆の列に加わって買おうとすること。
 
二 前号に掲げるもののほか、
  乗車券等を、
  道路、公園、広場、駅、空港、埠ふ頭、興行場、飲食店その他の
  公衆が出入りすることができる場所
(以下「公共の場所」という。)
  又は
  汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の
  公衆が利用することができる乗物
(以下「公共の乗物」という。)
  において、
  買い、又は人を勧誘して買おうとすること。
 
二 禁止行為として、
イ 乗車券等を
ロ 公衆に発売する場所で
ハ 買い、又は 公衆の列に加わって買おうとする行為
 
イ 乗車券等を
ロ 公共の場所又は公共の乗物において
ハ 買い、又は 人を勧誘して買おうとする行為
 
論点1−「公共の場所」
 
(1) 本来、「公共の場所」とは、「国、地方公共団体又はそれに準じる団体が、当該土地の所有権を有するか、又は使用する権利を有し、それらの保有する権利を行使して、当該土地を『不特定の社会一般の人々』に対し、自由に出入りできる場所として、提供している場所」を意味する。
 
    その出入りについて、有償である場合と無償である場合とを問わない。
    要するに、「不特定の社会一般の人々」に、その「立ち入りを容認している場所」ということとなる。
 
    しかしながら、条例が示す公共の場所の例示は「道路、公園、広場、駅、空港、埠ふ頭、興行場、飲食店その他の公衆が出入りすることができる場所」とされており、上記のような、本来的な意味での「公共の場所」以外の場所をも含むと規定している。
 
    「駅、空港興行場、飲食店」をも含むということとなると、当該土地の所有権ないし使用権が、国、地方公共団体又はそれに準じる団体が保有しているものに限られないこととなり、私人が所有ないし使用権を保有している場所をも含むこととなり、主たる判断基準は、「不特定の、公衆の出入りを容認しているか否か」ということとなる。
 
     本来的な意味での「公共の場所」以外に、「公共の場所」に準じるような「不特定の、公衆の出入りを容認している場所」ということとなる。
 
     なお、本条例が、
     1 公衆(社会一般の人々)に
     2 著しく 迷惑をかける
     1 暴力的不良行為等を 防止する
という趣旨のものであることを考慮すると、本条に言う「公共の場所」とは、「現に不特定の人、公衆の出入りを容認している場所」を意味し、本来、このような場所に該当する場所であっても、例えば「閉館中」というように、「現に不特定の、公衆の出入りを容認していない場所」は含まないと解釈すべきである。
 
 後記裁判例の説示等を見ると、公共の場所について「現実に一般に開放され、不特定多数の人が自由に出入し、利用できる場所」という表現が用いられ、「不特定又は多数」ないし「不特定かつ多数」を意味する表現が用いられている。
 
 しかしながら、上記条例の例示にあるように、公園、埠ふ頭、飲食店等を含み、それらの場所について、現に「多数の人が存在すること」は要求されていない。少人数しか立ち入れないような飲食店、殆ど人が乗降しないような駅等も含み、また、現実に、誰も立ち入らないような場所に設けられた公園、広場等をも含むのである。
決して、「多数の人が立ち入る」場所であることは求められていない。求められているのは「不特定の人が立ち入り場所」であるか否かである。
 従って、公共の場所か否かの判定基準は、「多数の人」というような「数の要素」はなく、「不特定の、公衆の出入りを容認している場所」であるか否かということとなる。
 
 裁判例等は、刑事法における「公然概念」の学説の一つを安易に借用しているものであって不当である。刑事法における「公然概念」の多数説では「不特定である場合には、多数であることは要件ではない」とされている。
 迷惑防止条例の場合には、「特定、不特定」の要素が重要であり、「数の要素」は必要ないと考えるべきである。
 
(広島県・集団示威運動・集団行進及び集会に関する条例−関連−「公共の場所」)
 最高裁は、広島県・集団示威運動・集団行進及び集会に関する条例記載の「公共の場所」について、下記のとおり判決している。
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最高裁判所昭和45年 7月16日第一小法廷判決
 昭和三六年広島県条例第一三号集団示威運動・集団行進及び集会に関する条例違反被告事件
「検察官の事件受理申立理由について。
 本件集団示威運動等は、共同の意思、主張を有する多数の者が集団の気勢を示して、集団外の一般不特定多数の公衆に集団の意思、主張を訴えるために行なわれるものであるから、公権によるその規制は、一面憲法の保障する国民の集会、表現の自由を害しないように図るとともに、他面公共の安全を保ち秩序を維持するために行なわれなければならない。昭和三六年広島県条例第一三号集団示威運動、集団行進及び集会に関する条例も、右目的のために制定されたもので、同条例が集団示威運動等の規制を受けるべき場所を「道路、公園、広場その他屋外の公共の場所」としたのも、これらの場所は、集団示威運動等が有効にその意図する目的を達し得る場所であると同時に、反面集団示威運動等によって、公共の安全と秩序が危険にさらされるおそれのある場所であるからである。してみれば、同条例四条で集団示威運動等を行なおうとする場合に、あらかじめ、公安委員会の許可を受けなければならないとされた、同条にいわゆる「屋外の公共の場所」とは、そこにおいて集団示威運動等が行なわれると、公共の安全と秩序に対し危険が及ぶおそれのあるような、道路、公園、広場にも比すべき場所、すなわち、現実に一般に開放され、不特定多数の人が自由に出入し、利用できる場所を指すものと解すべきであって、一般公衆の使用に供することを、本来の、もしくは直接の目的として設けられた場所であることを要しないし、また、その場所が、官公庁の用に供され、官公庁の庁舎および構内管理権の及ぶ公用の場所であることも、同条にいう「公共の場所」であるとすることの妨げとなるものではない。 その場所が官公庁の公用の場所であって、一般公衆の使用に供することを本来の目的として設けられた公共用の場所ではなくても、公用に供すると同時に、現実に不特定多数の人の自由な出入を許し、一般公衆の利用するにまかせているという状況が存在するかぎりは、その場所における集団示威運動等は、公共の安全と秩序に対し危険を及ぼすおそれがあるから、これを取り締まる必要があり、したがって、このような場所は、前記条例四条にいう「公共の場所」にあたるものと解すべきである。
 
 しかるに、原判決は、本件広島県庁正面玄関前構内が右条例にいう「屋外の公共の場所」にあたるかどうかを検討して、広島県庁構内敷地について、「同敷地は、道路から截然と区別されて庁舎管理権者の庁舎管理権の及ぶ範囲を特定していることが明瞭である。なるほど、前記のごとく右官公庁の職員は勿論右官公庁利用者のため正面出入口のほか周囲に狭い出入口を設けてそこから出入し通行することを許してはいるが、それは一般の道路、公園、広場などと同様敷地内にある前記官公庁を利用する必要のない一般公衆の使用にも併せて供することを直接の目的として設けられているものではなく、仮に右のような一般公衆が使用しているとしても、右は単に管理者から黙認されているに過ぎないものというべきである。しかして本件県庁正面玄関前構内も県庁自体の用、すなわち県庁職員及び県庁を利用する者の使用に供することを目的として設けられたものであり、公共の場所ではなく、公用の場所であると解する。」とし、「叙上説示したとおりであるから本件広島県庁構内の通路は、集団運動について公安委員会の許可を必要とする本件条例第四条にいう道路ではなく、また、本件県庁正面玄関前構内広場も本件条例の定める公共の場所たる広場ではない。」と判断しているのである。
 
 しかし、広島県庁構内が同県庁等の公用の場所であり、一般公衆の利用を本来の目的とする公共用の場所でないとしても、その場所が、現実に不特定多数の人が自由に出入し、利用できる状況にあれば、前記条例四条にいう「公共の場所」にあたるといいうること前記のとおりであるから、原判決の右判示が、右場所は公用の場所であり、公共用の場所でないことを理由に、前記条例四条にいう「公共の場所」にあたらないとしたものとすれば、原判決は右条例の解釈適用を誤ったものである。
 
