「 生命は尊貴である。一人の生命は全地球より重い」
 
 このように論じながら、最高裁判所は「死刑は憲法に違反しない」旨判示した(最高裁昭和23年3月12日大法廷判決)。
新聞報道によると、ときどき某拘置所において死刑囚の死刑執行がなされたという。
 
 コツ、コツ、コツ・・・・。毎日・・起床してから・・午前10時までの間・・拘置所にいる死刑囚は・・ピリッ・・と全神経を張り巡らして、この足音を聞くという。
 
 神様・・!! 自分の房の前で、この足音が・・、複数の足音が・・止まらないように・・・と。
 
 午前10時を過ぎると・・ホッとする。今日、死刑執行をされることがない。今日一日、生きておれる。明日・・は・・わからない・・。
日本において、死刑台は拘置所にある。刑務所にはない。刑務所は懲役ないし禁錮刑の服役をさせる場所であるから。死刑が確定した者は刑務所に移監する必要がないことから、原則として未決(判決が確定していない者等)の者を収容する施設である拘置所で執行することとなるからである。 
 
 某拘置所では、執行台の隣の部屋に5つの赤いボタンがあった。
一つのボタンが電気的に死刑台と連動している。観音扉が下方に開くのである。銃殺するとき、複数の人間が銃を発射するのと同じ発想である。
自分の撃った弾丸はあたっていない・・自分の押したボタンは連動していない・・みんな・・そう・・信じたい・・・・。
  
 刑場の露と消うべき
    身を惜しみ
       虫となりても
             生きたしと思う
(30歳台の死刑囚が、刑場の露と消える前に残した、辞世の句である)