 また、もし原判決の右判示が、前記構内広場が不特定多数の人が自由に出入し利用できる場所ではないことを判示したものとすれば、原判決がその前提として、前記広島県庁敷地内の状況について認定したところは、「広島県庁は、東西の長さ二〇〇メートル、南北の長さ二〇〇メートルの正方形の敷地内の中央部に位置し、中庭を挾んで北側に本館、南側に南館が東西に長くコの字型に建設されており、右建物の西端に右本館と南館とに接続する玄関ホールがあり、同ホールの西側前面が玄関となっている。右敷地内の北西側に広島県議会議事堂、東北側に自治会館、同県庁南館の南側に広島県公共職業安定所、その東側に広島県税事務所の建物があって、前記敷地の周囲は、西側正面には高さ〇・五メートル、幅三・八メートルの石垣で囲んだフラワーベッドの上に一・一メートル位の潅木を植えこみ、その他にはおおむね高さ四五センチメートル位の土台を繞らし、該土台上には潅木を植えこんで生垣とし、外側道路と判然と区画し、その区画内は一見して前記県庁その他の官公庁の敷地であることが判別できる状態である。同敷地西側の鯉城通りの道路に面して中央に幅二八・八五メートルの出入口があり、高さ一・四メートル位の門柱が建てられて広島県庁の標識が施され、その他の西、北、南、東側にも数ケ所出入口があり、右敷地内にある官公庁の職員及びその利用者のため出入できるように通路が設けられてその利用に供していることが認められる。」との事実だけであって、右県庁敷地の正面出入口である鯉城通りの道路に面する出入口についても、その幅は二八・八五メートルもある広いものであるというのに、そこには一・四メートルの門柱があり広島県庁の標識が施されているとするのみで、そこに門扉または守衛所のようなものが存在し、一般人の出入を一応は規制しうる設備をそなえているかどうかを明確にしていないばかりでなく、右県庁構内の現実の利用状況については何ら確定していないのである。してみれば、本件広島県庁正面玄関前構内が、不特定多数の人が自由に出入し、利用できる場所といえるかどうかを決定できないものといわなければならない。しかるに原判決が、その確定した前記事実から、直ちに、前記広島県庁正面玄関前構内広場は、官公庁職員および官公庁を利用する者の通行だけを許し、一般公衆の通行は黙認されているに過ぎず、不特定多数の人が自由に出入し利用しうる場所ではないとしたことは、審理不尽、理由不備の違法があるものというべきである。すなわち、原判決は、前記条例の解釈適用を誤った違法があるか、または、法律判断の前提である事実の認定について審理不尽の違法があるもので、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認める。」
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(宮崎県・迷惑防止条例−関連−「公共の場所」)
 2011年8月22日、都城区検が、「小学校教諭が夏休みの補習をしていた教室内で女子児童のスカートの中を盗撮した疑いで逮捕された事件」について、宮崎県迷惑防止条例違反の罪で略式起訴し、都城簡裁同日、罰金20万円の略式命令を出したという報道がなされているようであるが、 「夏休みの補習をしていた教室」は、上記のような「本来的な意味での公共の場所に準じるような不特定多数の人、公衆の出入りを容認している場所とはいえず、宮崎県の迷惑防止例上の「道路、公園、広場、駅、興行場その他の公共の場所」に該当するというのは無理がある。
 検察庁は条例違反で、略式処理する事案ということで、横着、かつ違法な処理をしているものと思っています。 
 
 上記問題点を意識し、京都府迷惑防止条例は、「公共の場所、公共の乗物」に加えて「公衆の目に触れるような場所」を改正、追加している。
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京都府迷惑行為防止条例−平成 2 6年3月第27号改正
第3条
 何人も、公共の場所、公共の乗物その他の公衆の目に触れるような場所において、前項に規定する方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
(1)みだりに、着衣で覆われている他人の下着等を撮影すること。
(2)みだりに、前号に掲げる行為をしようとして他人の着衣の中をのぞき込み、又は着衣の中が見える位置に写真機その他の撮影する機能を有する機器を差し出し、置く等をすること。
(3)みだりに、写真機等を使用して透視する方法により、着衣で覆われている他人の下着等の映像を撮影すること。
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大分県2018.03.25 朝日新聞
 盗撮規制を強化へ 県警が条例改正案、場所など広げる
 「不特定または多数の者が利用するような場所または乗り物」をくわえ、
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 公衆に著しい迷惑をかける行為の防止に関する条例宮崎県・改正平成21年12月18日条例第54号)
(卑わいな行為の禁止)
第2条
 何人も、道路、公園、広場、駅、興行場その他の公共の場所(以下「公共の場所」という。)又は電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物(以下「公共の乗物」という。)において、人に対し、卑わいで不安等又は著しいしゅう恥を覚えさせるような言動をしてはならない。
 
(宮崎県の場合、大阪と比較すると、例示文言が若干、異なり、少ない。)
 
論点2−盗撮行為
 
 本件のように、「教師が教室で盗撮をする」というようなことは条例の想定外の事象である。このような盗撮行為を処罰しようとするのなら、盗撮行為を禁止する法律、条例を制定すべきであり、迷惑防止条例での処罰を追求するのなら、盗撮行為についての場所的制限を廃止する必要がある。
 後記の軽犯罪法を改正して、場所的要件のない「盗撮」を加えるのもひとつの方法である。現在の軽犯罪法は昭和48年が最終改正日であり、現在のように携帯カメラがハンディとなり、これを使用した盗撮行為が頻発している状況に対応していないと考えられるからである。
 「衣服に覆われている女性の身体を、カメラ又はビデオ機器等を用いて、窃視して撮影してはならない」、、、、???
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・論点2の2−−盗撮 正面からの規制条例??
 
神奈川県迷惑防止条例・第3条(卑わい行為の禁止)の要約、修正版
 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しく羞(しゆう) 恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、写真機を使用して、人の身体(これらのうち衣服等で覆われている部分に限る)の映像を記録してはならない。
 
 この神奈川県迷惑防止条例は、「人を著しく羞(しゆう) 恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、写真機を使用して、衣服等で覆われている人の身体の映像を記録してはならない」という趣旨の規制である。
 
 平成23年12月15日、「神奈川県警大和署は14日、電車内で女子高生の太ももをスマートフォン(多機能携帯電話)で撮影したとして、県迷惑防止条例違反の疑いで、横浜市青葉区の日本大2年、平野巧也容疑者(22)を現行犯逮捕した」との報道がなされているが、どのような形態の撮影行為であったのか??
 
 女子高校生が座席に座っているのを、特別なアングルを使用せずに写真撮影したという場合であれば、たまたま、女子高校生がミニスカートを着用していたため、その太股が撮影されたという場合、最高裁昭和44年12月24日大法廷判決のいう「みだりに撮影されない自由」を侵害していることにはなるものの、これが直ちに条例その他の刑罰法令に抵触するわけではないはずである。
 ということは、特別なアングルを使用したか否か、また、そのアングルを利用することにより、その撮影対象者の着衣の形態上、見えにくい部分、太股部分を、撮影できていたとしたら、、、該当することとなるのか??
 微妙な問題でもある。撮影対象の女性がミニスカートを着用していた場合、微妙な問題である。
 「人を著しく羞(しゆう) 恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法」という構成要件要素を加味して考えれば、「特別なアングルを利用」し、かつ、「通常 衣服等で覆われている人の身体部分に焦点を会わせて撮影する」という撮影行為が該当することとなるか、、、??!!
 このような2要件を、条例解釈要件として要求すれば、具体的妥当性は確保されるか?
 
                          
 他府県条例の場合の多くは「卑わいで不安等又は著しいしゅう恥を覚えさせるような言動」というような構成要件の定め方になっており、このような構成要件は上記神奈川県条例のような行為を含むと解釈できるのかがひとつの問題である。
 素直な日本語の語感からすれば、神奈川県条例のような写真撮影行為は含まないようにも思えるが(「含む」とする考え方も想定可能ではある)、都道府県警察は、このような問題意識を持たずに、その所属する都道府県条例を、適宜、適用して検挙しているように思える。
 
 
・論点2の3−−盗撮と強制わいせつ罪
 
 大阪の奥村弁護士に教えて貰ったところであるが、盗撮例について、強制わいせつ罪に該当するとする裁判例がある。
 例えば、
 奥村 徹 文献番号 25471443
 広島高等裁判所平成23年5月26日判決
 「被告人は、被害女児らに対し、医師として、予防接種の診察を行い、その診察行為の一環として、各被害女児の着衣をずらして乳房を露出させた際、同意を得ることなく、小型カメラで、乳房を露出した状態の場面を含めて各被害女児をビデオ撮影し、内臓のマイクロSDカードに記録した等として強制わいせつ罪、児童ポルノ製造罪等で起訴された事案の控訴審で、被告人の行為は正当行為であるという主張に対し、そもそも、診察中であっても、被告人の盗撮行為が診察行為に当らないことは明白であり、診療上の必要もないのに、乳房を露出させた状態の各被害女児を盗撮する行為が、各被害女児の性的自由及び性的感情を侵害するものであることは論ずるまでもなく、被告人の行為が強制わいせつ罪に当ることは明らかである」
 
 奥村 徹 秋田地裁H231226
 「被告人は
第1 医師として病院において,患者の診察に当たっていたものであるが
1 平成23年4月16日午後3時41分ころ,同病院救急処置室において,患者の山田花子(当時4歳)が13歳未満であることを知りながら,同人の診察をした際,同人に対し,その着衣をずらして乳房を露出させた姿態をとらせ,これを左手首に着用した動画撮影機能付き腕時計で録画撮影
し,同日午後7時34分ころ,被告人方居室において,その動画のデータを前記腕時計に内蔵された記録媒体等を経由してパーソナルコンビュータに内蔵のハードディスクに記憶させて蔵置し
・・・
もって,それぞれ13歳未満の女児に対し,わいせつな行為をするとともに,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識できる方法により描写した児童ポルノを製造した」
 
 これら、強制わいせつ罪に該当するとした裁判例は、いずれも「乳房を露出した姿態」を盗撮したというように、通常、いわれる盗撮例である、「窃視して撮影」という類型を越えた行為とも考えられることから、盗撮防止のための法整備の必要性は、盗撮の一類型が強制わいせつ罪に該当するとしても変わらないものと考えられる。
 
論点2の4−−盗撮と週刊誌
 週刊誌の女子アナ“パンチラ写真”掲載は、なぜ許される?違法ではない?
http://biz-journal.jp/2015/08/post_10945_2.html
(1)「公共の場所」での撮影ではないため
(2)撮影される側の承諾があると考えられるため
(3)撮影行為にわいせつ性が認められないため
の3つが、法的に考えられる理由になるという。
 
論点2の5−−盗撮とハメ撮り
 
 大阪奥村弁護士によると
  はめ撮り盗撮で、ひそかに製造罪になってるのがあったが、姿態をとらせて製造罪が正解とのこと
 
5 前二項に規定するもののほか、
 ひそかに
 第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
6 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 電気通信回線を通じて
 第二条第三項各号のいずれかに掲げる
 児童の姿態を
 視覚により認識することができる方法により描写した情報を
 記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
 
 
 
論点3−自動盗撮機器設置行為
 
 なお、時々報道されているような「女子トイレにカメラないしビデオ機器等を設置して行う盗撮行為」の処罰はどうなるのだろうか??
 
 これらの場所を直接窃視する行為は軽犯罪法の23号行為に該当する。
 また、当該トイレが後記の公衆便所に該当する場合には迷惑条例6条に該当することとなる。
 また、カメラないしビデオ機器等を直接操作して見て盗撮する行為は「ひそかにのぞき見る行為」と言える。
 
 しかしながら、カメラないしビデオ機器等を設置して、これらの機器等により自動的に盗撮する行為は「ひそかにのぞき見る行為」とは言えない。「見ながら盗撮する行為」と「自動的に盗撮する行為」とでは、前者には「人が見るという行為」が存在するが、後者には「人が見るという行為」が存在しないという決定的な差異があるからである。
 法益侵害の程度は、窃視も盗撮も同じようなものとも考えられるが(盗撮の方がプライバシー侵害、法益侵害性は強いという考え方もある)、罪刑法定主義の観点からは「ひそかにのぞき見る行為」と「ひそかにカメラないしビデオ機器等を設置して自動的に行う盗撮行為」とは異なるものであると言わざるをえない。
 住居侵入等の手段行為を、住居侵入の罪に問うことは可能ではあるが、、、、、。
 
軽犯罪法23号
 正当な理由がなくて、人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
 
 なお、「ビデオカメラを用いて便所内の女性の姿態等を、盗み取りする行為ものぞき見るに当たり、その撮影内容を見ていなくても録画した時点で既遂に達する」(軽解説160頁)と解説されているものもある。
 この解説が、前記のように、「見ながら盗撮する行為」と「自動的に盗撮する行為」とを区別して論じているのかは定かではないが、「撮影内容を見ていなくても録画した時点で既遂に達する」という論述からすると、前記のような区別はされていないようにおもわれる。なぜなら、「見ながら盗撮する行為」は撮影内容を撮影しながら見ているからである。
 前記のような区別をしていないという意味で、この論述は適当ではないこととなる。
 
・論点3の2−−盗撮と罰金額
 
 盗撮と一口に言っても様々な態様、動機があり得る。
 しかし、まぁ、、、特段の事情がない限り、10万円くらいが実務なのか、、、??
 
・2018年6月14日 21時05分阪神元選手 盗撮で略式命令 仙台簡裁
 仙台市で女性のスカートの中を盗撮したとして、プロ野球・阪神タイガースの元選手が県の迷惑行為防止条例違反の罪で略式起訴され、仙台簡易裁判所から罰金50万円の略式命令を受けました。
 
・論点4−盗撮防止についての改正法令案
 
法改正をする場合
 「衣服に覆われている女性の身体をカメラ又はビデオ機器等を用いて窃視して撮影してはならず、また、正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をカメラ又はビデオ機器等を用いて撮影してはならない」、、、、というような条項を設ける必要がある???
 
 窃視とは、「特別なアングル、角度を利用して、覗き見る」という意味。
 
(2) その具体的な場所としては、・・・
 
 
 
2 何人も、
  転売する目的で得た
  乗車券等を、
  公共の場所又は公共の乗物において、
  不特定の者に、
    売り、
     又は
    人を勧誘して売ろうとしてはならない。
(昭五九条例五七・平一三条例八五・一部改正)
 
イ 転売する目的で得た
ロ 乗車券等を、
ハ 公共の場所又は公共の乗物において、
ニ 売り、又は 人を勧誘して売ろうとする行為
 
三 いわゆる「ダフ屋」を処罰する規定である。
 
1 条例制定趣旨
 
イ ダフ屋
  ウィキペディア「ダフ屋」の項には、「そもそもダフ屋行為が禁じられたのは、戦後の食糧難の時代において、配給チケットの買い占め行為を取り締まるのが目的だった。放置しておいてはそれによる餓死者が出る恐れがあったため、時代の要請として緊急に取り締まる必要があったのである。また、東京都で最初に迷惑防止条例が制定されダフ屋行為規制が盛り込まれた1962年当時は暴力団の資金源を絶つ目的の他、ダフ屋によるつきまといや押売りなどの不良行為が問題となっており、その排除が大きな目的の一つに挙げられていた(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%95%E5%B1%8B)」という記載がある。
  仮に、このウィキペディアの記載が正しいものであったとしたら、ダフ屋排除の規定は、本来的には、「国家的法益に関する罪」という側面をも有していたこととなり、そうであれば条例に委ねるのではなく、法律で規制すべきものであったのかもしれない。
 
ロ 現在においては「配給チケット」というものは存在しないことから国家的法益に関する罪という側面はないこととなり、さらに、法律ではなく、条例による規制であることからすれば「ダフ屋によるつきまといや押売りなどの不良行為」の防止その他の社会的法益に関する罪という側面を有する規制ということとなる。 
 
論点5−構成要件の限定的解釈−チケット販売、金券ショップ
 
2 構成要件の限定的解釈−チケット販売、金券ショップ
 
イ 「転売する目的で得た 乗車券等を、公共の場所において、売る」という構成要件は、全国に点在する「チケット販売、金券ショップ」による販売行為を含むこととなる。
  しかしながら、迷惑防止条例を有する都道府県の警察は、これらの「チケット販売、金券ショップ」を合法と考え、摘発した例はない。
 
ロ 前記1のロに記載したように、ダフ行為処罰の根拠がダフ屋によるつきまといや押売りなどの不良行為の防止であったとしたら、チケット販売店や金券ショップ店による販売行為は、「店舗を構えて、顧客が、その意思で、購入しに来店するのを待つ」という受け身の販売形態であり、ダフ行為とは異なった類型に属する行為であり、ダフ行為による弊害が生じない販売、購入業務態様であり、そのような業務態様の販売、購入業務態様のものは、前記構成要件に該当しないという限定的解釈も可能である。
 このような限定的解釈により、チケット販売店や金券ショップ店による販売行為等は不可罰ということとなる。
 従って、逆に、店舗を構えて販売等をしているチケット販売店や金券ショップ店が、その店員を店舗外にたたせて、積極的に販売ないし購入を勧誘する等の、いわゆるつきまとい行為等に及ぶ形で、業務を行うこととなれば、それは前記構成要件に該当し、処罰を免れないこととなる。 
 
ハ 限界事例について
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 上記図で、例えば、公共の場所である道路上のA地点で、「店舗を構えて販売等をしているチケット販売店や金券ショップ店が、その店員を店舗外にたたせて、積極的に販売ないし購入を勧誘する等の、いわゆるつきまとい行為等に及ぶ形で、業務を行った場合には、上記のように、本条例違反に該当することとなる。
 
 しかしながら、例えば、前同様の行為を、自ら運営する店舗敷地内のB地点で行わせ、道路等公共の場所で行わなかった場合には、本条違反に該当しないこととなる。「公共の場所その他公衆が出入りすることができる場所において」という場所に関する構成要件要素が欠落しているからである。
 
 
 
(続く)
 
(座席等の不当な供与行為(ショバヤ行為)の禁止)
第三条 何人も、
    不特定の者に対し、
    公共の場所又は公共の乗物において、
    これらにおける座席、座席を占めるための列の順位又は駐車の場所
(以下「座席等」という。)を
    占める便益を
    対価を得て供与し、又は座席等を占め、
若しくは
    人を勧誘して、
    座席等を占める便益を
    対価を得て供与しようとしてはならない。
(平一三条例八五・一部改正)
 
一 ショバヤ行為
 
1 こんな商売があるということを知らない人も多いと思われる。
2 一時、暴力団が資金源にしたことがあることから、暴力団による、このような行為の禁止を主眼としたものであるようだ。
 
 
(街頭等における景品買い行為の禁止)
第四条 何人も、
    風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号。以下「法」という。)第二十三条第一項に規定する
    営業の営業所又はその付近において、
    当該営業を営む者が客に賞品として交付した物品を
    転売し、又は転売する目的を有する者に交付するため、
    うろつき、又は人につきまとって、
    当該物品を買い、又は買おうとしてはならない。
(昭五九条例五七・平一三条例八五・平一四条例一〇六・一部改正)
 
一 営業所やその付近でうろつき、客につきまとって景品を買い集めたりする、客に不安感を覚えさせるような迷惑行為の禁止
 
 
 
(粗野又は乱暴な行為の禁止)
第五条 何人も、
    公共の場所又は公共の乗物において、
    多数でうろつき、又はたむろして、
    通行人、入場者、乗客等の公衆に対し、
    いいがかりをつけ、すごむ等
    不安を覚えさせるような言動をしてはならない。
 
 
 
 
 
2 何人も、
  祭礼又は興行その他の娯楽的催物に際し、
  多数の人が集まっている公共の場所において、
  正当な理由がないのに、
  人を押しのけ、物を投げ、物を破裂させる等により、
  その場所における混乱を
  誘発し、又は助長するような行為をしてはならない。
(平一三条例八五・平一四条例一〇六・一部改正)
 
 
(卑わいな行為の禁止)
第六条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
 
一 人を 
  著しくしゅう恥させ、
又は人に
  不安を覚えさせるような方法で、
  公共の場所又は公共の乗物において、
  衣服等の上から、又は直接
  人の身体に触れること。
 
一 痴漢行為の禁止
 
二 人を
  著しくしゅう恥させ、
又は人に
  不安を覚えさせるような方法で、
  公共の場所又は公共の乗物における
  衣服等で覆われている人の身体又は下着を
  見、又は撮影すること。
 
一 
 
三 みだりに、
  写真機等を使用して透かして見る方法により、
  公共の場所又は公共の乗物における
  衣服等で覆われている人の身体又は下着の映像を
  見、又は撮影すること。
 
一 盗撮、透視等の禁止
 
四 みだりに、
  公衆浴場、公衆便所、公衆が利用することができる更衣室その他
  公衆が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所における
  当該状態にある人の
  姿態を撮影すること。
 
五 前各号に掲げるもののほか、
  人に対し、
  公共の場所又は公共の乗物において、
  人を著しくしゅう恥させ、
又は
  人に不安を覚えさえるような
  卑わいな言動をすること。
(平一四条例一〇六・追加)
 
論点6−−−−「卑わいな言動」
 
一 包括的な構成要件要素である「卑わいな言動」について
 
1 「卑わい」とは、下記最高裁決定によれぱ、「社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作をいう」とされている。
 
(北海道・迷惑条例−関連−「卑わい」行為)
2 「ショッピングセンター1階の出入口付近から女性靴売場にかけて,女性客(当時27歳)に対し,その後を少なくとも約5分間,40m余りにわたって付けねらい,背後の約1ないし3mの距離から,右手に所持したデジタルカメラ機能付きの携帯電話を自己の腰部付近まで下げて,細身のズボンを着用した同女の臀部を同カメラでねらい,約11回これを撮影した」行為が、
 
 昭和40年北海道条例第34号所定の
  第2条の2「何人も,公共の場所又は公共の乗物にいる者に対し,正当な理由がないのに,著しくしゅう恥させ,又は不安を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならない。
   (1) 衣服等の上から,又は直接身体に触れること。
   (2) 衣服等で覆われている身体又は下着をのぞき見し,又は撮影すること。
   (3) 写真機等を使用して衣服等を透かして見る方法により,衣服等で覆われている身体又は下着の映像を見,又は撮影すること。
   (4) 前3号に掲げるもののほか,卑わいな言動をすること。
 
の「卑わいな言動」に該当するか否か、という点について、
 
 下記最高裁決定は「卑わいな言動に該当する」と決定している。
 但し、田原睦夫裁判官は詳細に分析をしたうえ、下記反対意見欄記載のとおり「卑わい行為に該当しない」との反対意見を述べている。
 
  微妙な問題であるが、一般論として、男性の性的欲求の対象とも言うべき「女性の臀部をカメラでねらい,約11回これを撮影する」という行為は、やはり、合理的かつ正当な理由がある場合を除き、行為それ自体、「性的な行為である」ことは否定できず、被写体とされた女性に対し「著しくしゅう恥させ,又は不安を覚えさせる」ものであることは否定できず、その行為の「卑わい性」は否定できないことから、多数意見が正当であり、田原睦夫裁判官の反対意見は、個別分析にとらわれ、大局的な視点を無視してしまったものと言わざるを得ないように思う(個別分析は、鋭いものがあり、極めて参考になるものの、個別に目を奪われ、大局を見失った典型例のように思える)。
 
(北海道・迷惑条例−関連−「卑わい」行為)
最高裁判所平成20年11月10日第三小法廷決定
「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例2条の2第1項(昭和40年北海道条例第34号)」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 弁護人古田渉の上告趣意のうち,憲法31条,39条違反をいう点については,公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和40年北海道条例第34号)2条の2第1項4号の
 「卑わいな言動」とは,社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作をいうと解され,
 同条1項柱書きの「公共の場所又は公共の乗物にいる者に対し,正当な理由がないのに,著しくしゅう恥させ,又は不安を覚えさせるような」と相まって,
 日常用語としてこれを合理的に解釈することが可能であり,
 所論のように不明確であるということはできないから,前提を欠き,その余は,単なる法令違反,事実誤認の主張であり,被告人本人の上告趣意は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 
 所論にかんがみ,職権で検討するに,原判決の認定及び記録によれば,本件の事実関係は,次のとおりである。
 すなわち,被告人は,正当な理由がないのに,平成18年7月21日午後7時ころ,旭川市内のショッピングセンター1階の出入口付近から女性靴売場にかけて,女性客(当時27歳)に対し,その後を少なくとも約5分間,40m余りにわたって付けねらい,背後の約1ないし3mの距離から,右手に所持したデジタルカメラ機能付きの携帯電話を自己の腰部付近まで下げて,細身のズボンを着用した同女の臀部を同カメラでねらい,約11回これを撮影した。
 
 以上のような事実関係によれば,被告人の本件撮影行為は,被害者がこれに気付いておらず,また,被害者の着用したズボンの上からされたものであったとしても,社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな動作であることは明らかであり,これを知ったときに被害者を著しくしゅう恥させ,被害者に不安を覚えさせるものといえるから,上記条例10条1項,2条の2第1項4号に当たるというべきである。これと同旨の原判断は相当である。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官田原睦夫の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
 
 裁判官田原睦夫の反対意見は,次のとおりである。
 
 私は,本件における被告人の行為は,本件条例2条の2(以下「本条」という。)1項4号の構成要件には該当せず,したがって,被告人は無罪であると思料する。
 
 1 本条は以下のとおり規定している。
   第2条の2「何人も,公共の場所又は公共の乗物にいる者に対し,正当な理由がないのに,著しくしゅう恥させ,又は不安を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならない。
   (1) 衣服等の上から,又は直接身体に触れること。
   (2) 衣服等で覆われている身体又は下着をのぞき見し,又は撮影すること。
   (3) 写真機等を使用して衣服等を透かして見る方法により,衣服等で覆われている身体又は下着の映像を見,又は撮影すること。
   (4) 前3号に掲げるもののほか,卑わいな言動をすること。
 
 2 何人も,公衆浴場,公衆便所,公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所における当該状態の人の姿態を,正当な理由がないのに,撮影してはならない。」
 
 2 本件条例の規定内容から明らかなように,本条1項4号(以下「本号」という。)に定める
  「卑わいな言動」とは,
   同項1号から3号に定める行為に匹敵する内容の「卑わい」性が認められなければならないというべきである。
 
  そして,その「卑わい」性は,行為者の主観の如何にかかわらず,客観的に「卑わい」性が認められなければならない。
 
  かかる観点から本件における被告人の行為を評価した場合,以下に述べるとおり,「卑わい」な行為と評価すること自体に疑問が存するのみならず,被告人の行為が同条柱書きに定める「著しくしゅう恥させ,又は不安を覚えさせるような行為」には当たるとは認められない。
 
 以下,分説する。
 
 3 「臀部」を「視る」行為とその「卑わい」性について
 本件では,被告人が被害者とされる女性のズボンをはいている臀部をカメラで撮影した行為の本号の構成要件該当性の有無が問われているところから,まず,「臀部」を被写体としてカメラで撮影することの「卑わい」性の有無の検討に先立ち,その先行概念たる「臀部」を「視る」行為について検討する。
 
  (1) 本件では,被害者たる女性のズボンをはいた「臀部」は,同人が通行している周辺の何人もが「視る」ことができる状態にあり,その点で,本条1項2号が規制する「衣服等で覆われている部分をのぞき見」する行為とは全く質的に異なる性質の行為である。
 
  (2) また,「卑わい」という言葉は,国語辞典等によれば,「いやらしくてみだらなこと。下品でけがらわしいこと」(広辞苑(第6版))と定義され,性や排泄に関する露骨で品のない様をいうものと解されているところ,衣服をまとった状態を前提にすれば,「臀部」それ自体は,股間や女性の乳房に比すれば性的な意味合いははるかに低く,また,排泄に直接結びつくものでもない。
 
  (3) 次に,「視る」という行為の側面からみた場合,主観的には様々な動機があり得る。
    「臀部」を視る場合も専ら性的興味から視る場合もあれば,ラインの美しさを愛でて視る場合,あるいはスポーツ選手の逞しく鍛えられた筋肉たる臀部にみとれる場合等,主観的な動機は様々である。しかし,その主観的動機の如何が,外形的な徴憑から窺い得るものでない限り,その主観的動機は客観的には認定できないものである。
 
 もっとも,「臀部を視る」という行為であっても,臀部に顔を近接させて「視る」場合等には,「卑わい」性が認められ得るが,それは,「顔を近接させる」という点に「卑わい」性があるのであって,「視る」という行為の評価とは別の次元の行為である。
 
  (4) 「臀部を視る」という行為それ自体につき「卑わい」性が認められない場合,それが,時間的にある程度継続しても,そのことの故をもって「視る」行為の性質が変じて「卑わい」性を帯びると解することはできない。もっとも,「視る」対象者を追尾したような場合に,それが度を越して,軽犯罪法1条28号後段の「不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとった者」として問擬され得ることは,別の問題である。
 
  (5) 小括
 以上検討したとおり,「臀部を視る」行為自体には,本条1項1号から3号に該当する行為と同視できるような「卑わい」性は,到底認められないものというべきである。
 
 4 「写真を撮る」行為と「視る」行為との関係について
 
 人が対象物を「視る」場合,その対象物の残像は記憶として刻まれ,記憶の中で復元することができる。他方,写真に撮影した場合には,その画像を繰り返し見ることができる。 しかし,対象物を「視る」行為それ自体に「卑わい」性が認められないときに,それを「写真に撮影」する行為が「卑わい」性を帯びるとは考えられない。その行為の「卑わい」性の有無という視点からは,その間に質的な差は認められないものというべきである。
 
 本条1項2号は,上記のとおり「のぞき見」する行為と撮影することを同列に評価して規定するのであって,本件条例の規定振りからも,本条1項は「視る」行為と「撮影」する行為の間に質的な差異を認めていないことが窺えるのである。なお,本条1項3号は,本来目視することができないものを特殊な撮影方法をもって撮影することを規制するものであって,本件行為の評価において参照すべきものではない。
 
 もっとも,写真の撮影行為であっても,一眼レフカメラでもって,「臀部」に近接して撮影するような場合には,「卑わい」性が肯定されることもあり得るといえるが,それは,撮影行為それ自体が「卑わい」なのではなく,撮影行為の態様が「卑わい」性を帯びると評価されるにすぎない。
 
 5 「卑わい」な行為が被害者をして「著しくしゅう恥させ,又は不安を覚えさせるような」行為である点について
 
 被告人の行ったカメラ機能付き携帯電話による被害者の臀部の撮影行為が,仮に「卑わい」な行為に該当するとしても,それが本号の構成要件に該当するというためには,それが本条1項柱書きに定める,被害者をして「著しくしゅう恥させ,又は不安を覚えさせるような行為」でなければならない。なお,その行為によって,被害者が現に「著しくしゅう恥し,又は不安を覚える」ことは必要ではないが,被害者の主観の如何にかかわらず,客観的に「著しくしゅう恥させ,又は不安を覚えさせるような行為」と認められるものでなければならない。
 
 ところで,本条1項の対象とする保護法益は,「生活の平穏」であるところ(本件条例1条),それと同様の保護法益を保持することを目的とする法律として,
 軽犯罪法があり,本件の規制対象行為に類するものとしては,「正当な理由がなくて人の住居,浴場,更衣場,便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」(1条23号)や,前記の「不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとった者」(1条28号後段)が該当するところ,
 法定刑は,軽犯罪法違反は拘留又は科料に止まるのに対し,本条違反は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されるのであって,
 その法定刑の著しい差からすれば,
 本条1項柱書きに定める「著しくしゅう恥させ,又は不安を覚えさせる行為」とは,軽犯罪法が規制する上記の各行為に比して,真に「著しく」「しゅう恥,又は不安」を覚えさせる行為をいうものと解すべきものである。
 
 6 本件における被告人の行為
 原判決が認定するところによれば,被告人は被害者の背後を約5分間,約40m余り追尾して,その間カメラ機能付きの携帯電話のカメラを右手で所持して自己の腰部付近まで下げて,レンズの方向を感覚で被写体に向け,約3mの距離から約11回にわたって被害者の臀部等を撮影したというものである。
 
 そこで,その被告人の行為について検討するに,その撮影行為は,カメラを構えて眼で照準を合わせて撮影するという,外見からして撮影していることが一見して明らかな行為とは異なり,外形的には撮影行為自体が直ちに認知できる状態ではなく,撮影行為の態様それ自体には,「卑わい」性が認められないというべきである。
 
 また,その撮影行為は,用いたカメラ,撮影方法,被写体との距離からして,被写体たる被害者をして,不快の念を抱かしめることがあり得るとしても,それは客観的に「著しくしゅう恥させ,又は不安を覚えさせるような行為」とは評価し得ないものというべきである。
 
 加えるに,4で検討したとおり,「臀部」を撮影する行為それ自体の「卑わい」性に疑義が存するところ,原判決に添付されている被告人が撮影した写真はいずれも被害者の臀部が撮影されてはいるが,腰の中央部から下半身,背部から臀部等を撮影しているものであって,「専ら」臀部のみを撮影したものとは認められず,その画像からは,一見して「卑わい」との印象を抱くことのできないものにすぎない。
 
 7 結論
 以上,検討したところからすれば,被告人の本件撮影行為それ自体を本号にいう「卑わい」な行為と評価することはできず,また,仮に何がしかの「卑わい」性が認め得るとしても本条1項柱書きにいう「著しくしゅう恥させ,又は不安を覚えさせる」行為ということはできないのであって,被告人は無罪である。
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一の2 チアリーダー撮影逮捕事例
 
1 平成24年9月9日下記のような報道がなされた。
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  「文化祭でチアリーディング部の女子生徒を盗撮、容疑で川崎市職員ら逮捕/相模原
カナロコ 9月11日(火)0時30分配信
 相模原南署は9日、県迷惑防止条例違反(卑わいな言動)の疑いで、横浜市磯子区杉田8丁目、川崎市職員の男(36)と東京都江戸川区、会社員の男(43)の両容疑者を現行犯逮捕した。
 逮捕容疑は、同日午後0時25分ごろ、相模原市内の県立高校で行われていた文化祭で、チアリーディング部の女子生徒の太ももなどをデジタルカメラで撮影した、としている。
 ステージの最前列でカメラを手で覆い隠すように構えていた2人を同校教員が不審に思い、取り押さえた。
 同署によると、2人は以前、別の場所で同じように女性を撮影していて知り合ったという。会社員男の容疑者は「欲求を満たすためにやった」と容疑を認め、川崎市職員男の容疑者は「ダンスの全体の様子を撮影しただけ」などと否認しているという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120911-00000003-kana-l14
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2 これはチアリーダー達が「衣服等で追われている部分」を、「それらが見えるような衣服を着用」し、「それらが見えるようなダンスをしている」ところを撮影したものであって、通常の「衣服で覆われている部分を、窃視して撮影した」というものでもない。
  また、チアリーダ達は、衣服等で覆われている部分が見られることを容認しているような事例である。
3 これら県迷惑防止条例違反(卑わいな言動)の罪は社会的法益に関する罪であるから、チアリーダー達の「仮に、推定的承諾」が認められても、罪の成否には関係しないという考え方もある。
 
4 本件のような場合を、どのように考えるべきなのか。
  ややこしい、法律論を別にして、考えれば、次のようになるのか。
@ チアリーダー達が、ミニスカートを着用し、足をあげてダンスし、彼女達のスカートの下の太股が見えたとして
A それらを、ダンスの一環、一部として、殊更強調しない形で、見たり、写真撮影したりすることは、社会的に容認される。
B しかし、他方、それらを、殊更強調する形で、見たり、写真撮影したりすることは、社会的に容認されない。
C どこに差異があるのか。
イ Aの場合には、当該行為は、性的欲求ないし性衝動の発露と評価される行為ではなく、公共の場所等において、なんら問題となる行為ではない(社会的に見て、性的道義議観念に反するような行為・社会的法益侵害行為ではない)。
ロ Bの場合には、当該行為は、性的欲求ないし性衝動の発露と評価され得る行為であり、性的欲求ないし性衝動の発露と評価され得るような行為を、公共の場所等において行うことは、、、社会的法益侵害行為となり得る。
ハ 要するに、「性的欲求ないし性衝動の発露と評価され得るような行為」は、「公共の場所等で行ってはならず」、そのような行為は、「密室その他の個人の世界で行うべきである」ということになるようである。
 
Dでは、チアリーダー達のダンスを、特定の部分を殊更強調しない形での写真撮影は許されるとして、「そのような写真を撮影した者が、その写真の一部、例えば太股の部分を拡大フリントするような場合」と「特定の部分を殊更強調する形での写真撮影」との差異が議論となる。
 しかし、前者の場合には、公共の場所等における行為であることから処罰の正当性が認められ、後者の場合には、個人的な世界での行為であることから、処罰の正当性は欠落するというように考えることとなる、、、か。
 チアリーダーからすれば、「自分の写真について、特定の部分、太股等を拡大ブリントされることは容認しないであろうと推測される」が、それは個人の世界で行われることであり、チアリーダー本人が預かり知らぬ世界での出来事であり、そのような世界での出来事まで禁止して保護ほ求めることはできないということとなる、、、、のか。 
 
E いずれにしても、上記Cのような分類は、北海道・迷惑条例−関連−「卑わい」行為に関する最高裁判所平成20年11月10日第三小法廷決定における多数説と少数説の議論における問題の所在の理解と把握に資するかもしれない。
 
二 刑法の強制わつせつの罪との異動
 
(強制わいせつ)
刑法176六条
 十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
 
1 場所的制限の有無、暴行ないし脅迫の要件の有無及び「わいせつ行為とひわい行為の異同」である。
 
2 わいせつ行為とひわい行為の異同について
 
 
論点6−3−−「のぞき見る」行為
「のぞき見る」行為・窃視行為については、迷惑防止条例においては、正面から直接規定されていない場合が多い(注意・全国の都道府県の迷惑防止条例の内容を確認する必要がある)。
 そして、それらは、「卑わいな言動」に該当するとして処理されている例がある。
 
 大阪・奥村徹弁護士によれば、「のぞき見る、とは、通常見えない下着を見る行為であるから、かがみ込んだり、寝そべったり、スカートをまくる、あるいは鏡を使用してのぞき見ることであり、何の作為もなく自然に又は偶然に見えてしまった場合は、のぞき見には当たらない。滋賀県迷惑行為等防止条例の解説 滋賀県警h16」とのことである。
 
 上記チアリーダーの裁判例でわかるとおり、「卑わいな言動」は、のぞき見行為を含むより広い概念である。
 
 しかし、「この卑わいな言動」は若干難しいものがある。
 上記4記載のとおり、「殊更強調しない形で、見たり、写真撮影したりすることは、社会的に容認される」という論理の反面、「殊更強調して、見る行為」は、場合によっては、卑わいな言動に該当するという結論となる。
 
論点6−4−−「被害者の同意,承諾」と犯罪の成否
 
事例
 ミニスカ妻、実は盗撮おとり役!? 恐喝容疑で夫婦を逮捕,産経新聞平成26 年9月11日(木)12時17分配信
 自分の妻をミニスカートで歩かせて男性にわざと盗撮させ、示談金名目で現金を脅し取ったとして、大阪府警曽根崎署は・・・ら3人を逮捕したと発表した。
 
 容疑者は盗撮されることを想定しており、同署は男性の行為が「人を著しく羞恥させる」という府迷惑防止条例上の盗撮にはあたらないとみている。
 
 大阪奥村弁護士の見解
  府条例6条2号はの「しゅう恥させ」について「人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような」とは、社会通念上人に著しく性的恥じらいを感知させ、又は不安を覚えさせるであろう程度のことをいい、被行為者が行われた言動を認識する必要はあるが、当該言動によって実際に性的恥じらいを感知し、又は不安を覚えたか否かは問わない。この場合において、被行為者とは、言動の直接的な対象となった人はもとより、言動の直接的な対象となった人が当該言動の内容を理解できない場合において、それを理解し得る能力があり、かつ、当該言動を認識し得る状態にある間接的な対象となった他の人も含まれる。」という意味なので、承諾があっても形式的には成立すると解されます。
 
 検討
  奥村弁護士の見解は,条例違反成立の根拠を構成要件該当性に求めておられるが,本件で問題となるのは,構成要件該当性ではなく,法益侵害の有無と考えられる。
  本条例1条に記載されているとおり,「(目的)第一条 この条例は、公衆に 著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止し、もって府民及び滞在者の平穏な生活を保持することを目的とする」とされており,単純な個人的法益のみならず,「社会の平穏」という社会的法益をも保護しようとしていることから,「被害者の承諾があっても条例違反は成立する」と考える方が穏当のように思える。
 
 
(不当な販売行為等の禁止)
第七条 何人も、公共の場所において、不特定の者に対し、物品の販売若しくは買受け又は物品の加工若しくは修理、遊芸その他の役務の提供を行うに当たり、不安を覚えさせるような著しく粗野若しくは乱暴な言動をし、又は依頼若しくは承諾がないのに物品の加工若しくは修理、遊芸その他の役務の提供を行ってその対価を執ように要求してはならない。
(昭五九条例五七・平一三条例八五・一部改正、平一四条例一〇六・旧第六条繰下)
 
 
(不当な客引行為等の禁止)
第八条 何人も、公共の場所において、不特定の者に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
 
一 次に掲げる行為について、客引き(ハに掲げる行為に係る利用者に対する勧誘を含む。)をすること。
 
イ 人の性的好奇心をそそる見せ物、物品若しくは行為又はこれらを仮装したものの観覧、販売又は提供
 
ロ 歓楽的雰囲気を醸し出す方法により異性の客をもてなして飲食をさせる行為又はこれを仮装したものの提供
 
ハ 人の性的好奇心をそそる行為を提供する営業又は歓楽的雰囲気を醸し出す方法により異性の客をもてなして飲食をさせる営業に関する情報の提供
 
二 前号イ又はロに掲げる行為(ロに掲げる行為については、当該提供に係る行為が、人の通常衣服で隠されている身体又は下着に接触し、又は接触させる卑わいなものである場合に限る。)について、人に呼び掛け、又はビラ、パンフレットその他の物品を配布し、若しくは提示して客となるよう誘引すること。
 
三 売春類似行為をするため、公衆の目に触れるような方法で、客引きをし、又は客待ちをすること。
 
四 次に掲げる行為について、当該行為をする役務に従事するよう勧誘すること。
 
イ 人の性的好奇心をそそる行為(当該行為を撮影するための被写体となる行為を含む。次条第一項第二号において同じ。)
 
ロ 歓楽的雰囲気を醸し出す方法により異性の客をもてなす行為
 
五 前号イ又はロに掲げる行為(ロに掲げる行為については、人の通常衣服で隠されている身体又は下着に接触し、又は接触させる卑わいなものである場合に限る。)について、人に呼び掛け、又はビラ、パンフレットその他の物品を配布し、若しくは提示して当該行為をする役務に従事するよう誘引すること。
 
六 第一号、第三号及び第四号に掲げるもののほか、人の身体又は衣服をとらえ、所持品を取り上げ、進路に立ちふさがり、つきまとう等執ような方法で、客引きをし、又は役務に従事するよう勧誘すること。
 
2 何人も、対償を供与し、又はその供与の約束をして、他人に前項の規定に違反する行為をさせてはならない。
 
3 何人も、公共の場所において、不特定の者に対し、次に掲げる者となるよう人に呼び掛け、又はビラ、パンフレットその他の物品を配布し、若しくは提示して誘引してはならない。
 
一 第一項第一号ロ又はハに掲げる行為(ロに掲げる行為については、当該提供に係る行為が、人の通常衣服で隠されている身体又は下着に接触し、又は接触させる卑わいなものである場合を除く。)の客又は利用者
 
二 第一項第四号ロに掲げる行為(人の通常衣服で隠されている身体又は下着に接触し、又は接触させる卑わいなものである場合を除く。)をする役務に従事する者
 
4 警察官は、前項の規定に違反して誘引を行っていると認められる者に対し、当該誘引を行うことをやめるべき旨を命ずることができる。
 
5 何人も、第一項第一号、第二号、第四号又は第五号に掲げる行為(以下この項及び次項において「客引き等」という。)の状況等を勘案して、この項の規定による規制を行う必要性が高いと認められるものとして公安委員会規則で定める地域内の公共の場所において、客引き等を行う目的で、公衆の目に触れるような方法で客引き等の相手方となるべき者を待ってはならない。
 
6 警察官は、前項の規定に違反して客引き等の相手方となるべき者を待っていると認められる者に対し、当該客引き等の相手方となるべき者を待つことをやめるべき旨を命ずることができる。
(平一七条例一四三・全改)
 
 
(迷惑ビラ等の配布行為等の禁止)
第九条 何人も、公共の場所において、不特定の者に対し、次の各号のいずれかに該当するもの及び電話番号その他の連絡先を掲載したビラ、パンフレットその他の物品(以下「迷惑ビラ等」という。)を配布してはならない。
 
一 衣服を脱いだ人の姿態の写真又は絵であって、人の性的好奇心をそそるもの
 
二 人の性的好奇心をそそる行為の提供又は当該行為をする役務に従事する者の募集を表す文言等
 
三 人の性的好奇心をそそる映像を内容とするビデオテープ、コンパクトディスク、デジタルバーサタイルディスクその他の電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によっては認識することができない方法をいう。)による記録に係る記録媒体の販売を表す文言等であって、人を著しくしゅう恥させるような卑わいなもの
 
四 人の性的好奇心をそそる写真又は図画を内容とする書籍等の販売を表す文言等であって、人を著しくしゅう恥させるような卑わいなもの
 
五 性具その他の性的な行為の用に供する物品の販売を表す文言等であって、人を著しくしゅう恥させるような卑わいなもの
 
2 何人も、電話ボックス内、公衆便所内その他公衆が出入りすることができる建築物内又は公衆が見やすい屋外の場所に迷惑ビラ等を表示し、又は配置してはならない。
 
3 何人も、みだりに人の住居又はホテル若しくは旅館の客室に迷惑ビラ等を配り、又は差し入れてはならない。
 
4 何人も、前三項の規定に違反する行為をする目的で、迷感ビラ等を所持してはならない。
 
5 何人も、対償を供与し、又はその供与の約束をして、他人に第一項から第三項までの規定に違反する行為をさせてはならない。
(平一四条例一〇六・追加、平一七条例一四三・一部改正)
 
 
(反復したつきまとい等の禁止)
第十条 何人も、
 
    ねたみ、恨みその他の悪意の感情又は性的好奇心を充足する目的
     (ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成十二年法律第八十一号)第二条第一項に規定する目的を除く。)
  による場合、
 
    不当に金品その他の財産上の利益を得る目的
  による場合等、
 
    正当な理由がないのに、
    特定の者に対し、
    次に掲げる行為
 
      (第一号から第四号までに掲げる行為については、身体の安全若しくは住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法
  により行われる場合に限る。以下「つきまとい等」という。)
    を反復してしてはならない。
 
一 つきまとい、
  待ち伏せし、
  進路に立ちふさがり、
  住居等の付近において見張りをし、
  又は
  住居等に押し掛けること。
 
1 ピンポンダッシュ行為について、京都府警下鴨警察は、「住居等に押し掛ける」行為に該当し得るとして立件処理をしている。
イ 条例上は、これらの行為を「反復してはならない」と定めていることから、一回限りの行為は該当しないということにならざるを得ない。
ロ さらに、「住居等の平穏が害される」方法により行われる場合に限定されているが、ピンポンダッシュ行為、それ自体は、住居等の平穏を害する行為と評価して差し支えないことから、実務上のポイント「反復してはならない」という要件に該当するか否かということとなる。
 
 
二 その行動を監視している
  と
  思わせるような事項を
  告げ、
又は
  その知り得る状態に置くこと。
 
三 面会
  その他の義務のないことを
  行うことを
  要求すること。
 
四 著しく粗野又は乱暴な
  言動をすること。
 
五 電話をかけて何も告げず、
  又は
  拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、
  若しくは
  ファクシミリ装置を用いて、若しくは電子メールにより送信すること。
 
六 汚物、動物の死体
  その他の
  著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を
  送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
 
七 その名誉を害する事項を
  告げ、
又は
  その知り得る状態に置くこと。
 
八 その性的しゅう恥心を害する事項を
  告げ、
若しくは
  その知り得る状態に置き、
  又は
  その性的しゅう恥心を害する文書、図画その他の物を
  送付し、
若しくは
  その知り得る状態に置くこと。
 
2  警察本部長又は警察署長は、
  つきまとい等により
 被害を受けた者
又は
 その保護者から、
 当該つきまとい等の再発の防止を図るため、援助を受けたい旨の申出があり、
その申出を相当と認めるときは、
公安委員会規則で定めるところにより、
当該申出をした者に対し、必要な援助を行うものとする。
(平一七条例八三・追加)
 
 
(モーターボート等による危険行為の禁止)
第十一条 何人も、通常、人が遊泳し、又は手漕こぎのボートその他の小舟が回遊する水面において、
     正当な理由がないのに、
     モーターボートその他の原動機を用いて推進する舟艇を
     縫航し、急転回し、疾走させる等により、
     遊泳し、又は手漕こぎのボートその他の小舟に乗っている者に対し、
     危険を覚えさせるような行為を
    してはならない。
(平一三条例八五・一部改正、平一四条例一〇六・旧第八条繰下、平一七条例八三・旧第十条繰下)
 
 
(指示)
第十二条 公安委員会は、
     第八条第一項第一号イからハまでに掲げる行為を事業として行う者(以下「事業者」という。)
又は
     その代理人、使用人その他の従業者が、
     当該事業に関し、
     同条第一項から第三項まで若しくは第五項又は第九条の規定に違反したときは、
     当該事業者に対し、
     当該違反行為の再発を防止するため必要な指示を
することができる。
(平一七条例一四三・追加)
 
 
(事業の停止)
第十三条 公安委員会は、
     事業者が前条の指示に従わなかったとき、
又は
     事業者若しくはその代理人、使用人その他の従業者が
     当該事業に関し第八条第一項から第三項まで若しくは第五項若しくは第九条の規定に違反したときは、
     当該事業者に対し、
     六月を超えない範囲内で期間を定めて
     当該事業の全部又は一部の停止を命ずることができる。
(平一七条例一四三・追加)
 
 
(聴聞の特例)
第十四条 公安委員会は、
     前条の規定により事業の停止を命じようとするときは、
     大阪府行政手続条例(平成七年大阪府条例第二号)第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。
 
2 前条の規定による処分に係る聴聞を行うに当たっては、
 その期日の一週間前までに、
 大阪府行政手続条例第十五条第一項の規定による通知をし、
かつ、
 聴聞の期日及び場所を公示しなければならない。
 
3 前項の通知を
 大阪府行政手続条例第十五条第三項に規定する方法によって行う場合においては、
 同条第一項の規定により聴聞の期日までにおくべき相当な期間は、
 二週間を下回ってはならない。
 
4  前条の規定による処分に係る聴聞の期日における審理は、
  公開により
行わなければならない。
(平一七条例一四三・追加)
 
(罰則)
第十五条 第十三条の規定による命令に違反した者は、六月以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
(平一七条例一四三・追加)
 
第十六条 次の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第二条の規定に違反した者
二 第六条の規定に違反した者
三 第十条第一項の規定に違反した者
2 常習として前項の違反行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
(平一三条例八五・全改、平一四条例一〇六・旧第九条繰下・一部改正、平一七条例八三・旧第十一条繰下・一部改正、平一七条例一四三・旧第十二条繰下・一部改正)
 
第十七条 次の各号の一に該当する者は、百万円以下の罰金に処する。
一 第八条第二項の規定に違反した者
二 第九条第五項の規定に違反した者
2 常習として前項の違反行為をした者は、六月以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
(平一七条例一四三・追加)
 
第十八条 次の各号の一に該当する者は、五十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
一 第三条の規定に違反した者
二 第四条の規定に違反した者
三 第五条の規定に違反した者
四 第七条の規定に違反した者
五 第八条第一項の規定に違反した者
六 第九条第一項から第三項までの規定に違反した者
七 第十一条の規定に違反した者
2 常習として前項第一号から第六号までの違反行為をした者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(平一三条例八五・追加、平一四条例一〇六・旧第十条繰下・一部改正、平一七条例八三・旧第十二条繰下・一部改正、平一七条例一四三・旧第十三条繰下・一部改正)
第十九条 次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
一 第八条第四項の規定による警察官の命令に違反した者
二 第九条第四項の規定に違反した者
(平一七条例一四三・追加)
 
第二十条 第八条第六項の規定による警察官の命令に違反した者は、二十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
(平一七条例一四三・追加)
 
(両罰規定)
第二十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第十五条、第十七条第一項、第十八条第一項第五号若しくは第六号又は前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。
(平一四条例一〇六・追加、平一七条例八三・旧第十三条繰下、平一七条例一四三・旧第十四条繰下・一部改正)
 
附 則
この条例は、公布の日から起算して三十日を経過した日から施行する。
附 則(昭和四八年条例第四二号)
この条例は、昭和四十八年七月一日から施行する。
附 則(昭和五九年条例第五七号)抄
(施行期日)
1 この条例は、昭和六十年二月十三日から施行する。
附 則(平成四年条例第三号)
この条例は、平成四年四月一日から施行する。
附 則(平成一三年条例第八五号)
(施行期日)
1 この条例は、平成十四年一月一日から施行する。
(罰則に関する経過措置)
2 この条例の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
附 則(平成一四年条例第一〇六号)
(施行期日)
1 この条例は、平成十五年一月一日から施行する。
(罰則に関する経過措置)
2 この条例の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
附 則(平成一七年条例第八三号)
(施行期日)
1 この条例は、平成十七年四月十八日から施行する。
(罰則に関する経過措置)
2 この条例の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
附 則(平成一七年条例第一四三号)
(施行期日)
1 この条例は、平成十七年十二月一日から施行する。
(罰則に関する経過措置)
2 この条例の施行前にした行為に対する罰則の適用
(罰則に関する経過措置)
2 この条例の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
 
 
番外1−撮影されない自由
 
最高裁昭和44年12月24日大法廷判決
 
 憲法一三条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定しているのであって、これは、国民の私生活上の自由が、警察権等の国家権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものということができる。
 そして、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態(以下「容ぼう等」という。)を撮影されない自由を有するものというべきである。
 これを肖像権と称するかどうかは別として、少なくとも、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法一三条の趣旨に反し、許されないものといわなければならない。
 しかしながら、個人の有する右自由も、国家権力の行使から無制限に保護されるわけでなく、公共の福祉のため必要のある場合には相当の制限を受けることは同条の規定に照らして明らかである。そして、犯罪を捜査することは、公共の福祉のため警察に与えられた国家作用の一つであり、警察にはこれを遂行すべき責務があるのであるから(警察法二条一項参照)、警察官が犯罪捜査の必要上写真を撮影する際、その対象の中に犯人のみならず第三者である個人の容ぼう等が含まれても、これが許容される場合がありうるものといわなければならない。
 そこで、その許容される限度について考察すると、身体の拘束を受けている被疑者の写真撮影を規定した刑訴法二一八条二項のような場合のほか、次ような場合には、撮影される本人の同意がなく、また裁判官の令状がなくても、警察官による個人の容ぼう等の撮影が許容されるものと解すべきである。すなわち、現に犯罪が行なわれもしくは行なわれたのち間がないと認められる場合であって、しかも証拠保全の必要性および緊急性があり、かつその撮影が一般的に許容される限度をこえない相当な方法をもって行なわれるときである。このような場合に行なわれる警察官による写真撮影は、その対象の中に、犯人の容ぼう等のほか、犯人の身辺または被写体とされた物件の近くにいたためこれを除外できない状況にある第三者である個人の容ぼう等を含むことになっても、憲法一三条、三五条に違反しないものと解すべきである。
 
 
 
 
 
軽犯罪法
(昭和二十三年五月一日法律第三十九号)
 
 
最終改正:昭和四八年一〇月一日法律第一〇五号
 
 
 
第一条  左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
 
一  人が住んでおらず、且つ、看守していない
   邸宅、建物又は船舶の内に
   正当な理由がなくて
   ひそんでいた者
 
二  正当な理由がなくて
   刃物、鉄棒その他
   人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を
   隠して
   携帯していた者
 
三  正当な理由がなくて
  合かぎ、のみ、ガラス切りその他
  他人の邸宅又は建物に侵入するのに使用されるような器具を
  隠して
  携帯していた者
 
四  生計の途がないのに、
   働く能力がありながら
  職業に就く意思を有せず、且つ、
  一定の住居を持たない者で
  諸方を
  うろついたもの
 
五  公共の会堂、劇場、飲食店、ダンスホールその他
  公共の娯楽場において、
  入場者に対して、
又は
  汽車、電車、乗合自動車、船舶、飛行機その他
  公共の乗物の中で
  乗客に対して
  著しく粗野又は乱暴な言動で
  迷惑をかけた者
 
六  正当な理由がなくて
   他人の標灯又は街路その他
  公衆の通行し、若しくは集合する場所に
  設けられた灯火を
  消した者
 
七  みだりに
   船又はいかだを水路に放置し、その他
  水路の交通を妨げるような行為をした者
 
八  風水害、地震、火事、交通事故、犯罪の発生その他の
  変事に際し、
  正当な理由がなく、
  現場に出入するについて公務員若しくはこれを援助する者の
  指示に従うことを拒み、又は
  公務員から援助を求められたのにかかわらずこれに応じなかつた者
 
九  相当の注意をしないで、
   建物、森林その他燃えるような物の附近で
  火をたき、
又は
  ガソリンその他引火し易い物の附近で
  火気を用いた者
 
十  相当の注意をしないで、  
  銃砲又は火薬類、ボイラーその他の
  爆発する物を
  使用し、又はもてあそんだ者
 
十一  相当の注意をしないで、
  他人の身体又は物件に害を及ぼす虞のある場所に
  物を投げ、注ぎ、又は発射した者
 
十二  人畜に害を加える性癖のあることの明らかな
   犬その他の鳥獣類を
  正当な理由がなくて解放し、又はその監守を怠つてこれを逃がした者
 
十三  公共の場所において
   多数の人に対して
   著しく粗野若しくは乱暴な言動で迷惑をかけ、
又は
   威勢を示して汽車、電車、乗合自動車、船舶その他の
   公共の乗物、演劇その他の催し若しくは割当物資の配給を待ち、若しくはこれらの乗物若しくは催しの切符を買い、若しくは割当物資の配給に関する証票を得るため待つている
   公衆の列に割り込み、若しくはその列を乱した者
 
十四  公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者
 
十五  官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号若しくは外国におけるこれらに準ずるものを詐称し、又は資格がないのにかかわらず、法令により定められた制服若しくは勲章、記章その他の標章若しくはこれらに似せて作つた物を用いた者
 
十六  虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者
 
十七  質入又は古物の売買若しくは交換に関する帳簿に、法令により記載すべき氏名、住居、職業その他の事項につき虚偽の申立をして不実の記載をさせた者
 
十八  自己の占有する場所内に、老幼、不具若しくは傷病のため扶助を必要とする者又は人の死体若しくは死胎のあることを知りながら、速やかにこれを公務員に申し出なかつた者
 
十九  正当な理由がなくて変死体又は死胎の現場を変えた者
 
二十  公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者
 
二十一  削除
 
二十二  こじきをし、又はこじきをさせた者
 
(窃視の罪)
二十三  正当な理由がなくて
    人の住居、浴場、更衣場、便所その他
    人が通常衣服をつけないでいるような場所を
    ひそかにのぞき見た者
 
二十四  公私の儀式に対して悪戯などでこれを妨害した者
 
二十五  川、みぞその他の水路の流通を妨げるような行為をした者
 
二十六  街路又は公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、又は大小便をし、若しくはこれをさせた者
 
二十七  公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物又は廃物を棄てた者
 
二十八  他人の進路に立ちふさがつて、若しくはその身辺に群がつて立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとつた者
 
二十九  他人の身体に対して害を加えることを共謀した者の誰かがその共謀に係る行為の予備行為をした場合における共謀者
 
三十  人畜に対して犬その他の動物をけしかけ、又は馬若しくは牛を驚かせて逃げ走らせた者
三十一  他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者
三十二  入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者
 
三十三  みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし、若しくは他人の看板、禁札その他の標示物を取り除き、又はこれらの工作物若しくは標示物を汚した者
 
三十四  公衆に対して物を販売し、若しくは頒布し、又は役務を提供するにあたり、人を欺き、又は誤解させるような事実を挙げて広告をした者
 
第二条  前条の罪を犯した者に対しては、情状に因り、その刑を免除し、又は拘留及び科料を併科することができる。
 
第三条  第一条の罪を教唆し、又は幇助した者は、正犯に準ずる。
 
第四条  この法律の適用にあたつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。
 
   附 則
 
 
○1  この法律は、昭和二十三年五月二日から、これを施行する。
○2  警察犯処罰令(明治四十一年内務省令第十六号)は、これを廃止する。
 
   附 則 (昭和四八年一〇月一日法律第一〇五号) 抄
 
 
(施行期日)
1  この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行する。
(罰則に関する経過措置)
5  この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。